笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ハーマン・ミュート。

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 しばらく前の話になるが、ハーマン・ミュートをもらった。
 トランペット用のハーマン・ミュートだ。ステムつきの、よしもと新喜劇のできるやつ。もらった時はまだあまりトランペットが吹けなかったので、しばらく眠らせていたのだけど、ここの所、とりあえず曲が吹けるレベルには達してきたから、つけて吹いてみることにした。
 おおお、僕もついに、ミュートをつけてトランペットを吹くところまできたか。そんな感動を覚えつつ、ベルに息をふきかけてからミュートをセットし、音を出してみる。音色は、ステムありで吹くと、みゃーん、みゃーんって感じ、そしてステムなしで吹くと、例のチーチー音がする。気分はマイルス。いいねえ、ハーマン・ミュート。

 僕はこの、ステムなしのチーチー音が好きだ。これぞジャズって感じがしていい。想像するのは、真冬のニューヨーク。スチームの湯気が流れる通りを、コートの前をかきあわせて歩いて行き、地下にあるジャズクラブの扉をくぐる。クラブの中の空気は、人いきれで汗ばむ湿度と熱気。響いているのは、ミュートしたトランペットの奏でる音楽。
 この音、絶対に西海岸じゃないよね。そして、夏でもないよね。絶対に、東海岸の、真冬が似合う。僕は残暑厳しい日本の神戸で初・ハーマンしたけど、チーチー音の中に、冬のハーレムを感じた。

 もっと抵抗感強めかと思っていたけど、ステムの穴を通して息がぬけるせいか、そこまで重たくないかも。しかし、ステムをつけて新喜劇させようとする時に、ミュートの先端をふさぐと、結構しんどい。それ以外は、あまり抵抗感感じないな。でも、音程はとりづらい。単純に、狙った音をあてるのもちょっと難しくなるし、音程も分かりにくくなる。以前、トロンボーンカップミュートをつけて吹いたことがあったけど、あんな風な抵抗感はない。カップミュートって、結構抵抗感あるよなあ、って僕は思っている。あのときは、何つけたんだろう。多分、ニューストーンラインだったと思うんだけど、なんせ10年以上前のことなので、あまり覚えていない。
 使ってみて驚いたのは、かなりモニターが悪いこと。ベルの振動が抑制されるせいか、音が手前に返ってこない感じがする。音が前に飛んでいる感覚はあるんだけど、奏者側へのフィードバックが恐ろしく少ないな。これ、合奏なんかで使ったら、自分の音は聞こえないんんじゃないだろうか。使ってみないと分からんけど。
 あと、噂には聞いていたけど、ピッチ高くなるなあ。チューナー使って確かめたわけじゃないから正確なところは分からないが、+30~40セントくらいな感じがする。合奏で使う時は要注意だ。特に、曲の途中でミュートのON/OFFがあるような場合は、チューニング管の抜き幅の差を覚えておいて、うまく調節しなければいけないだろう。これ、トランペットの上手な人は、30セントくらいなら口元で調整してしまうのだろうか。曲中でミュートをつけている長さにもよるだろうな。一瞬なら口元で調節、しばらくつけっぱなしならチューニング管で対応って感じだろうか。

 それにしてもミュートって面白いな。まるで違う楽器になったかのように音色が変わる。金管を吹く醍醐味のひとつだよね。木管には、こういうアイテムがない。もちろん、マウスピースの変更などで音色を変えることはできるのだけど、素人耳にもはっきり分かるような変化をつけられるのは、サックスぐらいじゃないだろうか。そのサックスだって、金管のミュートほど大きく音色を変えられるわけじゃない。金管のミュート、楽しいぞ。
 こうなると、ストレートやカップも欲しいよね。あと、トロンボーン用も。ああでも、使う予定があるわけでもないし、今は買えないな。使う機会があったら、その都度、そろえていくか。
 このハーマン・ミュートも別に、すぐに出番があるわけではない。でもプレゼントしてくれた人に、新喜劇吹けるようにするって約束しちゃったから、ほわんほわんする練習しとかなきゃね。で、そのためにはまず、片手で吹けるようにならないと。ということは、僕のトランペットはヤマハ製なので、3番管を固定しなきゃダメだな。輪ゴム、用意しとこうっと。