笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

一の谷

平家方は騒ぎに騒ぎ、慌て、もしや海なら逃げられるかと思う。海なら助かるか。一の谷の前方の海へ多くの者が駆け入る。 日本文学全集09 平家物語 古川日出男(訳) 河出書房新社 平敦盛の首塚は須磨寺にあったが、では残りの胴体はというと、須磨浦公園の西…

慰霊と復興のモニュメント

震度7 神戸崩壊 「読売報道写真 阪神大震災全記録」 読売新聞社(編) 読売新聞社 小学校に通う娘が、「お父さんは地震の時は何してたの?」と尋ねてきた。どうも、学校の防災教育で、地震の時のことを調べてくるように言われたらしかった。普段忙しく暮ら…

「苦楽園口駅」 アルハンブラの思い出

先生はにこにこしながら僕に、「昨日の葡萄はおいしかったの」と問われました。僕は顔を真っ赤にして「ええ」と白状するよりしかたがありませんでした。 「一房の葡萄」 有島武郎 ハルキ文庫 僕は甘いものが苦手だ。 もちろん、全然食べないってわけじゃない…

旧居留地

「・・・そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向きつづけなくちゃいかん」そして、そのときだったと存じます。男がこう言ったのはー「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。・・・」 「日の名残り」 カズ…

ポートサイド地区

「黒髪短髪、以外と似合うっしょ」 癖っ毛がそうとわからないくらいに、光太郎の髪の毛は短く切られていた。 「何者」 朝井リョウ 新潮文庫 横浜駅を東口に出て、ベイクォーターを抜けてさらに神奈川区方向へ進むと、巨大なマンション群がある。ポートサイド…

「山手駅」 忘却と、予期せぬ再会

さっきから、かすかに甘いにおいが実験室の中に立ちこめていることに、和子は気がついた。どうやら、割れた試験管の中にはいっていた液体のにおいらしかった。「なんのにおいかしら?」 それは、すばらしいかおりだった。和子はそのにおいがなんのか、ぼんや…

「横浜駅」 東洋のサクラダ・ファミリア

行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし。 「方丈記」 鴨長明/武田友宏(編) 角川文庫 妻は、子どもの休みに会わせて…