笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

曲を吹く、というステップ

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 トロンボーンの本番が終わったので、クラリネットの練習を再開している。
 僕の場合、シングルリードはサックスで慣れているので、トランペットと違って音は簡単に出せる。クラリネットで問題になるのは運指。シャリュモー音域(低音域)とクラリオン音域(中音域以上)では、同じ音を出すのに運指が異なる。クラリネットの共鳴構造は閉管と言われ、開管であるフルートやサックスでは音域が変わっても運指がほぼ同じなのに対し、クラリネットレジスターキィの開閉によって12度の跳躍となるためだ。
 この、音域によって運指(音)が違うっていうのがね・・・特殊なんですよ。吹奏楽やオーケストラで使う管楽器の中で、こういう共鳴構造をもっているのはクラリネットだけなので、慣れが必要である。
 とはいっても、やるべき練習メニューは、他の管楽器と変わらない。ロングトーン、スケール、アルペジオだ。まずは五線の上に加線2本のHi-Bb音までの音域に慣れていく。そこから上は、今はいいや。一応Hi-Es~Hi-Fぐらいまで出せるけど、ここは後の楽しみにとっておこう。高音域は、うるさいしね。
 しばらく休んでいたとはいえ、8月から吹いているので、3ヶ月ほど練習したことになるのだろうか。3ヶ月のうち、2ヶ月ぐらいはほぼ吹いていないのだけど、一応3ヶ月。運指には、それなりに慣れた。マウスピースの小ささにも慣れた。レジスターキィで区切られた音域の継ぎ目にはまだ苦労するけれど、打率を問題にしなければ、そこの問題もクリアした。打率は、練習しているうちに上がってくるだろう。

 よーし、ぼちぼち曲を吹くかな。

 どんな楽器も、実戦で使えなければ意味がない。実戦とは、曲を吹くことだ。さらに言えば、ステージ上で曲を演奏することだ。楽器は、人前で披露できるレベルに達して初めて「吹けるようになった」と言える、と僕は思っている。そして、それ以前のレベルは「音が出せる」と表現することにしている。
 僕は今、「クラリネットの音が出せる」レベルにいる。さて、ここから「クラリネットが吹ける」レベルを目指すわけだが、簡単でもいいから、短くてもいいから、とにかく曲をひとつまるまる吹けるようにしたい。極端な話をすれば、「たこたこあがれ」だって曲なのだから、そのレベルで言えば僕ももう「吹ける」ことになるだろう。でも、「たこたこあがれ」しか吹けないのでは、ちと寂しい。せめて、ポップスのサビが一節吹けるとか、そのレベルには達したいよね。

 なので、in Bbの黒本(ジャズ・スタンダード・バイブル/リットーミュージック)の曲をかいつまんで吹いてみることにした。テーマだけなら、なんとかなるはず。コードトーンだとかアドリブだとかは、またそのうちに。
 まあ最初は、「枯葉」かなあ。おっと、案外難しいぞ。中音域で吹こうとすると、いきなりレジスターキィの出番。低音域で吹いても、最低音まで使うことになるので、結構大変だ。ひゃー。「C Jam Blues」はできるけど、このくらいは吹けて当たり前か。じゃあ別の曲で、「Wave」でもやってみようか。うわ、うわわ・・・無理! 指がもつれてしまう。吹けない!

 クラリネットで「Wave」が吹けないのはきっと、譜面と運指がまだ十分に一致していないせいだ。譜面を見て譜面通りに楽器を吹く、という技能は、音符と運指が一致することが不可欠なわけだけどこれは、楽器を操作する技能とは、別。もちろん、フルートならラクラク吹けますよ、「Wave」のテーマ。それは、音符とフルートの運指がちゃんと僕の中で紐付いているから。サックスも大丈夫。しかし、僕の中ではまだ、音符とクラリネットの運指の紐付けが弱い。譜面を見ても、とっさには指がその形にならない。
 しかし、それができないと「吹ける」とは言えないわけですよ、やっぱり。

 とにかく、数をこなすしかないよね。初見演奏のトレーニングのような感じで、曲を覚えてしまうまで練習するのではなく、数回吹いたらどんどん新しい曲へ移っていく。そして、音符に対して指が素早く反応するようにクセづけていく。サックスやトロンボーンの時もそうやって力をつけた。他に方法があるのかも知れないけど、僕が知っているやり方はこれだけだ。そしてこの方法なら、時間はかかるが確実に吹けるようになる。
 クラリネットの練習時間をどれくらいとれるか分からないけど、年度末までにはある程度吹けるようになりたい。フルートでのるオケの本番もあるので、あまりクラリネットに時間はさけないから、年度末までに、そうだな、この黒本に載っている歌モノのメロディぐらいは確実に初見で吹けるレベルに達したい。

 そこから先は、どうしようかな。モーツァルトブラームスクインテットが吹けるようになるまで極める気はないけど、吹奏楽の簡単な曲が吹けるぐらいの技量までは頑張ろうか。いやー、でも吹奏楽クラリネットって、結構大変だぞ。相当指が回らないと吹けない曲が多いもん。僕のメインの楽器がフルートとサックスだとして、サブの楽器であるクラリネットに時間をかけすぎるのは、何だか本末転倒な感じがする。だから、あまり指回りの速さは追求しないことにして、それよりは、ジャズスタンダードのアドリブがワンコーラスぐらいやり過ごせるぐらいのレベルを目指そうか。うん、そうしよう。
 そうすると、コードに対してコードトーンが鳴らせるとかアベイラブルスケールを外さずに吹けるとか、そういう技術が必要になるわけだけど、僕の場合、クラシックの曲を正確に吹く技術を身につけるよりは楽かな。それが春以降の話。ま、気長にやりましょ。とりあえず今は、「Wave」がさらっと吹けるようになることを目標に頑張ろうっと。

 でも、クラリネットもいいね、楽しい。楽しいことなら、多少困難があっても、頑張れる。中学生たちもそんな気持ちで楽器を吹いているのだろうか。そうだといいな。