笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

PCR検査


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 PCR検査を受けた。
 水曜の朝、起きたらめちゃくちゃ体が重かった。確かに疲れてはいた。新しい仕事、新しい職場、新年度の激務。でも、出勤時間に間に合う時間に目は覚めたし、家を出ることもできた。つまり、動けないわけじゃなかった。でも、ちょっと待てよと、僕の中で黄色信号が点った。職場に向かう地下鉄の中だった。
 もしコロナだったらどうしよう?
 携帯端末でコロナの初期症状を調べてみる。味覚障害、嗅覚障害、発熱・・・そして倦怠感。一応、玄関を出る前に検温はした。少し高めではあったが、熱はなかった。
 どうするべきか迷いながらとりあえず職場まで行き、デスクから二メートルぐらい離れた地点で上司の判断を仰いだ。上司は「帰って」と短く言った。
 職場から駅まで戻りながら、保健所に電話した。状況を説明すると、「身近に感染者はいないか」などといくつか質問を受ける。僕の応えを聞いて保健所の職員は電話越しに「濃厚接触者にはあたらないようなので、そのまま一度帰って、それから近所の医療機関を受診してください」と指示した。
 言われたとおり一度帰宅し、近所のクリニックが開院するのを待って電話した。来院の時間を指定され、クリニックの裏口から診察室に入った。テレビで見たような医療用の防護服に身を包んだ医師がいて、インフルエンザの検査と同じように僕の鼻に棒を突っ込み検体採取を行った。
 午後には結果が出るから必ず電話に出ろと念を押され、帰宅。三時頃、クリニックから電話があって、陰性(-)と告げられた。
 ほっとした。クリニックからの電話口で思わず「よかったぁー」と声をもらした。それぐらいほっとしたし、それまでは「もしコロナだったらどうしよう」と不安で仕方がなかった。
 すぐに職場に連絡を入れ、翌日にはいつも通り出勤した。PCR検査を受けた日は、通院以外は寝て過ごしたので、疲れもすっかりぬけ、やたらに体調はよかった。


 一年以上の間、こんなにもコロナコロナと世間が騒いでいるのに、こんなに身近にコロナの存在を感じたのは、これが初めてだった。
 この検査をうけた数日後に、兵庫県には緊急事態宣言が発令された。三度目の緊急事態宣言。三度目ともなれば、「あーまたか」感がある。しかし連日、感染者数をニュースで見る度に、僕と同じように不安を感じながら検査を受けた人がいるのだと思うと、ちょっと心持ちが違う。あの日の電話でもし「陽性(+)です」と言われたら、僕はどんな気持ちになっただろう。いや、気持ちだけの問題ではない。万が一陽性だったら、生活は一変する。転職したばかりなのに休職、そして隔離生活。ひょっとしたらそうだったかもしれないという最悪のケースを考えると、三度目とはいえ僕にとっての緊急事態宣言の緊張度は高い。連休は、人の少ない場所を散歩する以外にはなるべく外出しないようにして過ごした。

 今回も、緊急事態宣言の発出期間は延長されそうな見込みだ。ご商売に障る方々には申し訳ないが、延長でもロックダウンでもすればいいと思う。命あっての物種である。未曾有の事態なのだから柔軟に振る舞えばいい。災禍が過ぎ去ったら、また以前のようにやればいい。ルールや法律や議論も大事だけど、とにかく、生きてないことには話にもならないんだから。