笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

マテ茶

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 体調をくずしてから珈琲の量を少し減らしている。量としては、本当にほんの少しで、一日三杯のむうちの一杯を、大きなマグカップから小さなマグカップにかえただけ。
 しかし、それだけのことだけど「やっぱり物足りないな・・・」とカップの底を見つめる日もある。そういう時には、珈琲でなくていいから何か、珈琲のかわりになるお茶が飲みたい。
 珈琲とならぶホット飲料といえば、紅茶。周囲には「じゃあ紅茶飲めば?」と薦められるのだけど、でも僕は紅茶が苦手なのだ。
 子どもの頃は全然飲めなかった。珈琲は就学前から飲んでいたくせに、紅茶はまるでうけつけなかった。今では、香りの弱い銘柄なら何とか飲めるけど、ええとあの香りの強い・・・ダージリン? いやアールグレイだっけ? ・・・は絶対無理。
 そもそも、お茶系の飲料は基本苦手で、緑茶もあまり好まない。ウーロン茶もイマイチ。だから、お茶を珈琲の代わりに飲む気にはなれない。
 じゃあどうしようかと考え、ハーブティーはどうだろうと試したことがある。カルディに行って店員さんに相談し、「初心者ならこのあたりから」と薦められたカモミールを買ってみたのだけど、好きになれず、挫折した。以来、変わり種のお茶は何となく手を出すのが恐ろしく、珈琲が飲みたくなってもぐっと我慢するだけだった。

 でもね、先だってひらめいたんだ。ピーンとね。
 読みたい本があって本棚を探している時に、昔読んだ「モーターサイクルダイアリーズ」が目にとまった。そして、そこにあったのは文庫本だったのだけど、僕はこの作品の映画を観たことがあって、ふと、ゲバラがたき火にあたりながらマテ茶をすすっている場面が脳裏に浮かんだのだ。
 あ、マテ茶、いいんじゃない?

 以前、カルディに行った時にマテ茶も売っていたような気がしたのでお店を訪ねてみると、あったあった、ティーバッグ入りのマテ茶。さっそく買ってかえる。マテ茶とは一体何なのかよく知らなかったので調べてみると、灌木の葉や枝を乾燥させたものなのだとか。ふーん。
 さて、どんな味がするんだろう。ティーバッグに湯をそそぎ、恐る恐るすすってみる。・・・なんだろうな、最初は、中学校時代にお弁当の時間に学校から出された番茶の味が近いかもしれないと感じた。でも、いわゆるお茶の葉をつかったお茶の味は、ほぼしない(当たり前)。もちろん珈琲とは全然違うし、しかしハーブティーって雰囲気でもない・・・割と、あっさりしている。なんか、不思議な飲み物だなあ。
 でもこの味、どこかで味わったことがあると思って、時間をかけて記憶をさぐっていくと、ひょっとしてあれかなあと思い当たったのは、野菜の皮でとる出汁。
 僕は学生時代、カレーを作る時に、にんじんやタマネギの皮をそのまま捨てるのがもったいなくて、ラーメンのスープみたいに煮出したらいい出汁が出るんじゃないかと思って試してみたのだった。皮を冷水にぶちこんで30分ほど加熱すると、水が赤っぽい茶色になって、その出汁の味、今でも覚えている、このマテ茶に近いかもしれない。
 野菜の皮の出汁は、カレーに加える水の代わりに使って具を煮込むと、カレーの味がグレードアップする。とてもおいしい。その出汁に具と塩などを加えて味を調えると、スープにもなる。野菜の皮の出汁で作ったスープは、体があたたまるので、冬によく作った。

 マテ茶は「飲むサラダ」などと言われているらしいが、なるほど、野菜の皮の出汁と似ているのは、成分的に近いからかもしれないね。

 そのマテ茶、感動するほどうまくもないし、苦にするほどまずくもないと感じたけど、でもまあひとパック買っちゃったしねと飲み続けていたら、なんとなくハマってしまい、飲み続けている。先だって、二パック目を買ってしまった。
 現地では、小さな壺に入れて金属製のストローで飲むのが習慣らしい。砂糖も入れて甘くするのだとか。そういや、映画の中のゲバラもストローで回し飲みしてたな。ちょっとやってみたいかも。こうやって出会ったのも縁だ、機会があったら、あの壺、手に入れてみよう。どこで売ってるんだろう。