笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ハロウィン

「時」は燃えるローソクの滴のように無くなっていく、山々と森はその日々を持つ、それぞれの日々を。あなたがたは、どうぞ、モミから生まれた森の昔の軌道から、お願いです、外れていかないように。 「ケルトの薄明」 W.B.イエイツ/井村君江(訳) ちくま文…

居酒屋

両人対酌山花開一杯一杯復一杯我酔欲眠卿且去明朝有意抱琴来 「山中与幽人対酌」 李白 大きい仕事が一つ片付いたので、仕事仲間と居酒屋で飲んだ。 最後に表で飲んだのは、コロナの騒ぎがおこる前だから、もう一年ほども前になる。緊急事態宣言もとっくに解…

ハチ高原

「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云いました。「蝎の火だな。」カムパネルラが又地図と首っ引きして答えました。 「銀河鉄道の夜」 宮沢賢治 新潮文庫 知り合いに仕事の手伝いを頼まれて、ハチ高原に行…

PIZZA HOUSE PINOCCHIO

そこでこの読本の唯一の教訓はこうである。伝達ではなく、表現の文章を綴ろうとなさる方は、各自、自分用の文章読本を編まれるのがよろしい、と。そのためにはやはり、表現のために書かれた文章を数多く読まなければならないが。 「自家製 文章読本」 井上ひ…

カメラ

「我々の調査によれば、それはこの六ヵ月以内に、完全なアマチュアによって撮られた写真だ。カメラは安物のポケットサイズだ。撮ったのは君じゃない。君はニコンの一眼レフを持っているし、もっとうまく撮る。この五年間は北海道に行ってない。そうだね?」 …

ピッコロ

「苦労をしたことは一度もない」 きっぱりと赤音さんは言った。「ただ、努力はしたがね」 「クビキリサイクル」 西尾維新 講談社 先だって、指導のお手伝いをしている中学校の吹奏楽部の発表会が終わった。それは三年生引退の節目でもあった。コロナの影響で…

家系ラーメン

「わかりました、気をつけます。おれ、生まれつき水が好きなもんですから」「そう。そんなに水が好きなら、お酒なんか飲まずに水を飲んでりゃよかったのに」「そうですね」 「今夜、すべてのバーで」 中島らも 講談社文庫 家系ラーメンが好きだ。 横浜に長く…

楽器決め

嘘だとお思いか? ならば、私が、吹いてやる。 私の肺は空気を満たし、私の内腔はまっすぐにチューバへと連なって天へと向いたベルまで一本の管となり、大気は音にかわって世界へと放たれるのだ。 「チューバはうたう」 瀬川深 筑摩書房 花の種子は、自分の…