笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

バンドレン・ZZ

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 アルトサックスの練習に取り組んでいる。
 練習をすると、リードを消費する。これ、リード楽器では当たり前。消費したら、買わないといけない。僕の使っているバンドレンのトラディショナル(青箱)は、一箱10枚、定価で5000円(+ tax)。以前アルトを吹いていた時期はあったのだけど、リードのストックはないので、手持ちの分がなくなったら、買うしかない。
 この記事を書いている現在、為替レートは1$=150円台で推移していて、これがそのうち、200円を超えてくる円安になるという噂だ。ということは、輸入品であるサックスのリードの仕入れ値が上がるのは必須であり、そうすると売値も上がるのは間違いないだろう。前回のリードの定価の改定が去年の夏で、その後、お店によっては店頭での割引率の引き下げがあったようだ。ここのところ、年イチぐらいのスパンで楽器(や、そのアクセサリ類)の値段が上がっているから、またそろそろ値上がりしても全然おかしくない。
 今のリードの価格も決して安くはないが、先のことを考えると今のうちに買ってストックしておくのが得策だろう。
 そう思って、楽器屋さんに向かいかけた。しかし、その道中ふと、「今使っている青箱をそのまま使いつづけていいのか?」と疑問がわいた。


 僕は、テナーサックス用の生リードには、バンドレンのZZ(黒箱)を愛用している。トラディショナルとJAVA(緑箱)の中間のようなリードで、ジャズらしい音色だがJAVAほど明るすぎず、アタックの反応がいいところが魅力だ。
 色々なリードを試して、最終的にZZをレギュラーのリードに選んだのが、もう15年以上前になる。その頃からセッティングはほとんど換えていない。リードもZZのまま、今もテナーを吹き続けている。何の問題もない。僕にはよくあっている。
 そして、ブランクのあるアルト用のリードとしてトラディショナルを選んだのが、20年ほども前になる。もちろん、その時も色々なリードを試した。試した・・・はず。うーん、実を言うと、よく覚えていない。試したと・・・思うよ? 試したっけ?
 その頃に世間で一番評判のよかったウッドストーンのリードが、しっくりこなかったことだけは覚えている。しかし・・・JAVAは試したっけ? V16は? リコは? ヘムケは確か、割と好きだったような気がする。でも結局・・・たぶん、よーく比べて・・・青箱にした・・・んだっけ? いやー、忘れちまったなあ。あはは。

 まあね、青箱はいいリードだよ。次も青箱で全然問題ない。でも、ひょっとしたら今度はヘムケがしっくりくるかもしれないなあ。あれからずいぶん時間も経って、腕だって上がっているはずだし、僕の好みも変わっているかもしれない。
 よし、一度、違うリードを試してみよう。

 で、僕は楽器屋さんのばら売りリードのコーナーへ行きましたとさ。
 さーて、何を試すかな。アルトのばら売りリードの値段は、一枚500円程度。牛丼並盛りが食える。わかめコロッケそばも食える。うーん、安くない。二枚買ったら千円か・・・お試しだし、とりあえず一枚にしとこう。
 あれこれ迷うと、その分時間もかかるし、コストもかさむ。僕の方針としては、青箱か、否か、だ。青箱以外にするなら、それを一発で選びたい。だとしたら、やっぱり、実績のあるヘムケか、テナーで使っているZZだな。どっちにしようかしばらく迷ったけど、バンドレンの個包装が気に入っているので、アルトのZZを試してみることにした。

 買ってかえったリードの番手は3番。ZZの3はリードチャートで見ると大抵、トラディショナルの2.5と並んでいるので、同じ硬さを選んだことになる。
 練習の時に、まずいつもの青箱でウォームアップし、それからリード交換でZZの封を切った。まず見た目の違いではっきり分かることは、トラディショナルはフレンチカットで、ZZはアメリカンカットだということ。この、カットがフレンチなのかアメリカンなのかって、正直、そのことに起因する相異が僕にはよくわからない。だって、その部分だけ違うリードって、なくない? 赤JAVAだって、緑JAVAと何が違うって言ったら、バンドレンのHPを読んでみると、カット以外にも色々違うようなんだよね。ちなみに赤JAVAは好きではありません(個人の意見です)。でも傾向として・・・フレンチカットの方が多少、音量が勝るかなあ? うーん、でも、よくわからん。
 吹いてみる。
 音色は、全然違う! これだから楽器は面白い。
 トラディショナルと比較してZZは、音色が暗くて太いと、僕は感じる。トラディショナルが高い周波数の倍音で音を飛ばすイメージなのに対し、ZZは低い倍音を充実させていると言えばいいだろうか。音量・音圧はトラディショナルの方が圧倒的に高い。もちろん、ZZだって問題なく使えるレベルの音量・音圧を出せるけど、ちょっとリミッターがかかっている感じ。弱音側も含めて、音量のレンジは狭いかもしれない。ただ、ダークさのなかに少し甘さも感じる音色は、質のいい豆で淹れたブラックコーヒーのようで、青箱にはない味がある。これはこれで、いい。

 当たり前だが、テナーのZZも同じ音色がする。なので、アルトでZZを使った僕の感想を一言で言うと「テナーっぽい」だ。うん、これはテナーの音色だね。
 奏者によって意見は色々あるだろうけど、僕の場合、テナーに求める音色とアルトに求める音色は、ちょっと違う。少なくとも、同じであってはいけない。で、テナーの場合はZZがとてもしっくりくる。しかし、アルトにこの音色はちょっと、求めるものとは違うなあ。
 そういうわけで、アルトのZZは、なし。後日、僕はいつもの青箱を3箱買いましたとさ。ちゃんちゃん。

 リードのケーンってさ、国内で栽培できないもんなのかなあ? そう思ってグーグル先生に尋ねてみると、同じ事を考える人はやはりいらっしゃるようで、いくつか記事がヒットする。どうもうまくいかなさそうか、現在流通しているのと同じ品質のリードを国産で作ろうと思ったら、どえらい設備投資が必要になりそうだということは何となくわかった。そうなるとさ、やっぱり、樹脂リードに答えを求めたくなるよね。「フランス産ケーンで製造されたリードと遜色ない性能を発揮する樹脂リード」が開発されたら、個人的にノーベル賞を差し上げたい。リード高いよぅ・・・。