笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

アサヒスーパードライ


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 実家に寄ったら、お中元で頂いたというビールを押しつけられた。僕の実家は誰もビールを飲まないのに、なぜかビールを送ってくる人がいるらしい。あ、いや、祖父が飲んでいたっけ。しかし祖父は世を去ってすでに干支がひとまわりしようとしている。盆が過ぎたら極楽浄土に引き取ってくれというわけにもいかないので、僕がもらって消費することになった。で、箱のまま受け取って自宅で熨斗紙をはぐったら、アサヒのスーパードライだった。
 なんでスーパードライ
 祖父はキリン党だった。僕も国産ビールに関してはキリンが気に入っている。僕が生涯でアサヒを飲んでいた時期は、大学生の頃ぐらいじゃないだろうか。少なくとも就職した後に、積極的にアサヒを飲んだ記憶はない。
 スーパードライは、水みたいなビールだ。とにかくクリアで、ぐいぐい飲める。のどごしと味わいの、どちらをビールで楽しむか考えた時に、スーパードライは間違いなくのどごしを楽しむためのビールだろう。仕事が終わって夕食を済ませ、夜風にあたりながらじっくり味わうタイプじゃない。真っ昼間に仲間とわいわいバーベキューを楽しんだり、スタジアムで贔屓のチームを応援したりする時に飲むのがお似合いだ。
 祖父も僕も、バーベキューはやらないし、スポーツ観戦もしない。そういう家にスーパードライを送りつけてはいけない。もうちょっとダークで粘度の高いビールを送るべきだ。もらっておいてこんなことを言うのもなんだけど、どうせ送るなら喜ばれるものを、そっちだって送りたいでしょ?
 今もあるのかどうか分からないが、同じアサヒで重めのビールと言えば、黒生を思い出す。道子の「アフターナイン」がCMで流れていた、あの黒ビールだ。
 記憶は定かではないが、絶対に何度か飲んだことはある。黒生はビールの分類上、多分スタウトにあたるのではないだろうか。スタウトの代表格といえばギネス。ギネスはすっきりした口当たりの部類だけど、それでも日本で主流のピルスナーにはない風味がある。そして黒生は、ギネスをもう少しカラメル風味が濃厚な方向にふった味つけだったように記憶している。飲んだのが二十年以上前なので、ちょっと自身がないのだけど、当時そのように感じたことはなんとなく覚えている。どうせもらうなら、こっちのほうがいい。
 しかしまあ、せっかく頂いたので冷蔵庫で冷やして飲んだ。おおお・・・全く味がしない。ここ数年、日本酒ばかり飲んでいた僕はそう感じた。炭酸とホップの苦みと、僅かなアルコールの風味以外には、何の味もない。これはもっと、キンキンに冷やした方がいいのではないかと考えて、次は冷凍庫に入れて冷やしてみる。あ、これ正解。プルタブをひいたら凍りそうなほどの過冷却ぎみになるまで冷やして飲むと、炭酸のキレが際立つ。真夏の夕暮れに冷房のきいてない部屋で、ダラダラと汗をかきながらランニングシャツ一枚で喉を洗い流すのに最高だ。
 どうやって飲むのがいいかな、と考えながら次々と空けていたら、いつの間にか二ダース飲みきっていた。
 ここのところ調子が悪く、つい先だってまで休職していた。今は復職している。全快はしていない。少しずつ、仕事のルーチンに体を慣らしながら、体力と自信をつけているところだ。酒を飲むと翌日にひびきそうであまり飲まないようにしていたのだけど、もらいものの酒ということもあって、久しぶりに思い切り飲んだ。飲めた。こんなに飲んだら翌日にひびくんじゃないかと、ちょっと不安だったが、影響はなかった。よし。調子は上がっている。
 どうだろう、来年の夏には全快するか、あるいは日常生活や仕事に問題がないくらい病気を飼い慣らせているだろうか。そうだといいな。その頃にはコロナ騒ぎも収束しているといいな。そしたらたまには、キンキンに凍らせたスーパードライをぐいぐい飲みながらバーベキューなんかしてもいいかもしれない。


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