笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

「ダブラー」あるいは「マルチ」について思うこと。

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 同族楽器ではない、複数の種類の楽器を演奏する人のことを「ダブラー」とか「マルチ」とか呼ぶらしい。どのように使い分けるのか知らないけど、2種類だとダブラーで、3種類以上だとマルチなのかな? よく知らない。
 アマチュアとはいえ、人様の御前で演奏できる程度には扱える楽器がフルート(ピッコロ)、トロンボーン、サックスと、複数ある僕は、じゃあマルチってことでいいだろうか。たぶん、いいんだよね? 腕前のレベルとしては、そう高くない。でも公立中学校の吹奏楽部の子どもたちを教えるぐらいのことに不足はない。だから、もし皆様のおゆるしをいただけるなら、かしこみカシコミ、宣言させてもらおう。僕は、マルチだ。
 ついでに言うと、手前味噌で申し訳ないが、オカリナもそこそこ吹ける。リコーダーも、普通の小中学生をびっくりさせられるくらいには扱える。トラヴェルソもいけるし、EWIもいける。まあ要するに、フエとラッパの○カなんだな。しかしどんな楽器であれ、習熟には練習が必要だ。それなりに努力は積み重ねてきたつもりでいる。僕はバ○だが、無為の○カではない。

 別にね、それを目指して生きてきたわけじゃないんだ。ただ、リップリード、シングルリード、エアリードを全部扱えるようになったのは、偶然とはいえ、幸運だった。そのお陰で今、慢性疲労症候群の症状に苦労しながらも、確定申告が必要になるくらいのお小遣いがもらえる仕事ができる。有り難いことだ。
 そのお小遣い、生活に必要な分はそっちに回すけど、余剰はなるべく、お小遣いの発生源である中学生に還るような形にしたいと思っていて、新しい楽器を買ったり、楽器の消耗品やメンテナンスの費用にあてたりするようにしている。先だってはクラリネットを買った。習熟して自分がスキルアップすれば子どもに、より精密なアドバイスができるようになるだろう。
 それもこれも、自分がマルチだからできることだ。もし僕が、今の100倍フルートに習熟していたとしても、フルートしか吹けないなら、今と同じ事は絶対に出来ない。フルート以外の楽器のことを丁寧に教えてあげることもできないし、クラリネットの練習をしてみようって気にさえならなかったはず。間違いない。

 マルチって素敵。
 いやもうホントに、メリットしかないよ。少なくとも僕はそう思う。
 逆に言うとさ、プロでその楽器に十分以上に習熟していて、他の楽器に手を出す必要はないし、むしろ手を広げると専門の楽器の演奏の妨げになるっていう人は別にすると、他の人はマルチになろうって気をおこさないのかなあ?
 僕は一応、フルートがメインだが、サックスのトレーニングはフルート以上に指に負荷をかけられるので、サックスを集中的に練習している期間は、フルートを吹く時でも指の回りがいいと感じる。つまり、マルチでいることは、楽器を越えてフィジカル的なメリットがあるってこと。両方に十分慣れないうちは、フルートを吹いている時にサックスのフィンガリングが混じったりしてミスすることも多かったけど、近頃はそんなこともない。十分に習熟すれば、それぞれの楽器の特性が別の楽器の演奏に干渉するなんてことはないのだ。
 持ち替えも、慣れ次第だ。
 それは、アンブシュアについても同じ。以前、トロンボーン金管バンドに所属していた時に、メンバーの求めに応じて、数曲演奏するコンサートの中で1曲だけフルートを吹いたことがあったけど、ちょっぴり時間をあければ金管木管の持ち替えも全然不可能ではない。今なら、もっとスムーズに持ち帰られる自信だってある。
 複数の楽器が演奏できれば、ひとつのバンドの中で、「普段はサックスだけど、この曲は4thまでトランペットが必要なのに人が足りないから、そこだけラッパを吹く」みたいなことだってできる。そうすればお金出してトラを呼ぶ必要もない。選曲の段階で「この曲では、普段はフルートのもぐらに、トロンボーンに移動してもらえば演奏できるはずだから、選曲のまな板に乗せられる」っていう風に可能性を広げられるだろうしね。本番直前にサックスのメンバーが体調くずして、フルートの代奏は見つかったけどサックスの代奏は手配できないなんて時に、スライド式にメンバー補充するってこともできる。
 まあ、いかにマルチとはいえ、一度にふたつの楽器は演奏できないので、できることに限界はある。でも、いかなる演奏形態であったにしても、バンドの中にマルチのプレイヤーがいることで、演奏の可能性がぐっと広がることは間違いないだろう。

 しかし、少なくとも僕の周囲には、マルチの人はほとんどいないんだよなあ。なんでだろ? 「今は○○だけど、昔は△△やってました」っていう人は、時々いる。今はビオラだけど昔はホルン吹いてました、とか。どうして両方続けないんだろうなあ。
 とは言いつつ、分かんなくもないんだけどね。二種類以上の楽器を平行して練習する時間と労力をかけるのは、なかなか大変だ。僕も、変な話だけど、病気にならなければ今ほど練習に時間をかけられなかった。当たり前だが楽器の演奏技術は、練習をしなければ、上達どころか維持さえ難しい。
 僕のおかれている環境は特殊だし、歩んできた道も特殊だろう。これが幸運だったのかどうかは、本当のところはよく分からないけれど、今さら一方通行の人生を引き返すわけにもいかないのだから、行けるところまで行ってみようと思う。当面は、フルートの技術は維持しつつ、サックスについては特殊奏法の習得、トランペットは基礎力向上を目指す。トロンボーンは、楽器買わなきゃね。で、先だって買ったクラリネットはまだ届かないのだけど、手元にきたらスケールから始めようと思う。
 去年教えた中学生に、僕のことを「吹奏楽の神」と呼んでくれた子がいた。冗談だろうし、神は言い過ぎだけど、僕がちょっと特殊な管楽器バ○なのは認める。そして、○カにはバ○なりの生き方があって、その生き方が誰かの幸せになるのなら、その道のどんつきが見えるまでは歩いていってみようじゃないか。