笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ヴェノーヴァの上達に意味を見いだせない。

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 先だって、中学校で吹奏楽部の保護者会があった。保護者会の後、保護者向けのミニコンサートが行われたのだけど、中学生も聴衆がいると気合いが入るらしく、練習の時よりいい音が出ていた。いやいや、練習でもそれくらい気合い入れて吹きなさいよ。言わんけど。
 音楽は、聴いてもらってナンボ。聴いてもらうために、僕たち演奏家は練習する。パンデミックのせいで演奏を披露する機会も減っているはずなので、中学生が練習の意味を見失いがちなのは仕方ないなあとも思う。

 かく言う僕も、近頃はちょっと練習の意味を見失いがち。
 フルートとサックスは、意欲的に練習している。これは、聴いてもらう機会があるからね。でも、ヴェノーヴァ・・・上達して意味あんのか? もちろん、ヴェノーヴァを吹く僕の目的は、アルトサックスのためのアンブシュアのトレーニングなので、上達には意味がある。あるのだけど・・・何だか近頃、ヴェノーヴァの練習がヴェノーヴァのための練習になってきているような気がして、どうにもモチベーションが上がらない。
 なーんかね、だったらアルトサックス吹けよ、っていう気持ちが、はてなマークの気泡になって脳みそを満たすのだ。

 トレーニングという意味で言えば、定期的に吹いていれば、アンブシュアの筋力維持は十分にできる。息のスピード感のカンもキープできる。しかし、ボディの方はどうだ? もちろん、ヴェノーヴァを吹くからにはヴェノーヴァの胴体を使うわけだが、まあね、音域の変化にあわせて変化する吹奏感の感覚を養うには、ちょうどいいですよ。しかし、運指がサックスとは全然違う。あーいや、全然ってほどでもないのだけど、半音を取る運指がリコーダーに近いからね、違うことは違う。そして、クロスフィンガリングの半音はとても音程が不安定だ。結構、難しい。
 で、ヴェノーヴァをヴェノーヴァとして練習し続けていると、この半音階の音程を問題にしないわけにいかなくなってくる。そうすると、もうこれは、サックスのトレーニングじゃなくて、ヴェノーヴァの練習だ。
 別にさ、ヴェノーヴァの練習したっていいんだよ? それはそれで構わない。でも、その練習の成果を、僕は一体どこで誰に披露する?

 楽器の練習ってやっぱり、誰かに聴いてもらう機会があるからこそ楽しめる。その誰かっていうのは、聴衆だけじゃなくて、一緒にアンサンブルする仲間を含めてもいい。でもなー、誰に聴かせる訳でもないソロの曲、誰に見せるわけでもない楽器の演奏って、モチベーションが維持できなんだよな、僕の場合。そして、例えばフルートでソロの曲をさらっているならば、それはひょっとしたらどこかで誰かに聴かせるチャンスもあるだろう。しかし、ヴェノーヴァはどうだ? これ、上達したとして、どこで誰に聴かせる? 正直、僕は思いつかない。僕の生活環境の中には、そういう場がないのだ。
 ちなみに、同じ事がEWIについてもいえる。ただし、EWI吹奏楽部の練習に持ち出すこともあるので、こちらは全然人前で使わないってわけじゃない。だから、普段は指の筋力維持のために練習しているけれど、それなりにモチベーション感じながら練習できる。

 そう考えるとやっぱり、ヴェノーヴァも面白いんだけど、それよりは、人前で使う機会のある楽器を練習したいよなあ。やっぱり、ちょっと無理をしてでも、そして狙う楽器のグレードを落としてでも、アルトサックスを買うべきだったか。うーん、悩む。
 廉価で、しかし信用はできそうなアルトサックス・・・まあ、ヤマハのYAS-280か、ノナカさんの扱ってるアンティグアも悪くはなさそうだな。台湾サックスも近頃は値段が上がっている。おお、アンティグアのスタンダードって、YAS-280より高いんじゃん? 店頭での割引率にもよるけど、圧倒的に安いって印象は、もうない。ひゃー。

 楽器の値段、年々上がり続けていて、今後下がるってことはきっとないだろう。音楽愛好家には厳しい環境だ。ほしい楽器があったら、さっさと買っておくっていうのが、実はクレバーな選択なのかもしれない。娘も、中学校の部活は吹奏楽に興味があると言ってるし、スチューデントモデルでいいから、さらに値上がりする前に欲しいものは手に入れておくべきかな。
 とは言ってもね、モノは楽器ですから、ソックスを買うような気持ちでポンとは買えません。よく考えましょう。ま、とりあえずヴェノーヴァ吹くか。