笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

管楽器 vs 気象現象

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 一月に入って、冬らしい寒さが続いている。早朝、日没後などは、出かけるのがためらわれるほどだ。それでも、風と雲のない日中などは、体を動かしていれば苦にならない程度の日もある。なので、正月明け、あまり厳しくない程度の寒さの日がつづいたタイミングで、久しぶりにフルートを外に持ち出し、公園でケースを開いた。
 晴れた日の午後。日差しさえあれば、そう寒くはない。ベンチに腰掛けて軽く音だししてから、スケールでウォームアップする。うん、いい調子。手袋なしでいるのは厳しいかとも思ったけれど、指を回していればそうでもないな。十分、耐えられる。

 吹き始めた時は、ほとんど無風だった。しかし、スケールを終えて、最近ハマっているC.P.E.バッハをさらっていると、だんだん風が強くなってきた。
 寒い。日差しがあっても、風が吹くと寒いな。楽器が冷えて、ピッチが下がってくるのが分かる。
 そして、風がどんどん強くなってくる。ん? 低音が・・・低音が出ないぞ。いつもなら、この角度、このスピードで息を入れればしっかり鳴るはず、というところを狙っているのに、音が出ない。ああこれは、風のせいだ。ちくしょう。

 実は、管楽器は風に弱い。多少の風なら大きな問題にはならないが、強い風が吹くと演奏に支障が出始める。特にフルートは発音の特性上、低音はまったく音が出なくなってしまうことがある。
 フルートの発音は、要するにビール瓶なんかをボーッと鳴らすのと同じ原理で、唇をすぼめて細い息の束を作り、その息の束を唄口のエッジに吹き付けることで得られる。当然、唇と唄口の間には数ミリの空間があり、その空間を通り抜ける息の流れが阻害されると、音が出ない。スピードの速い息を使う高音域であれば、多少風が吹いても演奏ができるのだけど、スピードの遅い息を使う低音域では、強い風にさらされると息の束が乱れてしまうのだ。
 あー、これ無理だわ。やめた、やめた。
 C.P.E.バッハを一度ざっと流したところで、諦めた。この風では吹けない。

 管楽器は風に弱い。フルート以外の楽器でも、ベルに風が入ると吹きにくいことがある。以前、トロンボーンを強風の日に吹いたら、ベルから入った風に息がマウスピース側に押し戻されて、えらく演奏しにくかった。管楽器、特に金管楽器は、屋外で演奏される機会も多いので、風ぐらいで演奏に支障がでるなんてことは想像もしないという人も多いようだが、いやいや、中々大変なんですよ。スーザフォンなんて、風が吹いたらプレイヤーごと吹き飛ばされることもある。
 屋外での演奏は過酷だ。できれば屋内で演奏したい。エレキ系の楽器はまた話が別かもしれないが、できるだけいい条件で演奏したいのは同じだろう。

 でも、たまーに外で吹くと気持ちいいんだよね。今度、もうちょっと暖かくて、風のない日があったら、また外で吹こうっと。でも、今日の所は一時退散。オボエテロヨ、この風のヤロウ。今日の所は見逃してやる。