笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

合奏は、いい。

 

 高校の先生をやっている知り合いに誘われて、高校の吹奏楽部の演奏会に参加することになった。
 しばらく前から、中学校の吹奏楽の生徒に技術的なアドバイスはしているけれど、自分が合奏の中に入るのは、自分自身が高校生だった時以来だと思う。大学以降は基本、オケで演奏してきたし、それ以外では、金管バンドには入っていたけど、木管金管の混成である吹奏楽は、本当に久しぶりだ。
 小さなバンドで、生徒全員に1パートずつふっても不足するパートを、僕を含む何人かの大人が補う。「生徒に、完全な編成での演奏を経験させてあげたい」という、先生の思いやりなんだろうな。頭が下がる。もちろん、お力添えさせて頂きます。サックスで参加することになり、僕はテナーとアルトを持ち替える。アルトは所有していないので、学校のものをお借りすることにした。あー、アルトほしい。

 で、参加することになってから気づいたのだけど、僕はサックスで吹奏楽の合奏に混じった経験がない。横浜のジャズスクールに通っていた時に、その教室の発表会で、サックスアンサンブルとコンボに参加させてもらったのが、サックスを使って合奏に参加した経験のすべてだ。さて、吹奏楽でちゃんと吹けるかな? 
 最近、サックスを集中的にトレーニングしていて、自分のピッチの悪さが気になって仕方がない。これは、テナーの音域のピッチを拾う耳が出来上がってきたお陰ではあるのだけど、合奏の中でピッチが悪いって言うのは、最悪だ。ちゃんと音程とらないとね。ガンバロ。

 そういうわけなので、チューナーを使って音程を拾う練習を少ししてから、合奏にお邪魔した。
 合奏やってみて、あー・・・合奏でピッチあわせるの、難しいな。合奏でピッチをとるのって、単純にA=442Hzで吹けばいいということではなくて、複数の奏者がA=442Hzを中心に多少のズレ幅を伴いつつハーモニーを形作っていくところに、滑り込んでいく、という感覚が必要になる。フルートを使って、フルートの音域でその作業をすることには慣れているが、テナーを使って、テナーの音域でやるのには慣れていない。音程がズレた時に、「ズレている」という感覚まではつかめるが、ピッチをどれくらい上下にふればいいのか、あるいはピッチではなくて音色の問題なのか、判断がつきにくく、自分もその操作に慣れていない。あー、難しい。
 それでも、高校生たちに迷惑をかけながら、ああでもないこうでもないとやっているうちに、だんだん感覚がつかめてきた。何とかなりそうで、ほっとした。これ、ピッチ感を磨くいいトレーニングになるなあ。やっぱり、合奏はいいね。楽しいし、上達する。

 学校からお借りしたアルトは、YAS-31。古い。いつの楽器なんだ? 先だって話題にした、YTS-61と同じ時代だろうか。Dのキィの調整が甘く、そしてC#キィのスプリングが完全にへたっている。そうなんだよ、この時代の楽器って、絶対にこのC#のキィがダメになってるんだよなー。スプリング交換で回復はすると思うのだけど、なんでこのキィだけへたるんだろう? 機構のせいなのかなあ。分からん。
 しかし、イントネーションはとてもよい。ヤマハらしいカッチリ感があって、古くてもちゃんとヤマハだっていうのは面白いな。ラフに吹いても、音程のぐらつきが少ないのは、ヤマハのサックスに共通する個性だ。反対に、僕のセリエ2は、ちゃんとイントネーションを意識して吹かないと、ものすごく音痴になる。最近になって、学校楽器のヤマハを吹く機会が増え、比較できるようになって気づいた。ヤマハが、奏者が意識しなくても「その音のピッチはこのへんですよー」と自動的に補正してくれる感覚があるのに対し、セルマーは、「どういう音を鳴らすのかは、お前が決めろよ」という感じで、奏者の裁量が大きい。だから、奏者のピッチ感が悪いと、全然音楽にならない。
 もちろん、ヤマハを吹いたって、奏者の耳がナマクラではどうにもならないってのは同じなのだけど、ヤマハはある程度、楽器側でピッチを補正してくれる。反面、ベンドをかけようとしても楽器から「いやいや、それはやりすぎだよ」というフィードバックがかかって、表情をつけにくい。セルマーでは、好きなだけ、好きなように音程を揺らすことができるが、奏者がきちんとコントロールしないと、まともな演奏にはならない。どっちがいいか、ということを一概に言うことはできないけど、最近のセルマーヤマハ的な方向の楽器へと進化していることを考えると、一般的には、音程のカッチリ感のある楽器が好まれているんだろうな。

 合奏の中で使っても、ヤマハは圧倒的にラク! 学校でお借りして、手に取ったその瞬間から、ちゃんと合奏にハマる。長年連れ添ったセルマーの方がよほどしんどいのは、一体どういうことだ? ヤマハのテナーも欲しくなるじゃないか。ちくしょう。
 もちろん、ヤマハのテナーを買うお金はないし、本気で欲しいと言っているわけでもない。僕は自分のセルマーをとても気に入っている。野性的なほど図太い鳴りは、ヤマハにはない個性だし、合奏の中でも我ここに在りとばかりに主張できる力強さがセルマーにはあるからだ。音程は、僕が自分で何とかしますよ。

 音程・・・僕の場合は、楽器のコントロールも大事だけど、その前にまず、耳だな。ハーモニーの中間域を埋める音を吹くための、ピッチの取り方、音量的なバランスの取り方を身につける必要がある。いつもはフルートを吹いていて、ハーモニーの上層でメロディを歌うためのピッチ感はもちろんあるけど、中低音のピッチ取りって、ちょっと感覚が違う。ああでも、この感覚、なんか懐かしいぞ。そうだ、金管バンドにいた頃に吹いていたトロンボーンの感覚だな。そういや、楽器は違うけど、同じ音域を昔やってたんだ。今さら思い出したわ。
 本番まで何度練習にお伺いできるかは分からないけど、演奏会までにはしっかり合奏にハマるようにトレーニングしたい。ガンバロ、がんばろ。