笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

YVS-120、アルト・ヴェノーヴァ買ったけど、管楽器初心者は気をつけた方がいいって話。

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 ヴェノーヴァ買ったよ。
 買ったんかい! 買わん言うとったのに、買ったんかい! と自分でも突っ込んでみたが、買ったよ。買った。

 最近ちょいちょい、アルトサックスを吹く機会があったのだけど、やっぱりね、テナーと色々違うのよ、アルトサックス。何が違うって、マウスピースを咥えた時に締める力具合と、息のスピードが違う。アルトサックスの方が、締めないといけないし、早いスピードの息を入れなければならない。
 だからやっぱり、練習が必要だ。アルトサックスの練習が、ね。指はテナーで練習すればいいかな。けど、アンブシュアのトレーニングだけはやっぱりアルトとテナーでは別物で、アルトのマウスピースを使わないとできない。
 アルトサックス、欲しいなあ。そうは思うけど、今年はエアロフォンを買う予定だし、その上アルトサックスまで買うのでは出費がかさみすぎるし、数万円で買える廉価なアルトもあるが、ちょっと信頼に欠けるし、やっぱり最低でもYAS-62となると、新品ではエアロフォン3本分以上の値段になるし・・・。そうやって悩んでいて、楽器は手に入らなくてもとにかくアンブシュアのトレーニングだけでもできればいい、と方法を考えた時に、YVS-120、アルトヴェノーヴァがいいのでは? と思いついた。
 ヴェノーヴァも廉価であるとは言い難い。しかし、それでもサックスよりは安い。そして、軽い。テナーとアルトを2本背負って練習に出かけるのはちょっと苦痛だけど、テナーにヴェノーヴァをプラスするだけなら、それほどでもない。そう考えると、俄然、買う気になった。なってしまった。

 Amazonで注文して最初に届いた1本では、開封時すでにネックが折れていたというトラブルに見舞われたが、交換処理で後日新しいものを届けてもらえた。ネックのジョイント・・・強くないんだね。マッピを抜き差しする時は、気をつけようっと。
 2本目はちゃんとしたものがきたのだけど、買ってみてやっぱり、これが18000円弱のクオリティか? というのはかなり疑問。しかしまあ、トヤマ楽器(アウロス)のトラヴェルソなんてもっと高いしね、まあ用途と需給バランスの問題ってことかな。仕方ない。

 音がでかいということは知っていたので、屋外に持ち出して吹いてみた。僕はアルトの経験があるので、まあ普通に音は出る。しかし、何かおかしい。うーん、何がおかしい? ええと、ええと、確かアルトヴェノーヴァってF管だよなあ? なんか低くない? そこで、チューナーをつないでピッチを確かめると、ドの音が、高めの「E」だと。うわ、半音低い。
 これはどうしたことだ? 問題のある個体をひいてしまったか? でも、ヴェノーヴァの製造工程を察するに、半音もピッチが下がるような事態はありえなさそうな気がする。これは多分、僕の問題だ。そういや、先だって中学校で久しぶりにアルトサックス吹いた時も、最初はピッチ低かったからね。
 ピッチの問題は一旦棚上げして、今度はスケールをパラパラ吹いてみる。これもまあ、問題なく吹ける。高音域は、サックスに比べて吹き心地が狭い感じがするな。第二オクターブの上を吹く音域では、サックスでパームキィの音域を吹いている吹奏感だ。で、次に半音階。半音階は、非常にクセがある。あれ、テナーヴェノーヴァはもうちょっと素直だったと思ったんだけど。特にBb、G#の音程が難しい。G#なんて、指を変えても音がほとんど変わらないぞ。
 アルトヴェノーヴァ、なかなかの曲者だな。

 で、買ってから今日までの間に、5、6回練習した。
 ピッチの問題は、アンブシュアの締め具合と構えた時の楽器の角度を調整することで、A=442Hzである程度きちんととれるようになってきた。ヴェノーヴァはリコーダーライクな構造の楽器なので、構え方がどうしてもリコーダーのように下がり気味になりがちだが、そうするとマウスピースの角度が適正にならない。楽器を少し高く上げて、サックスと同じ角度でマウスピースを咥えるようにする必要がある。きちんとした角度で保持すると、ピッチも音色も改善した。適度な抵抗感も出る。これ、気づくまでに少し時間がかかった。誰か教えてくれればよかったのに(調べてないだけ)。
 半音階の音程的なイントネーションも、構え方を改善することでかなりよくなったが、でもやっぱり、ひとクセある。in Fの長音階だけなら、素直に吹いてもある程度音程がとれるけど、半音階はやはり、口元での調整が必要だ。

 カジュアル管楽器という位置づけのヴェノーヴァだが、「これのどこがカジュアルなのか」という疑問は消えない。一応アルト経験者で、現役テナーサックス吹きの僕でも、結構苦戦したぞ。
 これ、絶対初心者の手には負えない気がする。ネットで時々、ヴェノーヴァはサックスの代わりになるか、とか、サックスの入り口になるか、みたいな話をしているのを見かけるけど、もしサックスをやるつもりがあるなら、絶対サックスから入った方がいい。サックスの方がはるかに簡単だ。そしてもちろん、ヴェノーヴァはサックスの代わりにはならない。僕はあくまでも、アルトサックスのアンブシュアのトレーニングのためにヴェノーヴァを導入したのであって、これでサックスと同じことをしようとは思わない。できないよ。無理ムリむり。

 そして、このヴェノーヴァが管楽器初心者にむかない、と僕が言い張る理由が、もうひとつある。
 季節的にまだ寒いっていうのもあるが、異常に結露しやすいな、ヴェノーヴァ。吹いて五分もすると、右手のトーンホールが詰まったり、左手サムホールから水が噴き出したりする。管楽器の結露がひきおこす問題を知っているから、こういう場合はスワブを通したりクリーニングペーパーをかけたり強い息を吹き込んで結露を吹き飛ばしたりすればいいって、僕は分かるけど、管楽器初心者は対応できないんじゃない? 

 あなたがすでに何かしらの管楽器をすでに経験しているなら、ひとりでこっそり始めてて、合奏の練習に「ヴェノーヴァ買ったんだよーぉ」なんてニヤニヤしながらもっていくのは、アリだと思う。でも、もしあなたが管楽器初心者、つまり、フルートだとかトランペットだとかサックスだとかいうものを全く触ったことがない人で、「ヴェノーヴァなら気軽に始められるらしいよ」ぐらいの気持ちでヴェノーヴァを手に取ろうとしているなら、ちょっと考えた方がいい。経験者の手ほどきなしに、ヴェノーヴァを始めるのは危険だ。かなり高い確率で挫折するんじゃないかと僕は危惧する。

 セルパンの如き蛇行管構造は画期的だし、カジュアル管楽器というコンセプトも面白い。けど、実用的な楽器としては、まだ十分じゃないところが色々あるなあ。演奏に使える、というレベルには達していない気がする。特に、結露の問題は大きいと思う。ウォーターキィをつけろとは言わないが、何らかの水抜きの機構を装備するなり、結露が問題にならない程度のボアを確保するなりしないと、特に長時間の演奏は厳しい。蛇行管ゆえの問題だね。
 まあ折角買ったので、しばらくは吹くつもり。水滴の問題も、暖かくなれば少しはマシになるかな。そう期待しよう。