マクドナルドは時々利用する。例えば、無性に朝マックが食べたくなる時。子どもがハッピーセットのおもちゃに目を輝かせた時。運転中に小腹が減ったとき。人待ちをしていて珈琲が飲みたくなった時。
僕は、レギュラーメニューの時間帯にハンバーガーを頼む時には、いつもビッグマックを頼むことにしている。理由らしい理由はないのだけど、あえて理由を挙げるなら、カウンターで「ビッグマックください」と注文する時、やけに得意な気分になれるからだろうか。
子どもの頃、僕にとってビッグマックは、憧れのハンバーガーだった。
いや、僕だけじゃないんじゃないかな。昭和生まれの中年男なら、みんな同じ憧れをもっていたはずだと思うのだけど。どうだろう、違うだろうか。いや、違わないはずだ。だって、あのビッグマックだぜ？
ハンバーガーにまつわる思い出を話そう。
僕が子どもの頃、そもそもマクドナルド自体が、憧れの対象だった。
昭和の神戸生まれの僕にとって、ハンバーガーショップといえばまず「ドムドム」だった。ハンバーガーが食べたいと親に言うと、連れて行ってもらえるのはまずドムドム。神戸に最初のマクドナルドができたのがいつだったのかは知らないが、少なくとも僕が小学生になる以前に、マクドナルドでハンバーガーを食べさせてもらった記憶はない。
ドムドムのハンバーガーがどんな味だったのか、申し訳ないけれど、もう覚えていない。ドムドムには申し訳ないが、テレビコマーシャルで流れていたマクドナルドへの憧れが強すぎて、「マクドナルドが食べたい」という僕を親がドムドムに連れて行く度に、「ああ今日もマクドナルドではない･･･」と隠れてため息をついたものだ。
ちなみにそのドムドムバーガー、まだ湊川にあるらしい。機会があれば食べに行ってみようと思うけど、それはまた今度。
で、そのテレビコマーシャルでドナルドやハンバーグラーが宣伝しているのを見て憧れたのが、ビッグマックだ。
どういう訳か僕の親は、なかなか僕をマクドナルドへは連れて行ってくれなかった。ドムドムじゃない所に行きたいと言うと、なぜかロッテリアに連れて行かれた。これも違うと主張すると、モスバーガーに連れて行かれた。なんで？ 当時、マクドナルドのミートパティの成分に関する不穏な噂が流れていたからだろうか。真相は分からないが、とにかく、僕の親は明らかに意図的にマクドナルドを避けていた。
それでもやっとマクドナルドに連れて行ってもらえたのは、小学校中学年の頃だったはず。日本のあちこちの地域で今も、夏休みになると公園で朝のラジオ体操をやっていると思うのだけど、僕が子どもの頃にもあって、出席カードのスタンプをフルコンプしてマクドナルドに持っていくとハンバーガーがひとつもらえたのだ。僕はハンバーガー（マクドナルドの！）欲しさに毎朝やりたくもないラジオ体操に参加し、スタンプで一杯になったカードを親の鼻先につきつけた。これでは親も連れて行くしかない。こうして僕はやっと憧れのマクドナルドへ行くことができた。
しかし、ビッグマックを食べられたのは、もう少し先の話になる。
初めてビッグマックを食べたのは多分、小学生の高学年か、中学生になってからだろうか。ある程度体が大きくなって、親が「そろそろ食べきれるでしょう」と許可を出したのがその頃だったのだ。ビッグマックは、すべてが衝撃的だった。ごま付きのバンズ、二枚のミートパティ、あふれるレタスとマヨネーズ。そしてあの箱！ そう、箱！ 紙に包んであるのではなく、箱！ あの箱が嬉しくて仕方がなかった。
この「箱入りのバーガー」というのは無意識のうちに僕の心に刻み込まれていて、今でもビッグマックの箱を見ると、意味もなくわくわくしてしまう。あと、僕が高校生の頃に、マクドナルドの歴史的名作バーガー「チキンタツタ」が発売されて、僕はチキンタツタのヘビーリピーターだったのだが、あれも確か箱入りだったと記憶している。
箱入りって、バーガーに限ったことじゃないけれど、やっぱりちょっと特別感がある。そしてその特別なバーガーを注文する時は、ちょっと特別な気分になる。残念ながらチキンタツタは現在のレギュラーメニューにラインナップされていない。そういうわけで、僕にとっての箱入りバーガーといえばやはり、ビッグマック一択になるわけだ。
そうやってビッグマックばかり食べ続けているので、申し訳ないがマクドナルドの他のバーガーがどういう包装をされているのかよく知らない。子どもの食べるハッピーセットのチーズバーガーが昔ながらの紙包装だということは知っている。ひょっとしたら、ビッグマック以外にも箱入りバーガーがあるのだろうか。僕が知らないだけであるのかもしれない。もしそうだとしたら、ちょっと食べてみたいかも。
マクドナルドの、あの難しいメニュー表に、バーガーの包装についての表示もしてもらえると嬉しいな。箱のアイコンでも添えておいてもらえたら、今度試してみるのですが、いかがでしょう。
