笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

万年筆の洗浄


f:id:sekimogura:20211010232815j:image

 

 僕は万年筆を使う。大量に文字を書く習慣があり、以前、ボールペンを使っていたら肩を痛めてしまって、その時に妻の勧めで万年筆を使うようになった。万年筆はわずかな筆圧で筆記ができる。僕にはなくてはならないツールだ。

 万年筆には定期的なメンテナンスが必要である。それを面倒だと感じることもあるし、楽しいと感じることもあるけど、いずれにしてもメンテナンスをしないとトラブルの原因になる。大した作業ではない。半年に一回程度、ペン先の洗浄をするのだ。きれいな水で数回、吸入と排出を行って汚れとインクを落とし、一日つけ置きする。それでおしまい。
 インクには染料系と顔料系がある。染料系は乾燥しても洗浄で容易に回復することができるので、メンテナンスが楽だ。一方、顔料系はうっかり乾燥させると、修理が難しく、ペンを使えなくしてしまうこともあるらしい。
 僕はビビリなのでメンテナンスをさぼった後のトラブルが恐ろしく、基本的に染料系しか使わない。そのおかげで今のところ、ペン先でインクが乾燥して筆記できなくなるトラブルに見舞われたことはない。しかし、一本だけ顔料系のインクがある。セーラー製の「極黒」だ。

 極黒は素晴らしいインクだ。万年筆の染料系黒インクは、どういうわけかグレーがかった色合いのものが多いのだけど、極黒はとても濃い黒の線が引ける。また滲みが少なく、線がシャープなので、込み入った漢字を小さく書いても字の中身が潰れない。書きっぱなしの文章ならいくら滲んでも気にしないけど、後から読み返したい書き込みやメモなんかは、極黒で書いておきたい。
 ただし顔料系の極黒は、まめにペン先を洗浄したり、なるべくペンに入れっぱなしにしないようにしたりと、いくらか管理に気を遣う。僕は、どちらかと言えばずぼらな万年筆使いではあるが、極黒を入れるペンは一本に固定し、そのペンだけは頻繁にペン先を洗浄するようにしていた。そして長い間、極黒を入れたペンは問題なく筆記できていたし、トラブルを起こしたこともなかったのだけど、先だって別のペンをナガサワで洗ってもらう用事ができたのでついでにそのペンの洗浄も依頼すると、「インクが固まってますね」と言われた。

 あれ、でも書けるよ? と思ったのだけど、店員さんはペン先をルーペで観察しながら、「顔料系はどうしても、インクが固まりやすいんです。お預かりして洗浄しても構いませんか?」と続けた。うーんそうか、仕方がないな。ヨロシクお願いします。

 インクを入れていたのは、同じセーラー製のプロフィットだ。店員さんいわく、プラチナのキャップなんかだと気密がしっかりしていて固まりにくいのだけど、セーラーのキャップはプラチナに比べると乾燥しやすく、かなり気をつけないとインクが固まってしまうらしい。ふーん、同じセーラーだから安心して使っていたのだけど、そういうことがあるのか。僕はプラチナのセンチュリーも持っている。センチュリーのキャップにはスリップシールという仕組みがあって、気密が高いらしい。ホンマかいなと思って一度、染料系のインクを入れて半年ぐらい放置してみたことがある。半年後、広告のうたい文句通りにちゃんと文字を書くことができた。じゃあ、セーラーだとそういう風にはいかないってことか? 実験してみる気はないけれど、今後は気をつけなければならない。

 極黒はまだボトル半分ぐらい残っているし、いいインクなので、できれば使いたいが、ペンのことを考えるなら染料系の黒を一本用意した方がいいのかもしれないな。で、封筒やはがきの宛名書きなんかの時だけ極黒を使って、それ以外では染料インクを使う。あーでも、黒に近い茶のインクが一本あるしな、どうしよう。プラチナのペンは今、カートリッジを差して使っている。カートリッジが空になったら極黒を飲ませてみるか。よしOK、そうしよう。
 プラチナのペンに差したカートリッジはまだ半分くらいインクが残っている。半月ぐらいは空にならないかな。もしプラチナに極黒を飲ませたら、その話も今度しよう。