笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

「You'd Be So Nice To Come Home To」って、なんて意味?

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 十数年ぶりにアルトサックスを手に入れたので、練習をしている。
 テナーはずっと吹いているので、そちらであれば標準的な音域は何の問題なく吹けるけど、だからといってアルトが十分に吹けるかと言えばそうはならないのが、同属楽器の難しいところだ。
 なので、まずは基礎練習から始めている。
 any keyで、メジャースケールと3つのマイナースケール、そして長短のペンタトニックをさらう。丁寧に取り組むとこれだけで30分ほどの時間がかかるのだけど、アルトに不慣れなのと、おそらくは病気のせいもあって、これだけでほぼ体力が尽きる。ここで、リード交換をしながらすこし休憩。僕のブログを読んで下っている方は「レジェールなら換えなくていいんじゃないの?」と思われるかもしれないが、先だって、疲労のせいでもうろうとしながらマッピを咥えようとしたら、リードに歯をあててしまい、レジェールを一枚ダメにしてしまった。大損失。なので、アルトを吹く体力が戻ってくるまでは、生リードで練習をすることにした。で、話をもどすと、休憩の後はメカニルフレーズや、コンディミ、ホールトーンなどの練習を行う。これを終えると、僕の体力はほぼSOLD OUT。
 本当はこの後に、オーバートーンやハーフタンギングの練習もいれたいのだが、体力が切れると同時に集中力もなくなるので、これ以上やっても意味がない。ただ、基礎練習だけでトレーニングが終わってしまうと、モチベーションが維持できないので、最後に少し曲をさらうのがいつもの流れだ。

 吹くのは、昔取り組んだことのある曲が中心だ。最近は「You'd Be So Nice To Come Home To」をよく吹いている。
 アルトで演奏する「You'd Be So Nice To Come Home To」は、アート・ペッパーがマイルスのリズムセクションと吹き込んだ音源が有名だろう。ていうか、他に知らない。そう書くと「いやいや、誰々が何年にどこどこで吹き込んだあの録音が・・・」なんてジャズマニアのおじさまに怒られるんだろうけど、知らんもんは知らん。そういうのは、これから覚えていくから、ちょっと待ってて。
 で、まあ、曲はよく知っているのだけど、吹いていて、ふと思った。「You'd Be So Nice To Come Home To」って、なんて意味なんだろう?

 よく「帰ってくれてたらうれしいわ」なんて邦題をよく聞くけど、うーん、それでもよく分からない。で、ネットで調べてみるとどうやら、「これから帰る家に、あなたが待っていてくれたらいいのに」というのが本義のようだ。全然違うじゃない? 待つ方と帰る方の立場が完全に逆転している。なんでこんな邦題になった? 日本語としての口馴染みは邦題の方がいいけど、意味が違いすぎて混乱してしまう。
 邦題のことはともかくとして、それでもやっぱり、英文の方の意味もなかなか掴みにくい。仮定法なのは分かるけど「You'd be nice ・・・」をどうとらえればいいのか、高校生までの英語学習の範囲では理解が難しい。多分、口語的な表現なんだろう。あなたがナイスなのに・・・? なんじゃそりゃ。ジャズリリックの邦訳サイトでは、例えば「If you had be home when I came back, it would be so nice.」のような形に書き換えて解釈している。ふーん、字面は全然違うけど、それなら意味は分かる。分かるが・・・こんなに書き換えてしまって、本当に意味は同じなのか?

 これは「You'd be ・・・」に限った話ではなく、他の曲にもこういうの、いっぱいある。歌詞全体を見渡し、作品の全景や、その歌が作られた時代背景なんかも理解しないと、歌が表現しようとしているシーンや心情が理解できない。その歌が歌われていた当時の、英語圏の人には多分、すぐに表現の内容が理解できたのだろうけど、日本語話者で未来在住の僕が意味を理解するためには、多少の努力や誰かの手助けが必要だ。難しい。
 で、仮定法で「あなたが待っていてくれたらいいのに」と述べているのだから当然、カノジョ(カレ)は待っていないわけで、カレ(カノジョ)にとってはナイスでもなんでもないわけだが、Eマイナーで始まった曲が紆余曲折経た後に、最後は平行調のGメジャーに解決して終わるのがこの曲の面白いところだ。ハッピーじゃない予想を笑い飛ばしているような、そして顔で笑って心で泣いているような、強がりで、ナイーヴなところが、いい。

 そういうのを、できればアドリブでも表現してみたいと思う。まあ、勉強も練習も全然足りないのだけど、そういう風にできたらいいな。
 昔、僕のサックスの師匠が「元のメロディを越えるアドリブができたらもう音楽やめてもいい」と言っていたのを思い出す。それってきっと、誰にも越えられない高みなんだろうね。でも、越えるつもりで勉強や練習をしないと、どこにも行けないんだろう。

 4月は、桜が咲いた頃に冷え込みが戻り、僕はまた強い倦怠感にヤラレている。ええい、どうにかならんのか、この体。

バンドレン・V16 A6M

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 アルトサックスを手に入れたので、リハビリをしている。
 管楽器には同属楽器というものが存在する。フルートであれば、ピッコロ・コンサートフルート(いわゆる、普通のフルート。笛吹きはこれを、「並笛」と呼ぶことがある)・アルトフルート、トロンボーンであればアルト・テナー・テナーバス・バスのように。そしてサックスには、一般的に扱う範囲では、ソプラノ・アルト・テナー・バリトンがある。
 僕は基本、サックスにおいては、テナー吹きだ。ただ、テナーを手に入れる前にはアルトを吹いていた時期があった。その時はヤマハのYAS-62を使っていて、それは売り払ってしまったのだけど、今回新しくヤナギサワのA-WO1(ライト仕様)を手に入れた。そして、以前にアルトを吹いていた頃に使っていたマウスピースだけを手元にのこしていて、それがバンドレンのV16、オープニングは5番のミディアムチェンバー(A5M)。
 これ、何年前のマウスピースだろう? 使っていたのがもう、15年・・・いや、それ以上前になるのか。ひゃー、歳とったなあ。当たり前だが、自分が歳をとった分と同じだけ、マウスピースも古くなる。
 アルトを真剣に吹いていた時期は短い。はっきりとは覚えていないのだけど多分、2年弱といったところか。サックスという楽器のコツがのめたところで、テナーに切り替えてしまったから、そんなもんだろう。
 その2年弱のうち、このマウスピースを使っていた期間がどれくらいかは、これまた全然覚えてないんだけど、YAS-62に標準装備の4Cはさっさとクビにしたはずだから、それなりに使い込んだんじゃないかな。渋谷のイケベ楽器で買ったことだけはよく覚えている。試奏した時に、アルトにおけるジャズ・サックスの標準とされるメイヤーよりもずっとしっくりきたのに驚いたからだ。メイヤーを土台にしたレプリカのひとつのはずなのだけど、素材のせいか、(当時の)現行メイヤーよりもパリッとした鳴り方をする。
 この僕のV16、結構気に入っているのだけど、ティップに傷がつきはじめていて、そろそろ交換時期だよなー、なんて思っていた。そこで、ヤナギサワのアルトにある程度慣れたところで、新調することを決めた。

 以前に、スモールチェンバーにしようかな、なんて書いたことがあったけど、機材を追加するのではなく消耗品の交換なので、今回は同じV16で、かつミディアムチェンバーのままでいく。
 ただ、ベンドのきき幅が狭い感じがするので、オープニングはひろげようかな、と考えた。ただ、僕の今の技術で、今のマッピ以外のセッティングをそのままで、オープニングを広げて吹けるのか、という点には不安を覚えたので、試奏して決めることにする。

 バンドレンのマウスピースなんかどこでも売ってるでしょ、とは思ったのだけど、念のため、大阪の大手楽器店に確認の電話をした。すると、「ご用意がありません」「注文になります」という返事ばかり。なんで!? 天下のバンドレンのマウスピースだぜ、どうして在庫してない? 
 大阪の大店に行けばバンドレンぐらい大量に在庫してあって、同じモデル・同じオープニングの個体複数の中から選定ができるはずと思っていたのだけど、僕の目論見はもろくも崩れた。東京では、それができたぞ? もうちょっと頑張ろうぜ、関西。

 どうせ注文になるなら、近所の楽器屋さんで頼んでも同じ事なので、一番信用しているお店で選定をさせてほしいとお願いした。すると、同一オープニングを複数そろえるのは無理だが、別モデルをひとつずつ用意するのは可能だとのこと。ありがとう、それで十分です、ヨロシクお願いします。
 V16のA5MとA6Mをひとつずつ用意してもらった。
 まず、ウォームアップのために自分のA5Mを少し吹いて楽器と体を暖めてから、新品のA5Mと交換する。全然違う! 新品の鳴りは、圧倒的だ。そして、自分のマウスピースがこんなにも消耗していたのかと驚く。テナーに新しいマウスピースを卸した時にも、新しいマウスピースはよく鳴ると感じたけど、あの時の比ではない。やっぱり、マウスピースって消耗品なんだね。肝に銘じておきます。
 とはいえ、同一モデル同一オープニングなので、基本的な性能に差はない。やはり、ベンド幅には不満が残るな。せめて半音、楽に下げられるといいのだが。
 そこで、次はA6Mに交換。同じリードでちゃんと吹けるかどうか不安だったが、問題なく吹けた。そして、十分とはいえないまでもA5Mよりはベンドがきき、音量があがった。これもよく鳴るね。確か、ヴィンセント・ハーリングがこれのスモールチェンバーのプロトタイプを吹いてるんだっけ。確かに雰囲気は近いかも。あとは、僕のトレーニング次第だな。

 よし、A6Mにしよう。
 吹奏感が重くなりすぎるようならA5Mにするつもりだったが、ほとんど差がなかったので、広めのオープニングをとることにした。ベンドがききやすいのもいい。その分、僕がしっかりコントロールしないといけないわけだけど、初心者だった頃よりは上手くできるはず。
 さて、これとは別にハイバッフルのマウスピースがひとつ欲しい。大阪のお店に電話して回った時に、クラウド・レイキーやバンドレンのJumbo Javaの在庫もあわせて尋ねたが、これも用意がないと首を振られてしまったので、選ぶ方法を何か考えなければ。すぐに手に入れなくてもよいので、これはじっくり考えようか。今度、マウスピース探しの旅をしに、東京へ出かけてもいいかもしれないな。

ヤナギサワ・クラシックモデル AC140

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 ヤナギサワのアルトサックスを買った。日本でサックスを買うと大抵、たくさんの付属品がついてくる。しかし例えば、ケースがついてくるなんていうのは、日本に住んでいる僕には当たり前のように感じるが、海外ではケースは自分で別に買う物なんだってさ。個人的には、ケースは別売りの方がいいかな。ま、ついてくるものを断る気もないけど。

 ケースの他には、マウスピース・リガチャ・マウスピースキャップ・ストラップ・コルクグリスが付属するのが一般的だろうか。クロスやスワブもついてくる、というパターンもある。メーカー出荷時に付属しているものもあるし、お店が独自にサービスでつけてくれるものもある。初心者ならね・・・いいことなんだろうけど、僕はすでにテナーを持っているので、大抵のアクセサリはすでに所有している。コルクグリスとか、そんなに何本もいらないってば。ま、ついてくるものを断る気もないけど。

 まあでも、せっかくついてきたのだから、使えるものは使うことにする。ストラップはケースに入れっぱなしにするのが僕の習慣なので、ヤナギサワについてきたストラップはそのままケースに入れておいて、使用することにした。コルクグリスも、楽器が新品のうちはネックコルクが硬いので大量消費する。これもケースに入れておいて、贅沢に使うことにしようかな。
 あと、マウスピース。
 これはね・・・使うんだけど、レギュラーメンバーにはしない。中学生に教える時だけ使う、ピンチヒッター役になってもらう。僕は普段、ジャズなどの音楽に使うことを前提にしたオープニングの広いマウスピースを使っているのだけどこれは、音が大きいし、(誤解を承知で言えば)ベンドをきかせるためにあえて不安定な設計になっている。このマウスピース、クラシックでは逆に使いにくい。だから、クラシック向けに、オープニングの狭いローバッフルのマウスピースが欲しかったんだよね。
 ヤナギサワのアルトサックスに付属してくるのは、AC140という品番のラバー製マウスピース。ホームページを見ると、「クラシック・モデル」というラインナップになるようだ。ヤナギサワのラバー製マウスピースにはもうひとつ、「エボナイト」というラインナップがあるが、同じオープニングとフェイシングの製品があるものの、品番ロジックも違うし、内部設計に差があるのかもね(知らんけど)。僕としては、クラシック演奏が目的なので、AC140で問題なし。

 さて、どんな音がするのかな。
 試しに、普段使っている青箱2.5をつけて吹いてみる。・・・狭っ! 息が全然入らない。僕は普段、1.8~2mm程度のオープニングのマウスピースを使っているのだけど、このAC140のカタログスペックは、その名の通り、1.4mm。クラシックのプレイヤーって、こんなに狭いマウスピース吹いてるの? 僕には無理だ・・・と思いつつも、しばらく吹き続けると、少し慣れた。時間をかければ慣れるもんなんだね、人間って不思議。
 そして、慣れはしたのだけれど、うーん、やはり狭い。そして音量が出ない。音量を出そうとして圧をかけると、リードミスがおこり、フラストレーションがたまる。音色もイマイチ。リードが薄すぎるのかもしれない。だって、2.5だもんなあ。クラシックの人って、青箱の3とか3.5を使っているイメージがある。
 後日、ばら売りの青箱3と3.5を買ってきて、試してみた。おっ、いい音するじゃん! やっぱりマウスピースって、リードやリガチャを含めた全体のバランスが大事だよね。3.5だと、倍音がしっかり乗った音色がする。3では、3.5に比べるといくらか音色がたよりない。でも、コントロール性を重視するなら3でもいいかもね。そして、体の緊張を緩めて楽器の響きを自分の胸に引き込むと、音色に広がりが出る。コレだよコレ、クラシックサックスは! いいなあ、ユージン・ルソーみたいな音がする。素敵。

 リガチャには、やはり付属品だったヤナギサワを使うことにする。YANY-SIXではなく、仕掛けのない、普通のリガチャ。昔の「魔法のリガちゃん」にちょっと似てるけど、多分リニューアルしてるよね。少し形状が違うように思う。素直な音がするので僕的には好感度が高い。リガチャは、あまり味付けが濃すぎない方がいいと僕は思っている。なので、ヤナギサワに限らず、ヤマハセルマーの純正リガチャも、実は結構好きだ。ヤマハは二本締めなので、ちょっと手間がかかるのが面倒だけどね。そういう点でも、逆締め・一本締めのヤナギサワ・リガチャは、ちょうどいい。

 このマウスピースを使う機会がどれくらいあるかは分からない。しかし、「いつかは手に入れておかねば」と思っていたクラシック向きのマウスピースが手に入ったのは喜ぶべきことだ。ただ、慣熟のために練習をしないといけないのだけど、どれくらい時間とれるかな? どうせ練習するなら、メインで使うV16でやりたいしなあ。うーん、まあいいや、それはまた考えよう。

 新年度が始まっている。今年度お邪魔する中学校はまだ決まっていない。ひょっとしたら、お声がかからないっていう可能性もあるのかな? 今まで割と順調に、連続してお呼び出しを頂いていたのだけど、それって実はラッキーだったのかもね。
 ま、こちらとしては準備して待つしかない。とにかく、練習、練習。そして体力増強。症状改善のためにも、とにかく体を動かすようにしたい。