笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

譜面台


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 演奏活動をする上で欠かせないアイテムのひとつに、譜面台がある。
 この譜面台というやつ、高校までの部活や大学のサークルなんかでは団体備品として所有していて、個人が自分で買う必要はない場合が多いのだけど、そういう学生の活動団体から飛び出した途端に自前の譜面台を用意しなければならなくなり、何を買うべきか結構悩む。
 僕はヤマハのスチール製と、ウィットナーのアルミ製を持っている。
 僕が最初に買ったのはヤマハで、後からウィットナーを買い足した。今から一本目の譜面台を買うという方には、アルミ製の軽量なものをおすすめする。僕の持っている二本のうちでいえば、ウィットナーの方。
 なぜか。
 理由は簡単、軽いからだ。当たり前だが譜面台を使おうと思ったら、自宅からホールやスタジオまで持っていかなければならない。ただでさえ重い機材を抱えたうえに、重いスチールの譜面台まで持ち出すのは気が重い。譜面台を無料レンタルさせてくれるスタジオならいいけど、備え付けの譜面台がなかったり有料だったりした場合はやはり、自分の譜面台を持ち出すことになるだろう。どちらかと言えば機材が軽量な部類に入るフルート奏者の僕でさえ、スチールの譜面台を持ち出すのは限られた場合だけだ。一本目は、軽いものを選ぶべきだと僕は思う。
 じゃあスチールの重い譜面台はいつ使うのかと言えば、屋外で演奏するときだ。
 屋外演奏でなぜスチールの譜面台がいいのかというと、それはずばり、風のせいだ。軽い譜面台は少しの風で倒れてしまうけど、重い譜面台はいくらかましだ。もちろん、よほど強い風であればスチールでももちろん倒れる。しかし、アルミの譜面台に比べると、多少倒れにくい。
 大学時代、僕が所属していた学生オケの備品がスチール製だった。重くて持ち運びに不便だったので、部員の間では不評だったが、屋外で練習するときにはアルミ製よりいくらか倒れにくかった。倒れやすさは、譜面台を使うときの高さや譜面のサイズと重量、脚の長さや開き具合にも依存するので、一概にスチールが倒れにくいとは言えないのは確かだけど、同じ条件であればやはり重量のあるスチールの方がいくらか安定性があるようだ。
 僕のヤマハの譜面台には、もうひとつ優れている点がある。
 それはコンテナケースがあるというところ。個人もちの譜面台にコンテナケースは不要だが、高校の部活動なんかで遠征する時など、コンテナケースがあるとトラックに積み込むときに便利だ。ナイロンや布のケースだとあまりきれいに積めないし、見栄えが悪い。もし今から僕が新しく吹奏楽部を立ち上げるなら、備品として導入する譜面台はコンテナケースつきのヤマハにするだろう。
 ヤマハを褒めたついでに、ひとつけなしておくと、ヤマハの譜面台の角度調整の機構は、僕はあまり好きじゃない。あれ、とてもわかりにくいし、あつかいにくい。個人的には自在に角度を決められる普通のネジ式がいいな。ヤマハの譜面台に初めて触れる中学生は大抵、譜面台の角度の変え方が分からなくて眉をハの字にしている。角度を変えられることを知らずに育った三年生もいたりして、「こうやって変えるんだよ」と教えると奥義を伝授されでもしたかのように驚かれることもある。
 せっかくだからひとつアドバイスを付け足すなら、譜面をおさえる棒と大きな譜面を載せるときに広げるアームがあるものを選ぶべきだ。少し値段があがるが、ここをケチってはならない。このギミックは必ず値段以上の働きをしてくれる。よほどの事故にあわなければ何十年も使えるものなのだから、数百円から千円程度の投資を渋らないようにしてほしい。なぜこんなことを言うのかというと、僕が最初に買ったヤマハにはこれがついていなくて、えらく不便だからだ。
 僕の場合、重さと譜面おさえがないのとで、強風が予想される屋外での演奏を除けば、ヤマハを持ち出すことはほとんどない。しかし屋内の演奏でもヤマハを使うことがある。それは、譜面台が二本必要な場合だ。製本して譜めくりに問題がない譜面であれば、二本持ち出すことはないのだけれど、まれにソロの譜面などで、三ページ以上を見開きにしなければならない場合がある。こういう時は高さをそろえた譜面台をふたつ並べて対応しなければならない。

 どんな教則本を読んでみても、どんな楽器を買うべきかは書いてあっても、どんな譜面台を買うべきかまで書いてある本はまずない。教則本、特に初心者向けの教則本には、楽器やその手入れ道具とともに、どんな譜面台を選ぶべきかきちんと書いておいてほしいと思う。去年、中学生を教えているときに、そんなことを思った。