笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

梅雨の晴れ間


f:id:sekimogura:20210702221754j:image

 

 自宅で静養を続けているが、閉じこもってばかりいては体がなまる。体がなまると、元の生活に復帰するのに差し支えるような気がして、多少しんどくても、少しは出歩くように心がけている。一時間程度の散歩を、一日に二回と決めている。あまり歩きすぎると、その後がしんどい。しかし、自宅の近所ばかりを歩いているのは飽きた。街を出たくなった。
 須磨に行くことにした。
 転職してから色々あって、ものすごく久しぶりにくるような気がするけれど、三月の終わりに一度来ているから、以前とあまり変わらない間隔かもしれない。重い体をJRの普通電車に引きずり込んだ。車窓の向こうを流れていく景色が新鮮だった。

 駅のセブンで、ノンアルコールビールをふたつ買う。浜辺に行って、タブを引く。ビールの味が懐かしい。酒は三月からずっと飲んでいない。飲んだっていいのだけど、薬との相性がよくないそうなので、やめたままにしている。もっとも、その薬を今は中断しているから、飲んだって別に構わない。しかし、飲み始めると飲み続けたくなるような気がして、遠ざけたままにしているのだ。
 三月にここへ来たときには、まさか自分の体にこんな異変がおこるなんて、考えもしなかった。潮の香りを嗅ぎながら、これからどうなるのか、どうするべきなのかと、考えを巡らせた。とにかくこの言うことをきかない体を何とかしなければならない。このままでは仕事もできないし、生活だって不便だ。でも、いい案は浮かんでこない。
 ぼんやりと、海と砂浜を眺める。今年は海水浴場を開かないらしいのに、監視員の詰め所のプレハブができている。バリアも張ってある。水着姿のヨーロッパ系の女性が数人、波間に浮かんでいる。ああいう人がいるから、監視員やバリアが必要なんだろう。突堤から釣り糸を垂れている人がいる。ゴミ拾いをしているグループがある。このゴミ拾いのグループは、よく見かける。定期的に活動しているのかもしれない。
 いつもなら、波打ち際を歩くのだけど、歩かずに帰った。帰ったら動けないほど疲れていた。やっぱり、無理はいけないらしい。でも気分は少し晴れた。天気はしばらく雨が続くそうだ。晴れたら、また来よう。