笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ミニ四駆

「おっさん! 本当は飛ぶんだぜコレ・・・知ってんだろ? 知ってんなら帰ってきなよ こっち側によ」 「キリン」 東本昌平 ヤングコミックス 息子に「誕生日に何が欲しい?」と尋ねたら、ミニ四駆が欲しいと応えた。 近所にイオンモールがあって、よく買い物に行…

タンク山

・・・私は待った。陽の光で、頬が焼けるようだった。眉毛に汗の滴がたまるのを感じた。それはママンを埋葬した日と同じ太陽だった。ありとあらゆる血管が、皮膚のしたで、一どきに脈打っていた。焼けつくような光に堪えかねて、私は一歩前に踏み出した。私はそ…

吹奏楽

指揮者の背中には活力がみなぎっていた。最初のトランペットの響きで消えた会場のざわめきは、いまや、耳を傾ける聴衆の熱気に変化していた。音楽はなんといろんなことを人に思わせるものなのだろう。宇佐子の頭の中に様々なことが思い起こされたのは言うま…

花火

教室に戻ると純一と稔が、和弘と黒板の前でなにやら言い争っていた。「丸だよ!」 和弘の甲高い声が響く。和弘はクラスでいちばん勉強ができるけど、真面目なだけにすぐに熱くなる。「平べったいんだよ、バーカ」 何かにつけて和弘をからかう純一が小突きな…

空港

機上からサンフリアンをふり返ってみる。そこはもうひと握りの光でしかなく、つらなる星の光に変わり、空中の塵になって消え、やがて心の中にだけ残った。 「夜間飛行」 サン=テグジュペリ/二木麻里(訳) 光文社 僕が初めて飛行機に乗ったのは、高校の修…

コロナウィルス⑤(海水浴)

彼女は決して美人ではなかった。しかし、「美人ではなかった」という言い方はフェアではないだろう。「彼女は彼女にとってふさわしいだけの美人ではなかった」というのが正確な表現だと思う。 「風の歌を聴け」 村上春樹 講談社 僕は時々、須磨海岸に須磨海…