笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

YCL-255、キタ。

f:id:sekimogura:20230801230718j:image

 

 きた、キタ。楽器屋さんから連絡があって、注文していたYCL-255が届いたらしい。連絡をうけた当日は予定があってお伺いできなかったので、数日後に受け取りに行った。楽器本体、しかも新品で、以前は所有していたとはいえ現在は手元にない種類の楽器を買うのは本当に久しぶりだ。柄にもなく緊張してしまった。
 楽器を受け取り、支払いをして、アフターサービスの説明をうける。ヤマハはメーカー保証で、購入から一年以内に点検・調整をうけると3000円分のバックがあるらしい。それから、アクセサリ類の説明。それが何かという説明は僕には必要がないので、何が同梱されているのかということだけ確認する。スワブ、クロス、リードが一枚。リードはリコ(ダダリオ)のレゼルヴ3番。
 店員さんに「試奏していきますか?」と尋ねられたけど、そのすぐ後にでかける用事があったので、お店では吹かずに帰宅した。

 20年振りだなあ、クラリネット
 YCL-255のケースは、なぜかとてもでかい。ケースカバー一体タイプで、YTR-1335と同じデザイン。カスタムと同じサイズを想像して、そのサイズのケースが入る鞄を持ってでかけたのだが、その鞄にYCL-255は収まらなかった。厚みが倍くらいあるんじゃない? その分、耐衝撃性は高そうだけど、僕にはオーバースペックだよ。コンパクトな方がよかった。まあ、どうしても邪魔になったら買い換えるかな。

 で、後日、フルノーマルの状態で吹いてみたのだけど、記録を兼ねて、どんなことを感じたか書き残しておこうと思う。

/* ======= */

1.管体
 YCL-255の管体は樹脂製だ。
 以前のヤマハ製・樹脂管クラリネットの管体は、いかにも樹脂管らしいツルッとした表面処理だったような気がするのだが、現行のYCL-255は木製の見た目や手触りに近いマットな質感だ。メーカーのHPにもそう書かれているけど、その謳い文句に嘘はない。これ、とてもいいと思う。どういう処理をしてあるんだろう? 分からない。こういうのって、時間がたつと表面が劣化してきて、油を塗ったようにツルツルしてくることがあるけど、そういうタイプの処理じゃないような気がするなあ。うーん、知らんけど。長持ちしてくれたら、嬉しいな。
 手に取った感じは、軽い。量ったわけではないが、グラナディラより軽いのは間違いないように思う。
 ベルや管体にプリントされたゴールドのヤマハロゴも美しい。いや、ちょっと派手すぎるかな。YCL-255だからね、そんなに主張しなくてもいいよ。管体裏面には、インドネシア製であることが彫刻されている。こちらは目立たない。でも、いいものなんだからさ、むしろこちらは主張してもいいんじゃない? 全面に出していこうよ、メイド・イン・インドネシア

2.キィ
 洋白製。たいへん、美しい。
 こういう部品の粗悪なものって、表面処理にムラがあって、そこから劣化が進むことが多いけど、ざっと見た限り、新品の時点で致命的な欠陥はない。いいじゃん。ヤマハといえども、90年代頃のマシンメイドの楽器なんかだと、メッキムラやバリが残っていることがある固体を見たことがある(僕のYFL-311Ⅱには実際、メッキムラがある)。でも、さすがに現代の製品だな、ちゃんとしてます。動作もスムーズ。何の問題もない。
 タンポは、バレンチノ・・・というものらしいが、クラリネットのタンポに詳しくない僕は、それがどういう素性のものかよくわからない。吹いてみたが、気密に問題はないように思う。ちなみにレジスターキィも、おそらくこのバレンチノとかいうタンポが使われていて、コルクではない。

3.マウスピース・リガチャ
 4C。
 以前、どこかで書いたことがあるような気がするが、僕は4Cを評価している。吹きやすく、少しくらいなら落としても欠けず、爪でコリコリしても削れず、何年にもわたって中学生の演奏を支え続けられる4Cは、素晴らしい製品だ。学校備品のマウスピースとしての要件を100%クリアしている。高い耐久性とコストパフォーマンスを実現するために、素材はあえてエボナイトではなく、フェノール樹脂。その割り切り仕様も、素敵。
 ただ、やはり演奏上の要求からいくと、ちょっと物足りない。これは近々、交換する予定にしている。
 リガチャは、下締め2本ネジの、銀色。これ、地金は何だろう? ブラスかな? ブラスの地金に、銀メッキ? それとも、ニッケルかなあ? そんな気がするけど、わからん。まあ、普通。
 ちゃんとツカエルものではあるのだけど、僕は金属製のリガチャが苦手なので、これも近々、交換予定。

4.ケース
 でかい。でかいな、これ。でかすぎるよ。
 うーん、まあね、楽器のアクセサリにどういう選択肢があるのか、まだ知らないような中学生が、とりあえずこのYCL-255をワンパッケージ買って、他に買い足す必要がないという意味においては、いいケースだと思う。また、学校備品として、同じケースを積み上げて保管するというような使い方をする場合にも、(把手とか形状とか、気になるところはあるけど)まあ悪くないんじゃない? 過度な期待は禁物だけど、頑丈そうでもある。収納も広い。スワブとかリードケースとか、全部ぶちこんで、このケースひとつで、とりあえず練習にでかけられる。そういう意味では、とてもいい。
 しかし、でかい。
 ケースカバーを自分で選んで(カバーを使わないという選択肢も含め)、コンパクトに持ち運びたかった僕としては、このケースを高く評価できないなあ。じゃあ買い換える? うーん、それも迷うところだ。ケースって、結構高いのよ。よほど我慢ができなくなったら、考えるとしよう。

5.ファーストインプレッション
 まずはストックの状態(初期調整は楽器屋さんがしてくれているけど)、付属品だけで吹いてみた。
 レゼルヴ3番をしめらせつつ、コルクにグリスを塗って管体を組み立てていく。接合は素晴らしい。硬すぎず、緩すぎない。これは楽器屋さんの調整のお陰でもあろうと思う。説明書にはヤマハ製のコルクグリスが推奨されているが、僕はそれを忘れていて、クランポン製のコルクグリスを使ってしまった。けど、樹脂が劣化するなどのトラブルにはならなかったので、素性の知れない粗悪なグリスでない限り、何を使っても問題はないだろうと思う。保証はせんけど。
 組み上がったら、マウスピースにリードを取り付ける。普段、サックスを吹く時に、上締めの1本ネジのリガチャばかり使っているので、下締めに慣れない上に、2本ネジはめんどくさいと感じる。いやー、下締めの2本ネジ、何年ぶりだろう。スーパーめんどくせえ。まあでも、普通にセッティングできる。これが当たり前な人にとっては、何の問題もないだろう。

 音を出してみる。
 ははっ、ちゃんと4Cの音がするぞ。Lo-Bb(低いド)を吹いた瞬間、笑ってしまった。ヤマハ製スタンダードマウスピース・4Cの音は、軽くて硬い。これはサックスにも共通する音色の特徴だ。まあね、これはこれでいいんだよ。十分ツカエルものなのは間違いない。僕は交換するけど。
 パラパラと音階を吹いてみる。まずはLo-D(最低音のミ)からHi-Bb(高いド)まで。おお、ちゃんと鳴るじゃん。当たり前のことだけど、当たり前のことが当たり前にできるって、素敵。完璧だな。アンブシュアをシビアにコントロールする必要もなく、ノーストレスで吹けるのは、本当に素晴らしい。
 いやホント、管楽器の初心者が、初めて手にした楽器で、ちゃんと吹くことができて、「クラリネットって楽しい! 音楽って楽しい!」って感じられるのって、とっても大事だと思うんだ。YCL-255、やるなあ。いい楽器だ。
 胴体の音色は、樹脂管のくせに、ちょっと木製管のような香りも感じられて、よくできていると思う。樹脂管の音ではあるが。そりゃまあね、木製管と比べてはいけません。違う素材なのだから、「木の音と違う!」などと怒ってはいけない。ただ、もっとビャービャーとプラスチックの音がするのかと思ったら、いい意味で裏切られたので驚いた。
 音程は、とてもいい。さすがヤマハさんです。かなり適当に吹いても、ある程度ピッチがとれる。もちろん、あまりルーズに吹きすぎると、当たり前におかしなピッチになるが、普通に吹けば普通にピッチがとれるって、素晴らしい。よくできている。

 YCL-255、総じて満足できる楽器であると言える。いいね。
 あまりないし、致命的でもないけど、多少感じたマイナスポイントも一応、挙げてみよう。ダイナミクスレンジは、ちょっと物足りないかな。マッピとリードの相性の問題もあるけど、フォルテ側の破綻が早い。管体の、フォルテを受け止める限界も、ちと早い。綺麗な音を鳴らすなら、あまり強く吹きすぎない方がいい機種ではあろうと思う。あと、付属のリードだが、経験者が吹くことを前提にすると、4Cの狭いティップオープニングにあわせるなら、レゼルヴであれば3半の方がいいだろう。ちょっと柔らかすぎると感じた。ただ、初心者ならこれくらいでいいかもね。
 でも、マイナスポイントって言ったって、そんなもんなんじゃん? だって、プラ管なんだもの、プラ管でこの性能なら、十分すぎるよ。むしろ、このお値段(値上がりしたとはいえ、実売で10万円を切る!)で、ちゃんとしたクラリネットが買えるっていう事実にガクブル。心の底から驚愕だ。そして、メンテナンスに出すことでポイントバックすらあるという、謎のお得システム。ヤマハさん、良心的すぎやしませんか? ちゃんと商売してください。赤字出しても知りませんよ?

/* ======= */

 さて、クラリネットが手に入ったので、これからは練習を頑張ろう。
 吹き方(アンブシュア)も運指も知っている僕だけど、知っているからって「吹ける→演奏できる」ではないのが、楽器の面白いところ。やはりトレーニングを重ねていかなければ、音楽をつくりだす能力は獲得できない。
 金管でも木管でも、小さなマウスピースには苦手意識のあった僕だが、クラリネットについては、金管のトランペットなんかに比べればまだ、早く上達できそうな気がする。あとは、指。同じベーム式を土台にしているとはいえ、クラリネットの運指は、サックスともフルートとも違う。これに慣れないとね。しばらくは混乱しそうだが、そこはもう、慣れるしかない。頑張ろう。
 マウスピースとリガチャは、交換の予定だ。マウスピースは、もうちょっとオープニングが広くて音量の出せるものにしたい。音色は破綻するだろうけど、構わない。音量と、息のヌケを重視したいと思っている。

 リガチャについては、音響上のこだわりはないが、扱い慣れている上締めの一本締め、ファブリック製にしたい。GF-Systemがいいけど、ちょっと高いなあ、もうちょっと安いのないだろうか。探してみようっと。
 リードは、ヤマハのシンセティックリードでいいと思っている。僕のメインの楽器はフルートだから、生リードを管理する手間はとりたくない。あまり高い樹脂リードを奢る気もない。マッピが決まったら、それにあう硬さのものを手に入れよう。