この頃、プラチナ製の万年筆用カートリッジ赤インクは出番が多い。ルビをふったり、ちょっと作文を添削したりするのちょうどいい。とても使いやすい。
以前は、どちらかと言えば嫌いな色だった。プラチナの赤インクは発色が明るく、作文したり本を書き写したりしていると目がチカチカして、どうにも好きになれなかった。軟細字のセンチュリーを購入したときに、「プラチナのインクってどんな色なんだろう」とブルーブラックと赤のカートリッジを買ったのだが、赤の方は気に入らなかったので、長い間引き出しの奥で眠っていた。
そのカートリッジの赤インクを近頃はよく使う。僕の好みが変わったわけではない。使い方が変わったのだ。
明治期の小説を読むと、送り仮名や漢字の読みが現代とは少し違う。もちろんいつもの様に書き写しながら読むのだけど、「これは現代の送り方とは違うから、きっと読みにくいだろうな」というところにはルビがふってある。僕は、いつもはルビまでは写さない。しかし、現代仮名遣いが制定される前の小説はルビを残しておかないと、ノートを読み返すときにきちんと読める自信がない時があって、そういう時はノートにもルビをふる。
このルビをふる作業に、プラチナの赤インクは最適なのだ。
僕が好む赤は暗めなので、赤で書いた本文にルビをふる時でもプラチナの赤はちゃんと目立つ。もちろん他の色のインクで書いた本文でも問題ない。素晴らしい。
適材適所、ものは使いようなのである。