笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

「So What?」を演ってみる。

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 楽器の練習は、曲が吹けるようになると俄然、楽しくなる。近頃、トランペットの練習が楽しくて仕方がない。僕は、ロングトーンとスケールだけでも結構楽しめるというちょっとおかしなタイプだが、それでもやはり、曲が吹けるなら吹きたい。
 簡単な童謡からジャズスタンダードまで、出せる音域に収まる調に直して、パラパラと吹くのは楽しい。ここからさらに突き詰めて、人に聴かせられるレベルにまでもっていくのは、ちょいと大変だけど、今のところはトランペットを人前で披露する予定もないし、これでいいと決めている。

 まあどんな曲でも吹くのだけど、どうせならトランペットらしい曲が吹きたいよね。先だっては「I Remenber Clifford」を吹いたけど、別の曲も吹きたいよなあ。アメージンググレースなんか定番だが、お葬式っぽくて僕は嫌。何がいいだろう。そんなことを考えながら、2度の動きを半音ずつシフトしていく練習をしていたら、その動きが「So What?」に聞こえた。
 名盤「Kind of Bliue」に収められたマイルス・デイヴィス作曲「So What?」は、とても印象的だ。一般にモードジャズと呼ばれ、ドリアンスケール2発(D-DorianとEb-Dorian)で演奏される。テーマは、それぞれのスケールのⅡとⅠを「どぅー、だっ」と演る。それに続いて、インプロ。
 まずはそのテーマを、トランペットで吹いてみる。おおっ、いいねいいね、マイルスになった気分だ。別の楽器で吹いたって「So What?」は「So What?」であるはずなのに、トランペットで吹くとやはり、これぞ「So What?」!って感じがする。
 テーマに続いて、ドリアでパラパラと吹いてみる。トランペットでは、まだたいしたことは出来ないので、とりあえずドリアンスケールから外れないことだけを考えて、適当に。うーん、いいねえ! 気分だけはマイルスになれた。

 話は逸れるが、ジャズの初学者だった頃(今も大して成長してないけど)、このモードジャズってやつが、全然わからなかった。コードに対してモードを設定する? それって、アベイラブルスケールと何が違うのよ? Dm7に対してD-Dorianって、普通じゃね? って思ってた。
 いやいや、普通でいいんですよ。ただね、そのDm7からコードが動いていくことで曲に和声的な推進力を与えるんではなくて、Dm7とEbm7それぞれが一発で鳴っているエリアを、ゆらーりゆらーりと、霧のたゆたう湖面を小舟がすべっていくような感じで音楽を創造するという、コーダルな音楽の在り方のカウンターメソッドが、モード手法なんだよね(多分、そうなんだと、信じている)。
 だからモードの曲は、あまり強い進行感を感じさせない方がいいんじゃないかな、と僕は思ってる。エンジン付きのモーターボートがぎゅんぎゅん進むじゃなくて、手漕ぎのボートが右へ左へとゆらゆらしながら進んでいく感じで演るのが、モードにはあってる。そんな感じ。

 それはともかく、この曲はドリアンスケールのトレーニングに最適だなあ。僕の場合、フルートやサックスだと何の苦もなく吹けるけど、同じ事をトランペットでやるのは難しい。音とピストンの関係が、まだ僕の指に馴染んでいないからだ。「今、僕が吹いているのは何の音で、それはスケールの何番目の音なのか」ということを意識しながら吹くのはいい練習になる。これ、指と音とが1対1で対応しない率の高い金管楽器では、けっこう難しい。慣れが必要だ。

 僕は基本フルート吹きで、譜面は実音読みがベーシックなのだけど、トランペットはin Bbの移動ド表記なのが、さらに僕を混乱させる。そして、なぜそうなるのか自分でもよく分からないが、自分の中で、トランペットの中音ミ(第3倍音、ピストンは1、2番)は「ミ(移動ド、in Bb)」のイメージなのに対し、高音ミ(第5倍音、解放)は「レ(実音)」のイメージを、勝手に脳みそが決めてしまうのだ。この、脳内イメージのズレが、僕のトランペット習熟を、さらにさらに、邪魔してくる。あーもう、イヤ。
 ちなみに、テナーサックス(in Bb)は、どういうわけか完全に移動ドのin Bbでイメージが固定されている。だから、実音(in C)で「レ」は、テナーサックスを吹く時にはどの音域でも完全に、「ミ」として僕は認識している。なぜトランペットでは同じようにならないんだ? 多分、トロンボーンを吹いていた経験が影響しているのだけど、それにしても、もうわけ分からん。

 ま、そこんところのイメージの修正も含めて、トレーニングだな。頑張りましょう。
 ちなみに、C管トランペットを買うつもりはありません。あしからず。