笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ピストンかスライドか。

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 あれも欲しい、これも欲しいと、そんなことばかりこのブログで書いている。読んでくださっている方はうんざりだろう。申し訳ないと思う。
 でも欲しいものは欲しい。欲しいという気持ちを持つこと自体は自由だと思うので、そこはお許しいただきたい。で、実際に手に入れるかどうかは、どれだけ欲しい欲しいと思ったって、先立つモノの都合もあるわけで、全部片っ端から手に入れるっていうわけにはいかない。なので、本気で欲しいものには優先順位をつけて、順番に手に入れていくことになる。
 その場合、何を目安に優先順位を決めるかを考えなければならない。そういうとき僕はまず、欲しいかどうかは一旦保留にして、その品物が僕の生活に必要かどうかってことを考えることにしている。
 今、「これがあれば、あれができる」という必要感のあるものは、トロンボーンとアルトサックス。フルートも欲しいけど、ちゃんと使えるものが手元にあるのだから、必要とまでは言えない。
 トロンボーンとアルトサックスの必要度は拮抗している。目下、資金を積み立て中だが、どちらを先に買うかはまだ決めていない。資金・・・冬までには用意できるだろうか。あとは、その時の気持ちだね。その、冬までは、トランペットとクラリネットの習熟に務めたい。特にトランペットだよね、練習が必要なのは。クラリネットは、すでに音は出せるし、運指もある程度知っている。だから、たくさん練習しなきゃいけないのは、トランペット。頑張ってうまくなろう。

 人に貸していた僕のYTR-1335、手元に戻ってきて2ヶ月ぐらいになる。ほぼ毎日吹いている。もしもしカメさんのスピードではあるが、アンブシュアの力は向上してきているといえるだろう。ピストンの操作にもだいぶ慣れてきた。ユーフォニウムと違って、楽器本体の質量がトランペットは小さいので、ピストンを押し込んだ時に楽器自体が下がらないように気を遣う。練習を再開した当初は、ピストンを操作するとアンブシュアがくずれて大変だった。けど今は、まだ多少楽器が揺れてしまうけど、ゆっくり操作する分には問題ない程度にはコツをつかんでいる。
 ご存知の通り、YTR-1335は天下のヤマハ製だ。ヤマハの楽器を吹いていつも感心させられるのは、イントネーションのよさである。YTR-1335でBbのスケールを吹いていて、「この音のピッチおかしくない?」と感じるようなことは一度もない。本当によくできている。今は夏なので、チューニングスライドをかなり抜いているのに、ピストン(バルブ)を操作した音が極端に高く感じるようなことは、全くない。すべて、口元で補正できる範囲に収まっていると思う。
 ただね、やっぱりLo-H(1・2・3番管全部使うやつ)は高いし、Lo-C(1・3番)も、許容範囲とはいえ、高いことは高い。なので、練習していてどうにも我慢できない時には、3番管トリガーを使って音程を補正する。
 YTR-1335には3番管のみ補正機構がついていて、1番管の通称「カニ目」がない。Lo-Hを正しいピッチで演奏するには、3番管を目一杯抜く必要がある。結構めんどくさい。あーあ、カニ目つきのトランペット欲しいな。ついでに言うと、3番管のウォーターキィも欲しい。おっと、いかんいかん、また欲しいとか言ってる。そんなに金持ちじゃねえよって。

 バルブ(ピストン)という機構は、短いストロークで素早く音を切り替えられる素晴らしいシステムではあるが、複数のバルブの組み合わせによって音をつくる際に、どうしても音程がうわずる傾向になる。これは、主管の長さを延長するにあたって、2の十二乗根を定数として積をとる必要があるのに、複数のピストン操作によってより低い音を作るという仕様では和しかとれないというシステムの問題に起因する。
 なので、カニ目があったところで結局は、音程補正のための操作は発生する。ただ、1・2番管で奏するG音に補正をいれることができたり、薬指の短い奏者が3番管のトリガーを伸ばしきれない時に親指側で補正をいれることができたりするだけ。まあ、あるにこしたことはないけど。
 バルブ・システムの限界だね。
 この微妙な音程上のイントネーションの問題が、トロンボーンのスライド機構では発生しない。当然と言えば当然だ、スライドでは無段階で音程の調整が可能なのだから。奏者の耳がよくて、スライドの扱いに習熟してさえいれば、トロンボーンで音程的な問題が発生することはない。つまり、奏者の能力が高ければ楽器側から演奏上の制限をうけることはないってわけだ。
 じゃあスライドの方がバルブよりも優れているかというと、そうとも言えないのが金管楽器の面白いところ。やっぱり、スライドはストローク量が大きいので、特に低音域においては、バルブのような機動力は発揮できない。

 さて、トロンボーンも必要だなんて戯言を言っている僕だが、トロンボーンには一般的なスライド式に加え、ピストン式という選択肢がある。ピストン式の方は現代では特殊なので、ピストントロンボーンなどと呼ばれて区別されているが、19世紀にはそこそこ一般的に使われたようだ。その時代のオケの曲には、「これは、ピストン前提で書いてるだろ」としか考えられないようなのがあったりする。昨今では、コンボジャズなんかで使ったりするのだろうか。あまり見ないけど。
 ヤマハのラインナップにもピストントロンボーンの選択肢はあって、YSL-354Vというらしい。お値段は20万少々。末尾の"V"はバルブ(valve)のVかな? ピストントロンボーンはバックのカタログにも載っている。こちらはかなりお高い。でも、ちゃんと新品で製造されて、売ってるんだね。だから、ある程度は需要があるってことなんだろう。全然見かけないけど。

 ピストンの機動力は魅力的だが、ヤマハの方を観察する限り、トランペットのような音程補正の機構は備えていないようだから、ハーモニー重視の現代の演奏環境では、あまり選ばれないのだろう。これ、ユーフォニウムのコンペセイティングみたいに、押し下げたピストンの組み合わせによって自動的に音程補正ができるようなシステムは搭載できないのかな。やればできるって気は、しないでもない。ああでも、めっちゃ重たくなりそう。重いトロンボーン、嫌だ。バストロでさえ結構キツいのに、コンペまでつけたら、どえらいことになりそうだね。チンバッソみたいな構え方ならいいのか? うーん・・・。

 やっぱり、買うとしたら、トロンボーンは、スライドだな。その方が、見た目もトロンボーンらしいしね。トロンボーン、欲しいよね。細管のテナーバスがいい。
 ピストントロンボーンは、正直、バストランペットとの違いがよく分からない。マッピとボアが違うのか? よー知らん。それに、バストランペットこそ、見たことないよ。マーラーあたりで使ったりするのかなあ。忘れた。
 まあ、まんべんなく、あたりさわりなく使えるのは、普通のスライド式テナーバスだ。間違いない。