笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

トランペットの練習

 

 ここ半月ほど、トランペットを練習している。
 地域のブラスバンドトロンボーン奏者として所属していた十数年前に、せっかくだからトランペットも吹けたらいいなあと思って練習のためにYTR-1335を購入した。熱心に練習した時期もあったのだけど、あまり上達しなかった。そのトランペット、しばらく吹いていなかったのだが、中学校の吹奏楽部を教えにいくようになったので、また練習をしてみることにしたのだ。

 トランペットを練習していて思うのは、トランペットでは他の管楽器と違って、テクニックの習得よりもフィジカルのビルドアップが大事だってこと。
 もちろん、どんな楽器だってテクニックの習得(ソフト的・神経的な成長)とフィジカルの向上(ハード的・筋肉的な成長)の両方が大事だ。しかし、金管木管も両方吹く僕の体感として、フィジカルがある程度仕上がればあとはテクニック次第で上達していく木管に対し、金管はフィジカルの向上がより重要なんじゃないかという気がする。そして、金管の中でも特にトランペットは、フィジカルが仕上がらないと吹けない、という感覚がある。

 フィジカルで特に大事なのは、まず、アンブシュア
 息に対してダイレクトに反応する唇が手に入らないと、トランペットの演奏は厳しい。バジングの際に、唇を振動させようと意識しないでも、息をマウスピースに入れさえすればすぐに反応する唇を育てることが大事だと、近頃僕は思うのだ。でないと、吹けないもん。残念ながら、今の僕の唇は、全然そういう唇じゃない。音域に応じて、「この音域だと、こういう力の入れ加減かなー」って具合に調節しないと吹けない。しかしさ、現実の演奏場面で、いちいちこんなこと、やってられないよね。
 トロンボーンユーフォニウムも、もちろん同じような唇を育てておくのがいいと思う。しかし、中低域の金管楽器は、ある程度意識して唇をコントロールするような状態でも、それなりに吹ける。しかし、トランペットはダメだ。多分、ホルンもダメだろう。唇をコントロールするのではなく、息のコントロールで吹ける唇を育てなければならない。でなければその唇は、使い物にならない。

 もう一つ大事なのは、ピストン操作。
 ピストン楽器しか吹かない人には、なんじゃそりゃって話かもしれないが、ピストンのストロークって、木管楽器奏者の僕にとってはめちゃくちゃ長い。トランペットのピストンのストローク量って多分、2cmくらいあるのかなあ? フルートのキィストロークなんて、ほんの数mmなのだから、その数倍はあることになる。長い。
 トランペットを演奏する際、この長いストロークのピストンを、一気に押し込んだりリリースしたりすることになる。フルート奏者の僕には、実は、これが結構大変な作業なのだ。日常、フルートを吹いていると、テナーサックスのキィ操作ですら、ストロークが長いと感じる。
 そして、木管のキィに比べるとピストンの操作は、指の力がいる。しっかり下死点まで沈めたつもりでいても、Gb(実音)で2、3番の時なんか、「なんか息が通らない感じがするな」と思ったら2番がちょっと浮いてたりすることがある。
 トランペット上達のためには、すべてのピストンを、素早く確実に操作するための指の筋力が必要。これも練習で育てるしかない。

 でも、逆に言うとさ、体がしっかり仕上がってしまえば、トランペットの演奏ってそう難しくないんじゃないかな、っていう気もしている。まあ、そういう体を作ること自体が大変なんだけどね。
 以前、一緒に演奏していた上手なオーボエ奏者が、「リードのコンディションさえ良ければ、どんな曲でも吹ける自信がある」と言っていたのを僕は思い出す。とてつもない現代曲でもない限り、オーボエに要求される譜面って、そうタイトなものではない。だから、テクニカルな問題のクリアは割と容易。でも、そのための前提条件として、「いいリード」が手元あることが大事。その奏者は、オーボエ吹きの仕事の九割はリードの管理だとも言っていた。
 オーボエ奏者にとってのリードは、トランペット奏者の唇にあたるのではないだろうか。すると、トランペット吹きの仕事は、九割が唇の管理だと言うこともできるだろう。で、リードの場合の糸を巻いたりリードを削ったりという作業が、トランペットではいいアンブシュアを仕上げる、ということになるんじゃないかな。

 アンブシュアにしろ指にしろ、筋力的な向上って、多少時間をかけなければいけない。焦らず地道にトレーニングを続けよう。以前は、半年やって一旦挫折した。今回、もう半年ぐらいは積み上げてみたいと思っている。さて、ちょっとはまともに吹けるようになるだろうか。頑張ってみよう。