笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

金管楽器のトレーニングには、モチベーションの維持が大事。

 

 トランペットの練習を続けている。
 低・中音域の鳴りは、かなり安定してきた。しかし、まだ自由自在というところまではいかない。バルブ操作に応じて、必要な音がすぐに発音できる、というレベルには達していないのが現状だ。狙い澄まして吹けば、まあ大体当たるかな。そういう感じ。
 音域は、Hi-Fを上限に、リップスラーの練習を続けている。割とラクにHi-Fが出せる日もあれば、Hi-Dあたりが限界、という日もあって、こちらも自由自在とはいかないね。打率は上がっている。しかし、「演奏できる」と言えるレベルにはほど遠い。
 いやー、トランペット難しいなあ。
 あーでも、トロンボーンの時もそうだったかなあ。音が出る、という段階から、曲が吹ける、というレベルに達するまでは、結構時間がかかった気がする。音は出るけど、音がでるだけでは曲は吹けなくて、自由に音をコントロールできるようになる手前の壁は、ずいぶん高かった。
 そして、例えば歌謡曲だとかJ-POPだとかのメロディを吹くためには、やはり少なくとも1オクターヴ半ぐらいの音域が必要。音域の拡張と、アンブシュアの自在性のレベルアップの両方を達成していくトレーニングが必要なわけだけど、とにかく、リップスラーとスケール・アルペジオだよね。ガンバロ。

 このへんのことは、中学生からもよく尋ねられる。「どうやったら上手にスケールが吹けますか?」とか、「高い音を出すにはどうすればいいですか?」とか。
 メソッドとしては、スケールなら「バルブ操作を素早く」とか「指とタンギングの一致」とか「音域に応じて息のスピードと向きを素早くを変化させる」とか、音域の拡張なら「息のスピードと向きをしっかり切り替える」とか「アンブシュアをリラックスさせて、でもちょっとアパチュアを引き締めて、早い息を入れる」とか、そういう風には教えるんだけど、でも結局、脳筋的なトレーニングを積む以外には、上達の方法ってないんだよね。特に金管、その中でもトランペットには脳筋的トレーニングしかない、って感じがする。小細工がきかない。小細工のしようがない。それが、トランペット、だと僕は思う。

 短期間で劇的に上達する方法があったら、是非知りたいなあ。なんか、そういう練習方法って、あるの? 知ってる方いらっしゃったら、教えて下さい。

 例えばね、息のあまり強くない、唇が特別にトランペット向きでもない、そういう中学1年生が本人の強い希望でトランペットに配属されて、2年生の春に部活紹介で無理なくM8のポップス(2ndでよい)を吹けるようになるような、そういう練習メソッドってあるんだろうか? 部活紹介の演奏って、まあ2年生も演奏するとは思うんだけど、あれぐらいの時期って大抵、3年生の頑張りで曲が出来上がっていて、2年生は正直、何吹いてるか分からん、っていう感じだと思う。
 トランペットってそういうもんだよ、って思ってるけど、でも実は、僕の知らない秘密の練習方法があって、それを実践すると、1年でMid-Bbぐらいまでの音域が自由自在に吹けるようになる、みたいなやり方って、本当はあるの? あったら、教えて、教えて。
 まあ、僕は知らないので、とりあえず地道にやります。

 あと、高い音だよねー。音域の壁をぶち破る、画期的な練習方法って、何かあるんだろうか?
 僕は、高い音を出すためのハードルに二つあると思っていて、ひとつは音の高さそのものの壁、もうひとつは倍音の壁だと思っている。
 だから、例えばBb管で第6倍音のHi-Fを出そうと思う時、そのHi-Fの高さの音を出すというハードルがもちろんあるワケだけど、そのHi-Fが第6倍音であるというハードルがその中には内包されている。
 だから僕は、トロンボーンを練習した時にまず、すでに演奏できた第5倍音のDを、第6倍音の4posiで出す、という練習をした。つまり、一旦、高い音を出すというハードルを取り下げて、高い倍音で低い音を出し、高い倍音の振動モードに唇を慣らす、という練習をしたわけだ。そして、4posiでDの音がきちんと鳴るようになったら、スライドを徐々に手前に引きつけていく。このとき、どこかで下の倍音に落ちてしまわないように気をつけながらスライド操作を行う、ということを繰り返すことで、Hi-Fまで出せるようにトレーニングした。
 やったことない人には、なんのことか分からん話だと思うけど、やったことのある人には、「あーなるほど」と思ってもらえるんじゃないかな。
 同じ要領で、第8倍音6posiでhi-Fを練習し、徐々にポジションを引き上げていく、という練習で、僕はHi-Bbまで出せるようになった。ちなみにもちろん、リップスラーで上昇するトレーニングも平行して行っている。ただね、リップスラーだと、最初のうちは打率が低くて、モチベーション下がるんだよね。スライドを使ってポジションを引き上げていく練習だと、「昨日は3posiのHi-Abまでしか出せなかったけど、今日は2posiのHi-Aまでいけた!」みたいに、達成度が段階的に可視化できる。でも、リップスラーだと、打率でしか達成度が把握できないので、すごく不安になる。
 実際、トロンボーンを練習している時に僕は、「せっかくトロンボーン買ったのに、実は僕には全然適性がなくて、一生上達しないんじゃないだろうか・・・」なんて悩んだものだ。吹けるようになった今では、あの頃の僕は可愛かった、と笑えるけど、当時は結構クヨクヨしたよなあ。

 そうそう、問題はモチベーションなんだよ、モチベーションの維持。
 僕は、もういくつかの楽器がある程度吹けるから、地道に根気よくトレーニングすれば、大抵の楽器は上達できるって知っているので、壁にぶつかっても「またか」ぐらいの気持ちでいられるけど、初めて触れる楽器で、自分が上手になれるのかも分からない時って、本当に不安になる。中学生を見ていても、個人練習のときに、そっと目頭をハンカチで拭っている子がいて、その「不安で、つらい」と書いてある背中を見ると、僕も締め付けられるような思いがする。
 そういう精神的な壁を乗り越えていくのも、メンタル的な成長のトレーニングという意味においては意味のあることではあるけど、過度にストレスが高いのは、心折れる原因になっちゃうよね。
 だから、ただ上達できればいい、身体的に向上できればメンタルはあとからついてくる、みたいな方法だけじゃなくて、ちょっと心弱めな入門者のために、毎日の進歩が実感できるような、やり方を伝えてあげたいな。