笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ファットリップの練習には生リードがいい。

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 さて、ジャズをちゃんと勉強しようよキャンペーンをはっている。
 サックスを、今までは基本、シンリップで吹いていた。ちょっとルーズめにして、ベンドがやりやすいようにはしていたけど、下唇を巻いてはいたので、これはシンリップ。
 しかし、シンリップをベースにしていると、ハーフタンギングができないことに気づいた。これって、僕だけ? 分からないけど、とにかく、下唇が下前歯の内側に巻き込まれていると、舌でリードに触ろうとする時に邪魔で仕方がない。どうしてもティップの部分にしか触れなくて、音が出なくなってしまう。これじゃ、普通のタンギングと変わんないじゃん。
 僕の理解では、ハーフタンギングとは、リードの面に舌を当てて軽くミュートした状態のことなのだけど、これってあってる? で、ついでに申し上げると、サブトーンっていうのは、そのハーフタンギングでは舌でミュートするところに下唇を置いて、常時ミュートがかかっている状態にすること、だと思っているのだけど、これもあってる? もし間違いだったら誰か教えて下さい。でも、今のところ、そういう理解でトレーニングをすすめている。
 でね、このハーフタンギングが、シンリップだとどうしてもできない。巻き込んだ下唇が邪魔して、ミュートをかけたボソボソ音にならず、完全に消えてしまうのだ。この下唇さえなければ・・・ということで、下唇を巻き込まない、ファットリップ奏法をそろそろちゃんと覚えることにした。

 サックスのアンブシュアの作り方に3通りあり、ひとつは最も一般的な、下唇だけ巻き込むシンリップ、そして上下両方の唇を巻き込むダブルリードに似たアンブシュアをつくるダブルリップ、最後がどちらの唇も巻き込まないファットリップ。ダブルリップで吹くことは基本的にはないかな。僕は時々、噛む力が強すぎる中学生にダブルリップをさせて、顎を開く感覚を覚えさせるようにするけど、必ず後でシンリップに戻させている。
 ダブルリップ・・・あまりメリットのない奏法だと思う。だから、ダブルリップで吹くサックス奏者ってほとんど見ないんだろうね。メリットという点で言えば、シンリップはやはりコントロールに優れる。リードを抑制する方向に力をかけやすい。ファットリップはシンリップとは逆に、リードのリミッターを外してしまう感じ。コントロールは難しいが、自由度は高い。音量も出る。まあシンリップでも、噛む力をかけすぎないようにしてあげれば、かなり自由度高く吹けるのだけど、ポピュラーに特有の特殊奏法ができない。この、特殊奏法の幅がひろがるというのが、ファットリップの最大のメリットかもしれないね。

 では、さっそくやってみよう。
 今年は例年以上にサックスを吹く機会が多かったので、生リードがリードケースに入っている。僕が使っているのはバンドレンのZZ(黒箱)。JAVA(緑箱)とTraditional(青箱)の中間ぐらいの雰囲気のリードで、ポピュラーにもクラシックにも使いやすい。悪く言えば中途半端なのだけど、どちらも演奏する僕にはちょうどよい。愛用のレジェールと、今年ラインナップに加えたVENNもあるが、まずはZZをセッティングしてみた。
 下唇を完全に前に出してマウスピースを咥える。おお、リードの縁が唇の内側の粘膜にあたる感触が新鮮だ。この、粘膜の部分でリードに力をかけて音が鳴る加減をさぐりつつ、息を入れる。おおお、鳴る、鳴るな。一応、鳴る。しかし、これ何の音だ? めっちゃ低い。イントネーションがとれない。難しい。
 力加減を探りつつ、イントネーションがとれるポイントを探っていく。リードミス、めっちゃ出るな。マウスピースのレールにかける力のバランスが崩れているのかもしれない。マウスピースの左右で力の入れ具合が違うと、リードミスになる。僕の口は右利きなので、左が弱くなりすぎないように気をつけると、リードミスは減った。慣れるまでは、バランスにも注意しないといけないね。
 30分ぐらい吹いていると、それなりにまともに音が出るようになってきた。なかなか疲れる。リードも疲弊したので、一旦交換することにした。ZZはリードケースに戻して代わりに、もうちょっと楽に吹けるレジェールを出す。

 少し休んでから、レジェールでファットリップの練習を再開する。・・・あれ、なんだこれ? 唇が滑って、何だか落ち着かない。そして、吹けない、吹けないぞ。わわわ、だめだこりゃ。
 唇の粘膜が触れるリードの表面が、レジェールだとめちゃくちゃ滑る。唇の位置を固定できなくて、全然吹けないな、これ。言うまでもなくレジェールは樹脂リードなのだけど、プラスチックは表面が濡れるとめっちゃ滑る。すると、唇で固定する位置が動いてしまい、アンブシュアが定まらず、吹けない。これ、VENNでもそうなのかな。試しにリードをVENNに変えてみると、うーん、やっぱり同じだ。VENNも滑ってしまって、吹けない。

 樹脂リード、こんな弱点があったとは。まいったな、こりゃ。
 いや、樹脂リードの弱点というよりは、僕がちゃんとファットリップのアンブシュアを固定する力が弱いだけなんだろう。生リードでは、リードのグリップに頼ってアンブシュアを作れていたけれど、多分それじゃダメなんだ。リードのグリップに頼らずにアンブシュアが作れるようになれば、多分樹脂リードでも問題ないはず。
 でも当面は、樹脂リード封印だな。しばらく樹脂リードでファットリップにトライしてみたけど、どうしても滑ってしまい、アンブシュアが一定の位置に定まらない。これでは練習にならないね。ファットリップでちゃんと吹けるようになったら、もう一度樹脂リードにトライしてみようと思うが、今は、封印。

 他の楽器でもそうだが、奏法を変えるというのは、けっこうな大工事だ。傍目には、いつもと同じトレーニングをしているように見えて、しかもうまく吹けないので「あいつ下手になった」なんて思われてそうだが、いやいや違うんですって、普段とは全然違うことをやってるのですよ・・・。
 ファットリップ奏法、できるようになるまで、何枚リード使うだろう。一箱でいけるかなあ? 生リードは高いので、あまり消費したくない。効率よくやりましょう。