笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

糖負荷試験/反応性低血糖症


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 コートリルを一ヶ月服用した。
 効果は、あるような、ないような。いや、ある程度は効果があると思う。しかし、体調の波を十分に吸収できているかどうかというと、やっぱり完璧とは言いがたい。特に、資格取得のスクーリングで京都に通っていた期間はつらかった。やはりフルタイム勤務並の活動をするのは厳しいらしい。特に前半がキツくて、療休をもらう直前の体力的に限界だった頃のつらさがあった。診察でそう医師に告げると、「別の検査、試してみる?」ということになった。
 ところでそのスクーリングの、キツかった前半と、少しマシだった後半で何が違ったかというと、補食をしたかしなかったか。補食というのはつまり、おやつだ。僕は午前も午後も、あるていど決まった時間に必ず空腹を感じる。休みであれば、腹が減ればそのへんにある何かをほどほどにつまんで空腹を鎮めるのだけど、スクーリングの前半ではそれをしなかった。すると、講義の後半では集中力が途切れ、講義後にはぐったりと疲れ切ってしまう。一日講義を受けて帰宅する道中なんか、疲れ果ててスマホをながめる気にすらならない。しかし、講義の合間の休憩にカロリーメイトを半箱食べて胃袋をなだめておくと、少なくとも階段が上れないほどのつらさは感じなかった。
 医師によると、ひょっとしたらインスリン濃度が上がるタイミングが適正でなく、一時的な低血糖が起こっているかもしれない、ということだった。調べてみます? と問われたので、僕はうなずいた。糖負荷試験を行うことになった。

 以前、労災病院ではインスリン負荷試験を行っている。これは、体がインスリンに対して正常に反応しているかどうかを調べる試験だった。静脈からインスリンを投入し、血糖値が下がればOK。僕の体は、正常に低血糖を引き起こした。インスリンに対する反応に問題はない。
 で、今回疑っているのは、そのインスリンが血糖値に対して適正に分泌されているのか、ということ。医師が言うには、糖尿病患者の中にはたまに、インスリンの分泌のピークが正常なタイミングとずれている人がいるらしい。分泌のタイミングにずれがあると、血糖値が下がってきた頃にインスリン分泌のピークがきて低血糖症状を起こす。そこで糖負荷試験では、人工的に糖を投与して血中のインスリン濃度の変化を調べる。

 あれ、じゃあコルチゾール値は? コートリル錠は?
 コルチゾールに関してはやっぱり、神大付属の先生も労災の先生と同じ見解で、低いことは低いけど、異常とまではいえないようだ。そして、通常であればコルチゾールの不足のみが問題ならコートリル錠の服用によってほぼ完璧に倦怠感を解消できるらしい。僕の場合はそうではなく、コートリル錠を服用していても倦怠感が残る。
 とすれば他の原因があるはず、というのが今回の診察での神大付属の先生による見立て。そこで糖負荷試験、という訳だ。
 じゃあコートリルはどうしましょう、と僕が尋ねると先生は、続けてもやめてもどっちでもいいよ、というような主旨の回答をした。なので、コートリルは一度やめてみることにした。
 前回もらったコートリルはもう残っていない。診察の朝に飲みきってしまった。その翌日からコートリルなしで過ごす。すると、しんどい。特に午前がしんどくて、正午が近づいてくる頃に倦怠感はマックス。つまり、検査と治療を始める前の情態に戻った。このことが何を示しているかというと、二ヶ月仕事を休んだにもかかわらず、僕の体は何一つ改善していないという事実。診察から検査までの一週間をこの状態で過ごして、インスリンの分泌に問題があるにしろないにしろ、やっぱりコートリルは当面必要だなと感じた。

 さて、検査。
 まずは絶食状態で採血。それからブドウ糖溶液を摂取する。このブドウ糖溶液というのは、要するにサイダーだ。ラベルだけ医薬品っぽいキリンレモンみたいな奴を、採血の窓口で紙コップに注いで渡され、それを飲んだ。なんだか、お好み焼き屋でサイダー飲んでるみたい。場所と行為のギャップが妙だ。味は普通にうまい。ニフレックを思い出して、その落差に苦笑いしてしまう。ニフレックもこのブドウ糖溶液の半分ぐらいのおいしさがあればいいのに。
 一般的な糖負荷試験は二時間だが、僕は四時間の検査。最初の二時間は30分ごと、あとは一時間間隔で、最初の一回をあわせると全部で7回の採血を行った。ルートをとってくれれば刺針は一回でいいのに、毎回ちくりと刺される。大した痛みではないけれど、度々刺されるのはやはり嫌なものだ。採血と採血の間は何もすることがないので、読書して過ごす。文庫本を一冊読み終わって、おつりがきた。食べたり動き回ったりしてはいけないので、ひどく暇な思いをした。

 で、結果はビンゴ、240分の採血で僕は低血糖を起こしていた。血糖値は70を下回っている。医師は反応性低血糖という言葉を僕に告げた。
 僕としては、納得の結果だ。以前に行ったインスリン負荷試験で感じた低血糖状態の感覚が、仕事中に感じたキツさによく似ていたから。対策としては、補食を行うこと、食事内容や習慣を見直すこと。反応性低血糖は、糖尿病の予備軍によくみられる症状らしく、早食いをしたり糖質が中心の食事ばかりをしたりするのはNGらしい。バランスのいい食事を複数回に分けて摂るようにしろってことだ。

 低コルチゾール低血糖。たぶん、僕の体の不調の原因はこれできまりだろう。具合が悪いのは嬉しくないけど、原因と対策が分かるとなんとなくすっきりした気分になれた。とにかく仕事と生活に差し支えないレベルまで調子を上げることができればいいのだけど、どうかなあ。不安である。とはいえ、僕の体はこの体しかないわけで、不安だろうが何だろうが、とにかくうまく付き合っていくしかない。
 まもなく仕事に戻る。この体、どうにか仕事に耐えられますように。