笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

パイロットのブラックインキ

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 濃厚なクリームの表面のように、しわ一つないつややかな紙上に、ぬらりと黒いシュプールが並びました。美しい、と私は思いました。

 

カルメン・ブラック」 関もぐら

 

 PayPayと神戸市が提携して、販売・サービス業に対する20%還元を行っている。去年は確か、飲食店の利用時に同じようなサービスが行われていたっけ。コーヒーを買った時にPayPayのポイントバックが大きくて驚いたのを覚えている。
 僕は、ポイントバックが大きいとかセールだとかという理由で買い物はしない。だけど、買いたい物が安く手に入るのはいいことだ。欲しいものがある時に、セールを待って買ったり、いつもストックしておくようなものをまとめて買っておいたりすることはある。

 さて、せっかく還元率が高いなら何か買っておこう。そう思ったのだけど、すぐに欲しいものはない。するとストックしておくような日用品ということになるのだけど、そういうのって大抵、ネット通販で買った方が割引率がいいしなあ・・・。と、悩んでいると、ひとつだけ、ネット通販でも安くならない日用品を思いついた。
 それは、万年筆のインクだ。

 以前、セーラーの万年筆に「極黒」という顔料系インクを入れていたらペン先が固まりかけた話は書いた。その時に、染料系の黒インクが一本あってもいいかもね、みたいなことも書いた。その染料系黒インク、まだ買っていなかったのだけど、せっかくだからこの折りに買っておくことにした。
 で、ナガサワ文具に行って買い求めてきたのは、パイロット製のブラックだ。色彩雫ではなく、万年筆用レギュラーのブラック、その70mlボトルを買った。

 パイロットのブラック、以前にカートリッジで使っていたことがある。色はブラックといいながら少し淡くて、濃いめのグレーといった感じ。この淡さが絶妙で、とても読みやすい。黒は、あまり濃くてシャープだとかえって目がつらく、また淡すぎるとなんだか薄墨みたいで暗い気分になる。パイロットの黒はそのバランスがちょうどいい。僕はとても気に入っていて、もし染料の黒インクを買うならパイロットにしようと前から決めていた。
 パイロットのレギュラーのインキは、ブルーブラックもそうだが、とにかく実用的だ。視認性・判読性にすぐれ、フローがよく、扱いが容易で、どんなペンにもどんな紙にも無難に使える。僕はパイロットのインキを信頼している。ちなみに、パイロットは”ink”を仮名で「インキ」と表記する。理由はよくしらないが、「インキ」という言葉はレトロな響きがして面白い。

 このパイロットの70mlボトル、なぜか一般的な文具店では手に入らない。30mlの小さなボトルは普通にどこでも売っているのだけど、万年筆を専門に扱っているお店でない限り、70mlは店頭に並べないようだ。僕はこの70mlのインキのブルーブラックをずっと使っていて、このボトルにはリザーバがついており、とても使いやすいので気に入っている。良いものなので、どこでも簡単に手に入ると有り難いのだが、あまり売れないのだろうか。僕は、ブルーブラックの方はボトルが空になると、30mlの小瓶をふたつ買ってきて、一度洗った70mlのボトルに入れて使っている。
 この70mlのボトル、カスタム823というプランジャー式の万年筆での使用を想定した構造になっているようだ。カスタム823は1.5mlものインクを吸入できるらしい。ひと息に大量の筆記をする人にはきっと便利だろう。僕もそれなりに書くほうだとは思うが、さすがに1.5mlものインクをひと息に使うほどは書かないので、僕にはオーバースペックである。でも、こうやって70ml用のインクボトルをふたつもそろえたのだから、カスタム823、ちょっと使ってみたいなあという気もするなあ。
 どこでも手に入るわけではないというのは、そういう特別なスペックのインクボトルだからかも知れない。そういう理由で、なのかどうかは分からないけど、この70mlのボトル、安売りをしているのもほとんど見ない。大抵、定価売りである。

 そういうインクなので、20%のポイントバックがあるというのをこれ幸いと、手に入れてみた。今は黒インクをすぐに使う用事はないので、封切りするのはしばらく先になるだろう。それまで大事にとっておく。

 

カルメン・ブラック】

https://note.com/sekimogura/m/mb8176ecade98