笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

高校の部活動(もちろん吹奏楽)

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 僕は普段、中学校の吹奏楽部に部活動支援員としてお邪魔している。こちらは大所帯のバンドで、三年生の引退前は、70人くらい部員がいた。これくらい人数がいると、単純に名前を覚えるだけでも大変。普段学校にいない、練習に全部参加するわけでもない僕には、まだ名前のはっきりしない生徒さんが数人いる。多分、このお名前・・・ぐらいには分かるけど、人前で大声出して「○○さーん!」と呼びかける自信はまだないです。ごめんなさい。
 どこの学校に行ってもそうだ。年度末になっても名前を覚えきれない子が数人、必ずいる。個人情報保護の問題もあって、名簿をもらえなかったり、生徒も名札をつけていなかったりするせいもある。ジャージで過ごしている日は胸の所に名前が刺繍してあるので、それを頑張って覚えるのだけど、制服の時にはその確認もできない。困る。部員が多すぎる、っていうのもある。まあ、僕が手伝いに呼ばれるということは、単純に生徒の管理が大変だからっていうのもあるだろうから、少人数のバンドなら支援員なんて呼ばないんだろうけどね。
 これだけ人数がいると、部員同士でも、三年間一度も話さなかった人なんているんだろうな。僕自身は中高生時代、そういう部活に所属したことがない。大学のオケは人が多かったから、弦楽器の後輩とか話したことない人もいたけど。今振り返れば、つまらないことでもいいから話しておけばよかったと悔いる。別に特別な理由はないけど、話してみれば案外いい奴だったかもしれないなんて思うと、もったいないことしたなあと感じる。


 ところで、オケ仲間に高校の先生がいて、転勤をきっかけに吹奏楽部の顧問になったらしい。彼は弦楽器奏者なので、管楽器のことはよくわからないらしいのだけど、音楽好きなので引き受けてみたようだ。
 以前から、「一度遊びに来て、楽器教えてやってよ」と頼まれていた。僕の予定と部活の練習スケジュールがなかなかあわなくて、ずっと返事をしていなかったのだけど、たまたま暇が出来たので、お邪魔してみた。
 人数が・・・少なッ! 全部で10人くらい? 何人かお休みらしくて、それでも全員で15人前後らしい。おおお、専任のサックスがひとりもいない。そんなバンドって、あるだろうか。いや、ここにある。夏までは三年生がいて、その中にはサックス奏者がいたそうだ。でも今は、ホルン奏者が兼任でバリサクを吹いている。最近始めたんだって。
 この人数なので、合奏しても音は薄い。ちょうど、中途半端な人数なんだよね、これくらいの規模のバンドって。アンサンブルだと逆に、一桁の人数で演奏することを前提にしてるから、音の密度がうまく計算されているのだけど、通常編成の曲をアレンジした小編成版って、中間を埋めて厚みを出す音やハモリのパートを省いてあるので、サウンドがペラくなる。

 でもね・・・なんかみんな、楽しそうなんだな。
 和気あいあいって、こういう雰囲気のことをいうんだろう。あーでもないこーでもないと言い合いながら、楽しそうに練習している。何かあると、あっちこっち歩き回って譜面を確認したり、冗談を飛ばして笑い合ったり。いいないいな、こういう感じ。
 わいわいやってる高校生達を見ながら、僕の友人は、「こいつらさ、とにかく音楽が好きなんだよね」と、半分呆れたように、半分は嬉しそうに言った。

 僕が高校生の時にいた吹奏楽部も、こんな感じだった。もう少し人数はいたけど、超がつく弱小バンドで、スアリンジェンをひーこらいいながら仕上げていた。でも、下手だから楽しくないってことはなかったな。そりゃ、リードやヤン・ヴァン=デル=ローストやスパークに挑戦してみたいって気持ちはあったし、それがどう考えても僕たちの技術では演奏できないことは悔しかったけど、集まって楽器を吹くこと自体が楽しかったから、大して上手じゃないってことは全然苦じゃなかった。
 部活って、これでいいんじゃん? 近頃僕は、そんな風に思う。テレビでとりあげられるような、全国大会目指すメガバンドも悪くないけどさ、楽しけりゃそれでいーのよ、部活って。
 逆に言うと、楽しそうな部活には、自然と人が集まるんじゃない? 今は年度の継ぎ目で、1、2年生しかいないから余計に少ないのだろうけど、もし春に一年生がいっぱいきてくれたら、できる曲も増えるし、音も厚くなるでしょ? 部活は楽しさが大事。規模だとか技術だとかは、後からついてくるもの。お邪魔した高校では、そんなことを再確認できて嬉しかった。感謝。
 ま、でもさ、それでもやっぱり、春には人が増えるといいね。その方が、楽しみが広がるのは確かだ。吹奏楽の曲は、歯抜けで演奏するよりは全パートそろっている方が、やっぱり楽しいからね。ご多幸を祈ります。君たちの楽しそうな姿を見れば、新入生もきっと飛び込んできてくれるさ。
 人数が増えると、問題になるのは楽器が足りるかってことだよね。楽器庫を見せてもらったら、使ってない楽器がわりとたくさんあって、まあ余裕あるかな。せっかく来たので、楽器のコンディションをチェックさせてもらったけど、状態はそう悪くない。でも、破損している楽器もあったし、調整に出した方がいいものも多い。新入生がたくさん入ったら、お金かかるなあ。予算はあるだろうか。いらんことが心配になってしまった。

 通常国会が始まって、昨年度の出生数がついに80万人にまで落ちたのにビビったエラい人たちが「異次元の少子化対策」なんて言ってる。異次元って、何ですか? 四次元ですか? 三次元でいいッスよ。ドラえもんのポケットはいらない。別に異次元でなくていいから、すべての子どもが普通のことを普通に楽しめる国にできたら、自然と人は増えると思いますよ。だから、ミサイルなんて買わないで、楽器買いませんか? そういう理屈の通用しない隣人がいるのも分かるんだけどね、ちょっと考えていただけませんか、若人の青春のために。