笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

リード、また値上がりするってよ?

 

 知り合いのクラリネット奏者から、「バンドレンのリードがまた値上がりする」と聞いた。あれ、去年値上がりしたばっかりじゃなかったっけ? そう思って調べてみたのだけど、どうも本当に値上がりするらしい。しかもこの9月から!
 マジか・・・。
 生リード、正直、もう買えません。
 とは思ったのだけど、今後リードの値段が下がるとは考えにくいし、やっぱりなんだかんだで生リードを使う機会はあるので、「ちょっと買っておくか」っていう気になった。

 先だって、高校生のバンドに混じってサックスを吹いた。その時、練習では基本、アルトはヤマハのシンセティック、テナーはダダリオのVENNで吹き、本番でもそのまま使用するつもりだったのを、本番直前になって、生リードに買えた。アルトはバンドレンのトラディショナル、テナーはやはりバンドレンのZZ。
 というのは、実際に本番に使う想定でヤマハのシンセティックを使って練習していて、このリードには致命的な弱点があることに気づいたのだ。その弱点とは、「高音域が調節不能なほどぶら下がる」こと。第2オクターヴの左手の音域がね・・・僕のスキルの問題もあると思うのだけど、とにかく低くて仕方なく、締めようが噛もうが、全然上がらないのだ。この現象、クラリネットでも起こる。レジスターキィを押した、五線の上にはみ出す左手の音域が、とにかく低い。そして、生リードに変更すると、すぐに解決する。
 非常用に、アルト用の青箱を一枚だけ持っていたのは、ラッキーだった。本番前日にセッティングを変更し、本番では、練習の時よりはいい音程で吹けたと思う。
 ダダリオのVENNでは、ヤマハのシンセティックリードで発生したような問題は起こらなかった。何が違うんだろうね? 分からないけど、価格が二倍するだけのことはある。ただ、合奏で必要になるpp(ピアニシモ)が、思ったところまで弱くならず、実績のあるZZに泣く泣く交替させた。VENNで乗る本番、楽しみにしてたんだけどな。
 樹脂リードは、レジェールもそうだが、生リードに比べると、ダイナミクスのレンジが狭い。レジェールはフォルテ側が狭く、VENNはピアノ側が狭い。ヤマハ・シンセティックは、VENNに近いフィーリングがあり、高音側の音程がぶら下がる。ちなみに、パームキィを使った音域の発音も厳しい。Hi-Esから上の音域は、僕には発音できなかった。もちろん、トラディショナルなら吹けるのだが。

 うーん、なんだかんだでやっぱり、生リードの方が、演奏上の融通がきくんだよね。
 そういう理由で、吹奏楽だとか、クラシックの演奏をするにはやはり、生リードを使いたい。特に本番では生リードがいい。だから、個人練習(指のトレーニング・アンブシュアの筋力維持)では樹脂リードでいいけれど、合奏や本番では生リードがいいよね、っていうのが僕の結論だ。

 でも、高すぎるぜ、リード(怒)。
 普段、中学生を教えているけれど、結構ひどいコンディションのリードをずーっと使い続けている子が、時々いる。
 もちろん彼らは、リードも含め、楽器を大切に扱っている。ではなぜ、彼らのリードのティップは、マウスピースが透けて見えるほど薄く、先端は鋸状に摩耗しているのか? 彼らだって、リードは定期的に交換するものだってことを知らないわけではない。知らないはずがない。
 高すぎるんだよっ、リードがっ(怒)。

 僕が今使っている、十年ちょと前に買ってストックしてあったテナーのリードが、五枚入り一箱で2000円未満。それが今、ある大手楽器店で税込み3500円程度、値上げ後には4000円を越える。
 まあね、値段が上がるのは仕方ない、ということは理解している。無理して安く供給してもらって、それでメーカーや販売者が苦しくなって事業継続できなくなる、ということでは困る、ということは分かっている。けど、エントリーユーザーとしての消費者である中高生が、適切な時期に適切なリード交換をできなくなるほど高いっていうのは、やっぱりおかしい。
 だからせめて、公立学校の部活動で音楽を楽しんでいる若いリード楽器奏者が、正しいタイミングでリードを新調できるような環境ではあってほしいな。

 それに加えて、ユーザー自身や指導者も、経済的な負担がおおきくないような運用方法を考えたり、その方法を若い演奏者に伝えたりしなきゃいけないと、僕は思う。
 例えば、最初にヤマハのシンセティックリードについて、高音域のピッチの問題について言及したけど、僕が結局それでもシンセティックリードを使うのは、ランニングコストが圧倒的に安いからだし、トレーニングをするだけなら使用に何の問題も感じないからだ。それに、保存性もよい。生のリードをずっとリードケースに入れっぱなしにしていると、カビによって黒く変色してくるけど、シンセティックリードを含む樹脂リードなら、使用後にちゃんと洗浄している僕は、変色を経験したことはない。
 だから、「初心者が最初に使う」とか、「日常のフィジカルなトレーニング」には、性能的には劣るが経済的で保存性のよい樹脂リード、「シビアなコントロール性やフレキシビリティの要求される本番」には生リード、みたいに、シーンによって使うリードを変えることで経済的な運用をするってことを、指導者も奏者も楽器メーカーも、考えなきゃいけないし、伝えなきゃいけないんじゃないかな。
 演奏のために使えるお金が無限にある人にとってはどうでもいいことかもしれないけど、全員が必ずしもそうではないという公立学校の吹奏楽部に出入りしている人間としては、リード楽器の運用コストについて考えることは、義務だと思う。