笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

マルマン・ジウリス


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 高校生の頃、ルーズリーフを愛用していた。ノートは、提出を求められる科目だけにして、あとは全部ルーズリーフ。その日に必要な科目の、最近のノートと白紙のリーフだけをバインダーにはさんでおくようにしていた。そうすると、無駄な紙を持ち歩かなくて済む。ノートだと、読み返さなくていいような古い書き込みや、絶対に使わない白紙の部分を一緒に持ち歩かなくてはならないので、重たくて仕方ない。ルーズリーフなら、その日に必要な科目の、必要な分の紙だけ持ち運べばよい。重宝していた。
 当時はまだ今ほどデジタル機器が普及していなかったので、紙文具も種類が豊富だった。ルーズリーフも色々なメーカーが様々な種類のバインダーやリーフを作っていて、選ぶのは楽しかったものだ。僕はマルマンのリーフを愛用していた。当時、マルマンは「カラーリーフ」という淡い色のついたリーフをラインナップしていて、僕はそのグレーが好きだった。
 グレーのカラーリーフを使っていたのには理由がある。僕は真っ白なものが苦手なのだ。真っ白なものを見たり、真っ白な部屋に閉じ込められたりすると、眩しくてめまいをおこしてしまう。これ、結構深刻で、会社の会議室で壁が全面白い部屋なんかだと、会議の途中でくらくらしてきて集中できなくなる。
 ただ、白という色の中にもいろいろあって、例えばコクヨのキャンパスノートの白はダメだけど、ツバメノートの白さは大丈夫だったりする。漂白剤のせいなのか、紙のコーティングのせいなのか・・・詳しいことはよくわからない。でも、紙を選ぶときには基本的に、白を避けるようにするのが僕の習いだ。

 大学にあがると、僕はルーズリーフもノートも使わなくなった。なぜなら、僕が大学生だった時代はレポート提出がコンピュータでタイプしたものに切り替わった頃で、手書きで文字を書くという機会が全然なかったからだ。もちろん、講義のメモなんかはボールペンでとっていたが、不真面目な学生だった僕は、レジュメとして配布されるプリントの裏面にメモを書き込んでいたので、ノートもルーズリーフも必要なかった。

 時は流れて、今僕は再び手書きで勉強したり書類を書いたりしている。人生はわからない。

 本を読むときに、紙に書き写しながら読むのだけど、その紙はノートだったりルーズリーフだったりする。
 ルーズリーフは、廉価な無印良品のリーフを使っている。本当は、もしまだ販売が続けられていればマルマンのカラーリーフ(もちろんグレー)を使いたかった。しかし、紙文具のマーケットは縮小しているのだろう、カラーリーフはもう生産されていないようなのだ。リーフ難民だった頃には色つきのリーフをさがして、コクヨが作っているのを使ってみたことがあるのだが、なんだかしっくりこなかった。紙というのは不思議なもので、同じように見えてもメーカーごとに書き味がちがう。マルマンの書き味に慣れていた僕は、どうしてもコクヨの書き味に納得がいかなかった。
 別にコクヨが悪いわけじゃない。さっき白の色の具合のことでも、コクヨはダメみたいなことを書いたけど、これは完全に僕の好みの問題であって、コクヨの問題ではない。コクヨの製品はどこでも簡単に安く手に入るので、コクヨが使えるのなら僕もコクヨを使いたいのだけど、なんかこう・・・ちがう、というか、僕にはあわないようなのだ。

 無印のリーフはいい。気軽に手に入るリーフの中ではいちばん廉価なのではないだろうか。そして、あまりまぶしさを感じない。書き味も悪くない。パイロットの万年筆を使うと裏抜けするけれど、僕はあまり裏抜けを気にしない(裏抜けしても問題ない使い方をしている)。とても、いい。
 ただ、無印のリーフにはたったひとつ欠点がある。にじむことがあるのだ。いや、ボールペンや鉛筆なら問題ないのだけど、僕は万年筆を使う。これは万年筆の染料インクの欠点でもあるのだが、小さい字を書くとにじんで線がつぶれることがあり、すると後から見返すときにひどく読みにくくなってしまう。

 そういうわけで、後から読み返すものを書くときはなるべく、マルマン・ジウリスを使う。
 ジウリスはすごい紙だ。かなり高価ではあるが、値段だけのことはあると思う。パイロットのペンをつかっても裏抜けしないし、にじまない。書き味は、紙のどこに書いても均一で、しかも心地いい。この「書き味が紙のどの部分でも均一である」というのは、他の紙にはあてはまらない。製紙の過程でムラができるのか、リーフの一面の中にペンがすべりやすいところとひっかかりやすいところがあるものだ。ジウリスは全面、マルマンの書き味である。素晴らしい。
 しかも、これは僕にとってしか重要ではないことかもしれないけど、ジウリスは真っ白なのに、まぶしさを感じないのだ。どちらかといえば光沢のある紙だと思うのだが、不思議と見ていてつらくない。長時間にらめっこしても、全然問題ないのだ。
 今僕は、資格取得のための勉強に、このジウリスを使っている。図書館で調べたことを書き写して、レポートにまとめるときに写した資料を読み返すが、書いていて苦にならないし、読み返す時にも見やすい。そして、高い紙なので、何となく気合いが入る。頑張ろうっていう気持ちになる。

 春からずっと調子が悪く、仕事も辞めてしまったけど、秋になってやっと少し調子が戻ってきた。新しく取る資格が役に立つかどうかは分からないが気を取り直して、ジウリスと一緒に頑張ってみようと思う。