笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

大豊ラーメン


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 京都で入った天下一品は、両隣がラーメン屋だった。つまり、ラーメン屋が三軒並んでいることになる。そんなことが許されるのだろうか。多分、許されなかったのだろう、片方の店が営業している気配はない。でも、もう一方の店は開いていた。看板には「大豊ラーメン」とある。知らない店だが、窓から中をのぞき込むとそれなりに客が入っているので、僕も入ってみることにした。
 ランチセットを頼むと、濃い口の醤油ラーメンにライスと唐揚げを添えられて出された。最初にスープを二口、それから麺を一口。やったね、当たりくじをひいた。うまい。
 大豊ラーメンには二日続けて昼を食べに来た。二日目のセットはイカリングとゲソの唐揚げだった。いいねいいね、ゲソなんて久しぶりに食べた。ビールが欲しくなった。資格取得の講習に来ているのでなければ絶対に瓶ビール注文していた。もっとも、マンボウの最中だから断られたかもしれないけど。

 知らない土地で知らない店を選ぶのは、冒険だ。入ってみた結果、今回みたいに「大当たり!」と悦ぶこともあれば、「やられた!」と歯ぎしりすることもある。ハズレをひいても、それはそれで後で話のタネにできるから別に構わないのだけど、でもできれば当たりくじをひきたい。だから、どの店の暖簾をくぐるべきかは慎重に判断することにしている。
 まず、最低限の清潔感はほしい。僕の、飲食店における衛生度判断のボーダーラインはかなり低い方だと思うけど、それでもやっぱり、虫も嫌がるような店には僕だって入りたくない。一つの目安として、ダクトや天井の油汚れに、ホコリが固まって垂れ下がっている所はさすがにNGだ。次に、閑古鳥を飼っていないこと。昼飯時に客が一人もいないような店は、さすがに信用できない。最後に、「ここは入ってはいけない」というオーラを発していないこと。たまにあるんだ。それなりに小綺麗だし、客もいるのだけど、なぜか入る気になれない店が。そして、何らかの理由でやむなくその店で食事をすることになると、後で絶対に「しまった、やっぱりな・・・」とうなだれることになる。

 逆に、「ここは入らなければ!」という店もある。それは、店の前にたくさん車が停まっている店だ。ただし、その車はトラックやライトバンか、あるいはその店の近所の人が乗ってくるのであろう国産車でなければならない。
 若かった頃、三重をバイクで走っていて、海岸線の国道沿いにトラックがたくさん停まっている海鮮丼の店を見つけた。対面二車線の道の路肩にトラックが数珠つなぎになっているのだから邪魔で仕方がないのだけど、その光景を見たとき、この店は絶対に安くて旨いと僕は予感した。昭和の一膳飯屋みたいな風情の店だし、メニューもいたって地味なのだけど、そこで食べたマグロ刺身定食は本当に旨かった。しかも千円でおつりのくる廉価。今ではもう店の場所も名前も思い出せないけれど、まだご商売されているなら、もう一度行けば必ずココと分かる自信はある。路肩にトラックがずらっとならんでいる店を探せばいいのだから。
 人間、飯を食わずには生きていられない。どうせ食わなければいけないなら、まずいよりは旨い飯の方がいい。旨い飯をさぐりあてる勘やコツを知っているのは、人生を楽しむ上で割と大事な事だと、僕は思う。