笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

高校生との演奏会を終えました。

 

 高校生の演奏会の本番が終わった。
 サックスで合奏に参加するのは初めてだったのだけど、いやー、楽しかったのと、しんどかったのと! サックスって、僕が今ある程度吹ける楽器の中で一番、体力を消耗する楽器かもしれない。曲数や演奏時間からいって、フルートなら絶対に、こんなに疲れない内容だ。トロンボーンだったとしても、ここまで疲れないだろう。
 僕のセッティングが吹奏楽向きでないので、とても気をつかったっていうのもあるかもしれない。しかし、リード楽器に関してはもっと、アンブシュアまわりの筋力アップと、疲れない吹き方の習得を心がけないといけないな。
 あと、アルト⇔テナーの持ち替えの慣れも不足していた。フルート⇔ピッコロの持ち替えも、持ち替えて演奏することを始めた時には、持ち替え自体の練習をたくさんしたものだ。また同じような演奏をする機会があるなら、サックスでも持ち替える練習をしておかないといけないかもしれない。あー、アルトほしい。

 話はかわるけど、ふだん中学生と関わっている僕は高校のバンドに参加してみて、高校生っていうのは大人だなあ、と感じた。自分に必要なことを自分の力でちゃんとこなすだけでなく、周囲にも気を配って、どんどんすすんで行動できる。自分がその年齢を離れた後に初めて、高校生と長く付き合ってみて、そんなことを感じた。中学生も、3年生ともなるとかなり、高校生みたいに自立してくるけど、中学を卒業した子たちが高校生になるんだもんね、そりゃあ高校生スゲーわ。
 僕の子どもが小学生で、仕事で関わるのが中学生なわけだけど、今回の経験で、小→中→高の成長の流れを、俯瞰で見ることができた。楽しかった。

 人は、育つ。

 何をもって成長ととらえるか、というのは、その人が何歳なのかってのにもよるし、個人個人でも違うし、あと世代によっても違うだろうけど、スキルアップだとか技能の習得だとかではなく、人間としての成長って、何だろうね? 
 身体的には、ちゃんと生きてさえいれば、20~30歳くらいをピークとして、若い人は放っておいても育つ。しかし、人間の中身としてはどうだろう。例えば、今回僕が高校生と過ごしてみて感じたように、すごく単純なことで言えば「挨拶が適切にできる」とか、「相手との距離感を量って接する」とか、「周囲の状況を察知して、自分に必要な行動を起こす」とか、こういう社会的な存在としての人間の成長って、勝手に育つのかな? それとも、ある程度「育てる」必要があるのかな?
 僕の意見としては・・・社会的なスキルって、最低限の資質を備えた人(子どもであれ大人であれ)であれば、その社会がその人を受け入れさえすれば、その人がその社会の中で過ごす中で、自然と獲得されるんじゃないかな、って思っている。
 ということはですよ? 何が大事かっていうと、その人がどんな社会の中に生きることを望むか、その社会に飛び込む力や勇気をもてるか、という個人サイドの要件と、その社会に飛び込んできた人の資質を判断し、適性があるなら適切な形で受容する、という社会サイドの要件があるわけだ。

 はっきりとは知らないのだけど、今回、僕がお邪魔した高校の部活動は、中学校のように、ほぼ強制でどこかに所属するという主旨のものではないように思う。ということは、あの高校生達は「吹奏楽がやりたいから、ここに来ている」という子たちなわけで、基本、自ら進んで演奏活動を行っている子たちだってことだ。
 この、自分が選んでそこに飛び込んだ、っていうのは、とっても大事だよね。中学生だと、それでもまあ一応、部活は自分で選んで入るのだろうけど、ちょっと強制の部分もあって、「消去法で仕方なくこの部に入った」みたいな子も、時々いる。そういう子をやる気にさせてあげるのも、僕の仕事のうちのひとつなのだろうが、まあね・・・スタート時点での本人のモチベーションが低いっていうのは、色々な点でハードル高いよなあ。けど、先だって一緒に演奏した高校生達は、そのスタートのモチベーションが高い子たちばかりだった。だからみんな、仲がよさそうだったし、心から音楽を楽しんでいる様子だった。
 そういう心構えの集団だから、彼らは活動の熱量も高い。楽器の運搬や、練習のセッティングとバラシなんかも、積極的に、しかも楽しそうにやる。僕はいくつかの中学校のバンドを教えたけど、一人残らず全員がモチベーション高いっていうのはさすがに、なかったかな。
 まあこれは、コンパクトなバンドで、メンバーの親密度が高いっていうのも、理由のひとつかもしれない。僕が関わる中学生のバンドは、僕がヘルプに呼ばれるくらいだから基本、大所帯である。メガバンドにはメガバンドのよさがあるが、「3年間、一度も話したことのないヤツがいる」みたいなのは、ちょっと寂しいよね。メンバーの親密度と、バンドのモチベーションの高さには、相関関係があるっていうのは、間違いないと思う。

 そして、バンドというのは、その規模の大小にかかわらず、集団である。集団である以上、そこで過ごすためには人間関係を構築する必要があるわけで、その場面ではかならず、対人コミュニケーションスキルが求められる。
 その社会の中で必要とされるスキルは、本人のモチベーションさえ高ければ、必ず向上する、というのは僕の持論だ。高校生たちに僕が実際に話しかけてみて、コミュニケーションの得手不得手という意味ではすごくばらつきがあるなあとは感じたけど、しかし、「できるだけ人とは話したくありません」みたいな空気感の子であっても、音楽の話をすれば、ちゃんと応答してくれた。正直、話しかける時には「無視されるかも」と思いながら声をかけたのだけど、話してみれば思った以上に会話が弾んで、驚いた。多分、環境が彼を鍛えたのだと思う。本人のやる気さえあれば、どんな能力だって育つのだ。

 環境は、人を育てる。

 だから、逆に言うと、人を育てるということは、人が育つ環境を用意する、ということだ。僕はそう思う。
 さて、もうすぐ夏が終わる。僕も、夏休み明けの中学校に復帰する。僕は、彼らの成長のために、何ができるだろうか。つまり、彼らにどんな環境を用意できるだろうか。よく考えておかないといけない。