笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

トランペットが吹けるからといって、トロンボーンで使える音域が広がるわけではない、という話。

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 高校の吹奏楽部をトロンボーンでお手伝いすることになった。なので、先だってYSL-354の中古を入手し、リハビリに取り組んでいる。
 平行して、クラリネットとトランペットの練習もしている。ちなみに僕のプライマリの楽器はフルートで、セカンダリがサックス。で、その次にトロンボーン、そしてオカリナ、と続く。フルートとサックス・・・最近、吹いてないな。近頃、僕は一体なんのプレーヤーなのか、よく分からなくなってきた。まあ、いいや。高校生とやる演奏会が済むまでは、金管を中心に練習することにしよう。

 さて、トランペットに手を出す前、「トランペットが吹けるようになったら、トロンボーンの高音はもっと楽に出せるようになるのだろうか」なんて思っていた。両方吹けるようになった今、結論を言ってしまうと、こたえは「NO」だ。
 以前は第9倍音のCまで出せたトロンボーンアンブシュアがすっかり鈍って、第7倍音のAsが今の僕の限界だ。一応、それだけ出せていれば十分ではあるのだけど、もちろん余裕があるにこしたことはないので、音域的な意味でのリハビリも続けている。
 ところで練習中のトランペット、あまり早いテンポでなければ、簡単な曲は演奏できる程度の技量になってきた。テンポが速くなると、指も唇も追従できなくなるので、まだまだトレーニングする必要があるけれど、とりあえず「トランペット吹けます」と小さな看板を背負わせてもらうくらいは許してもらえる気でいる。そのトランペット、僕の演奏可能な高音側の音域は、トロンボーンと同じ、第7倍音のAsが限界。アパチュアを絞り込めば第8倍音のHi-Bbもあたる・・・みたいなところも、トロンボーンと同じ。

 説明するまでもないことかもしれないが、トランペットとトロンボーンオクターヴ違いのBb管だ。つまり、トランペットのLo-BbがトロンボーンのMid-Bbと同じ高さになる。
 でね、トランペットのMid-Bb(解放の第4倍音)を、もちろん僕は難なく出せるわけだけど、同じ音であるトロンボーンのHi-Bb(解放の第8倍音)を難なく出せるかというと、これがねー、出ない。
 不思議だよなあ、もちろんトランペットとトロンボーンでは、マウスピースの大きさも管の長さも違うわけだけど、同じ唇が同じ振動数で振動できないなんて。高い音が出るかどうかって、最終的には結局、唇がその振動数で震えるかどうかってことでしょ? なぜトランペットではできて、トロンボーンではできない? 奏者の唇と、発音の仕組みは変わんないじゃん。変なのー。
 低音側では、逆の現象がおこる。トロンボーンのLo-Bbは、もしトランペットで演奏しようとするとペダルBb(第1倍音)になるが、トランペットのペダルトーン・・・今のところ、僕は吹けない。難しいな、トランペットのペダルトーン! 時々、音程不明のブルブル音を出せる時はあるけど、これはペダルトーンとは言えないよね。当たり前だが僕は、トロンボーンのLo-Bb(第2倍音)はちゃんと出せるし、ペダルBbも、なんならペダルBbからスライドを伸ばして4posiのペダルGぐらいまでなら何とかなる。なのに、なんでトランペットのペダルは鳴らないんだろうな。変なのー。

 ちなみに昔、トランペット吹きの友人が、トロンボーン吹きの友人の楽器に自分のマッピ(もちろん、トランペット用)を突っ込んで吹いてみたら、トランペットの音域でトロンボーンが鳴っていた。もちろん、まともな音色ではなかったけど。しかし、うーんつまり、金管楽器の音域って、マウスピースで決まるってことか。
 だから例えば、もし可能なら、音域によってカップ径が変更できるような楽器(マウスピース)があれば金管楽器は、どの音域もある程度ラクラク吹けるようになるってことなんだろう。もちろん、そんなマウスピースは現実には存在しない。演奏中に無段階にカップ径が変わるマウスピースなんて、ありえるわけがない。

 じゃあさ、昔存在したベルが2本あるトランペットみたいに、吹き込み管が2本あるトランペットっていうのはどうかな? ベル2本仕様の理由は、ひとつがオープンでひとつがミュートになっていて、音色を瞬時に切り替えられるようにってことだったらしいけど、高音を中心に演奏する時は小さなカップ径のマッピで吹いて、低音を要求される時には大きなカップ径の方に切り替える、みたいにすれば、いいんじゃない?
 ちなみに、オカリナにはこういう楽器が存在する。ダブレットやトリプレットと呼ばれる仕様の楽器で、音域の異なる複数の管を合体させ、シングル管では実現できない広い音域を一人の奏者が演奏できるようにしている。この楽器、金管楽器によくあるように、マウスピースとベルの間に分岐をつくるのではなく、それぞれに吹き込み口をもつ独立した管をコンバインしてあるのだ。僕はシングル管の軽快さが好きなので、ダブレット以上のオカリナを持っていないけど、便利そうだなあとは思う。
 しかし・・・まあ、現実的じゃないよな、吹き込み管がダブルのトランペット。どう考えても、演奏しにくそうだし、それに重そうだもん。絶対、流行らない。ダブルベルのトランペットが廃れた現実を見れば、明らかだ。ナシ、なし。

 そういうわけで、結論。金管楽器の音域を広げるには、それぞれの楽器で、地道にトレーニングをするしかありません。以上。