笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

クラリネオ

 

 YCL-255を買った。買ったと言っても、注文しただけで、まだ当分届かない。それまでは、フルートやサックスやトランペットやEWIやヴェノーヴァを吹いていようと思う。これだけあれば十分・・・すぎるか。
 ああでも、クラリネットも吹きたいな。
 少し前の記事で、ちゃんとしたクラリネットを買った話をしたわけだが、実は、ちゃんとしてないクラリネットなら1本持っている。クラリネオという、プラスチック製のC管クラリネットだ。
 どういう経緯だったかは忘れたが、10年くらい前に、妻からプレゼントされた。おもちゃのような外観で、小指のキィやトリルキィは省略されている。シリコン製のタンポとプラスチックのキィシステムは頼りない。リードはEsクラのサイズ。樹脂製のリードが二枚付属していて、ケーンのリードに交換することもできる。
 長いこと吹いていなかったのだけど、せっかくクラリネットの気分になっているので、久しぶりに出してみた。

 通常のクラリネットに比べると、ずいぶん軽い。そして細い。管の厚さがないので、金属管のクラリネットのような外観だ。指はベーム式準拠だが、さっきも書いたとおり、省略されているキィがある。なのに、遠い音孔を塞ぐための連結システムが、通常のクラリネットとは違う複雑な機構になっていて、ずいぶんメカニカルな印象。ガチャガチャしている。
 操作すると、その動きもガチャガチャ感がすごい。ちょっとスチームパンクっぽいかも。面白いシステムだ。アンブシュアの作り方は、通常のクラリネットと同じ。付属の樹脂リードはやわらかいので、マッピに張り付かないように気を遣いながら、そっと息を入れる。おお、鳴った鳴った、音小さいけど。通常のクラリネットの1/3くらいの音量だろうか。でも、これぐらいの方が自宅で吹くには丁度いいんじゃないかな。
 で、音が出たので、まずはスケールを吹いてみる。すると、右手の音が、まあ出にくいこと。原因のひとつは、僕がクラリネットの吹奏感に慣れてないことだけど、もうひとつは、シリコン製のタンポの気密が甘いこと。キィを操作しながら、タンポの様子を観察すると、相当強く押さえないと、ちゃんと閉まらない。連結のどこかが折れるんじゃないかと不安になるくらい力を入れて、やっと塞がる。こえー。しかしそれでも、タンポがちゃんと閉まりさえすれば、音は出る。イントネーションは、そう悪くない。案外、ちゃんとした楽器だな。管体の基本設計は悪くないのだろう。キィシステムさえもうちょっと何とかすれば、結構使えるような気がするが・・・でも、そのキィがなー、ちょっと厳しいよなー。

 一時期この手の、(プラスチックの管体とキィシステム) + (シリコンのパッド)という楽器がたくさんリリースされていた。でも、近頃は見ない。やっぱりね・・・プラスチックは剛性不足だと思う。シリコンパッドのせいでもあるけど、キィタッチが悪すぎる。もうちょっと硬い樹脂にすれば? なんて思うけど、価格の問題だったり、あと硬い樹脂って力をかけると破断したりするから、そのへんのバランスもあって、こういう素材なんだろうな。だとすると、これがプラ楽器の限界なのかもしれない。
 この楽器、いくらだったのだろう。確か、一万円前後の値段だったような気がするが、よく覚えていない。この楽器に一万円を、高いと思うか安いと思うかっていうのは、人によるだろうなあ。ほんまもんのクラリネットの値段を知っている者からすればずいぶん安いけど、学校で使うリコーダーの値段をイメージしながら買おうとする人にとっては高価に感じられるんじゃないかな。
 僕の立場からすると・・・ベーム式の運指がほぼそのまま使えるし、それなりにいい音程で吹けるし、まあ悪くないんじゃん? って感じ。ただ、キィタッチの悪さは致命的だ。これは、改善した方がいい。絶対に。

 だから、これをクラリネットの練習のために吹くかと聞かれたら、ちょっと考えるなあ。そういう訳で、クラリネオはまたお蔵入り。当面は、違う楽器を吹いて、クラリネットにかける情熱は温存しておくことにしよう。