先だって手に入れたYCL-255のために、マウスピースとリガチャを購入した。マウスピースはバンドレンのB40、リガチャはBGのFLEX。
僕は、マウスピースの音色や吹奏感には、ある程度こだわりがあるが、リガチャについては、あまり気にしない。もちろん、リガチャも種類によって、音色や吹奏感に大きな差があることは理解している。そして僕は、リガチャについて、全然こだわりがないってワケでもない。
じゃあ何にこだわるの？ っていうと、実に簡単で、「ファブリック製がよい」という、その一点。
ファブリックなんて言うと、何だか難しいが、要するに、金属じゃないのがイイってこと。じゃあ何で金属じゃない方がイイのかっていうと、いくつか理由がある。
まず一つ目は、「落としても曲がらない」から。
落とすなよ、って話なんだけど、基本がフルート吹きの僕はリードセッティングが上手でなく、どうしても時々、リードを取り付ける際にリガチャを落としてしまう。その際、金属のリガチャは衝撃の程度に応じて変形してしまうが、ファブリック製であれば、手元の高さから自然落下するぐらいの衝撃ならダメージを受けることは稀である。
そして二つ目は、「リードやマウスピースの先端を傷つけるリスクが低い」から。
まあこれも、ぶつけるなよ、って話ではある。でも、ぶつけちゃうのよ。ごめんね。ファブリック製であっても、リードはさすがにダメージをうけるが、マッピの方は、まあ金属をぶつけるよりは傷つきにくいかな。
さらに三つ目、「一本締めの、上締めの構造」。
ファブリック製って、大抵、一本締めで、上締め（逆締め）なんだよね。金属でも同じ構造のものは多いけど、一本締めのメタルのリガチャって、二本締めのものにくらべて軽量で、従って音色や吹奏感も軽く、「どうせ金属のリガチャを使うなら、ヘビーにガツンと音の飛ぶリガチャを使いたい」と思っている僕には、ちょっと物足りない。ならファブリックでいいや、っていう考えに、僕はなっちゃう。
他にも、ファブリック製のメリットはある。ある程度サイズの融通がきくので、マウスピース自体の太さや、リードのヒールの厚さを選ばないとか。あと、価格も安い。近頃は、金属製だと１万円を越えるものが主流だが、ファブリック製は逆に、１万円以内で購入できるものが多い。
でね、こういう特性のあるファブリック製のリガチャって、初心者にとっても向いてると思うんだよね。組み立てやセッティングを含めて、まだ楽器の扱いになれていない初心者にとって、事故のリスクが低いことは大きなメリットだろう。そして、廉価だということは、浮いたお金をリードやマウスピースの購入にあてることができるし、新調したそのリードやマウスピースの大きさをあまり気にせずに使い慣れたリガチャを装着することができる。
でもなー、みんななぜか、金属製のリガチャを買っちゃうんだよね。
中学生が個人所有で買うリガチャの代表格は、BGとウッドストーンかな。もちろん、どちらもメタルの。BGもウッドストーンも合成繊維や皮革製のリガチャも作っているけれど、中学生が買うのは大抵、メタル。
まあ、気持ちは分かるのよ。ホールで音のヌケやトビがいいのは、もちろんメタルの方だし、見た目にもキラキラ感があって、所有欲が満たされる実感がある。好きなの一個だけ買っていいよって家族の許しがもらえたら、そりゃあ、金属製を選ぶよね。
でももし、「まだまだ修行が足りぬ」という謙虚さがキミにあるのなら、僕はファブリック製のリガチャを薦めるなあ。
そういう風に言う僕も、アルトサックス用にはウッドストーンのコパーを使っている。ただね、これは僕が、これまでに述べたような考えに至る前に、これを買ったから。なので、もし買い換えの時期がきたら、今度はアルトサックスのリガチャもファブリック製にすると思う。
で、もしリード楽器の使用頻度が今より高くなって、ホールで吹く本番も増えたりなんかしたら、その時は金属製のリガチャを、追加で、買うかな。でも、先だって高校生と一緒にサックスを吹いた時に、ファブリック製のリガチャ(GF-System)を使ったけれど、別に性能的な不満はなかったけどね。だから、うーん、やっぱり買わないかも、メタルのリガチャ。そんなもんだよ。
で、でよ？ もちろんアルトはウッドストーンのコパーで吹いたわけだけど、強烈に音ヌケや音トビがいいとかっていう風には感じなかったよね。楽器本体の性能と調整不足を補えるほどのメリットはなかったなあ。
サックスに限らず、どんな楽器でも基本的には、まず正しい吹き方、正しい楽器の扱い方に習熟するべき。それができた上で、現場の要求に応じて楽器の助けがほしい部分を、機材の選択で補う、っていうのがオーソドックスな考え方ではないだろうか。
だからね、やっぱり僕としては、特に初心者には、ファブリック製のリガチャを強く薦めたい。
