トランペット、伸び悩んでいる。
なんかなー。ロングトーンやリップスラーは、ある程度きれいにできるんだけど、思い通りに音を移り変わっていくことができなくて、曲を吹けない。ゆっくりの曲だと、次の音に狙いをさだめる余裕があるので、何とかなる。しかし、早いフレーズは無理。必ず音が外れる。
以前、挫折した時もそうだった。そこそこ音は鳴ってきているのに、曲が吹けなくて、その原因が分からず、従って問題を解決することもできず、吹くのをやめてしまった。とにかく、音の移り変わりがスムーズにいかない。ピストンを操作し、息のスピードを切り替えても、唇が素直に反応しないのだ。
唇は、全然反応しないってわけじゃなくて、さっきも書いたとおり、ゆっくり吹けばちゃんと追従してくる。なんで、なんで? 分からん。
これ、トロンボーンの時には感じなかったハードルだ。トロンボーンだとそんなに早いパッセージを要求されないっていうのもあるけど、でも「76本のトロンボーン」とか「sing sing sing」とか、それなりに早さを要求されるフレーズがある曲を吹いたことはあるしなあ。もちろん、吹けたよ。そして、そのスピードの限界は、どちらかというと、アンブシュアよりスライドワークによって制限を受けていた。
トランペット、なぜ吹けない? とにかくまず、原因を探ろう。今回の僕は、挫折して終わる気はない。だから、トレーニングは継続しつつ、教本を読んだりYoutubeで解説動画を見たりしてみて、自分の何が悪いのか、慎重にチェックしてみた。
そしたらさ、ひとつ気づいたんですよ。マウスピースをあてる位置が、下すぎるって。
いや、あのね、最初はちゃんと然るべき位置にあててたんですよ、マウスピース。一般に、マッピのリムの上端が、唇の赤いところじゃなくて、その上の肌の部分にかかるようにして、唇の上下の境目がマウスピースの真ん中か、少し上くらいを通るようにする、っていうのが理想的なアンブシュアとされている。僕ももちろん、それは知っていたし、練習を始めるにあたっては、鏡でマウスピースの位置を確かめながらアンブシュアを作って、その感覚を覚えてからトレーニングに入った。
でも、今の僕のアンブシュアは、明らかにマウスピースが下すぎる。いつずれたんだろう? 分からない。分からないけど、きっと練習をしているうちに、知らず知らず下がってしまったんだろうなあ。ちくしょう。
悔しがっていても仕方がないので、マウスピースを正しい位置に戻した。
するとね、吹けないんだな、これが。今まで誤った位置でトレーニングを重ねていたわけだが、唇まわりの筋肉が、その誤った位置で吹けるように仕上がってしまい、正しい位置に戻した時に吹けるようには育っていない。今までは出ていたMid- Bbより上の音が、途端に発音できなくなった。
それでも、Mid-Bb以下の音はある程度出せる。正しいマウスピースの位置で、その音域を使ってパラパラ吹いてみると、おおっ、ちゃんと唇が反応する。
やっぱりさー、あるんだよなー、正しい吹き方ってやつが。高い音はやはり出ないが、ちゃんと曲を吹けるのは、正しい位置にマウスピースを置いた時だ。
やれやれ、では、トレーニングをやり直しましょう。悔しいが、自業自得なので、仕方がない。今度は、マウスピースがこの位置から外れないように注意しながら、鍛えていくようにしなければ。頑張ります。
中学生にも、同じような症状の子が時々いる。つまり、基礎練習のロングトーンや、ゆっくり吹くスケールではいい音出しているのだけど、曲になると途端に吹けないっていう症状の子。特に文化祭なんかでポップスをやる時に苦しそうだ。コンクールだと、クラシックの曲を、長い時間をかけてトレーニングするので、何とか吹けてしまう。けど、テンポの速いポップスを短期間で仕上げようとするときに、対応できない。そういう子。
そういう風な子を今までは、トランペットに向いてない子、みたいに思っていたけど、実は違うのかもなあ。今度そういう子を見たら、マウスピースの位置を確かめてみよう。ひょっとしたら、先日までの僕と同じで、マウスピースの位置がおかしいのかもしれない。
マウスピースの位置を戻すと言うことは、フィジカルのトレーニングをやり直すということなので、以前と同じ音域を手に入れるにはかなり時間がかかる。僕は、トランペットでの本番もコンクールも抱えていないので、別に気にならないけど、スクールバンドに所属していて、来月はコンサートだとか、再来月はアンコンの校内コンペだとかっていう子だと、吹き方を変えるのは恐いだろうなあ。今まで積み上げてきたものを一旦リセットして、数ヶ月前の状況に戻るっていう事だもん。
でもね、恐れずに変えちゃうのがいいと僕は思うよ。だって、結局今の吹き方のままじゃ、上達しないわけでしょ? 中学生だと、僕が感じる以上に、修正には長い時間がかかかると思っちゃうだろうけど、怖がらないで、道を間違えた分岐点まで後戻りしてみるべきだ。僕も頑張るから、さ。