笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

黄砂

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 今年の黄砂はひどい。
 新緑も鮮やかな春の布引山が、吹雪にでも襲われているかのように白い。晴れていれば日中はくっきり見えるビルが、くすんだ空色に塗りつぶされている。喘息もちの長男が発作の予兆のような咳き込み方をしている。僕の鼻も調子が悪い。ここのところ、アレルギー薬を飲み続けているのに鼻水がとまらない。全部、黄砂のせいだ。

 毎年春になると、黄砂は必ずやってくるものだ。関西人の常識である。子どもだった頃、それは日本全国で通用する常識だと思っていた。関東圏では、そうではないということを横浜に住んでいた頃に知って驚いた。
 そういえば「今年の黄砂は・・・」みたいな話を誰もしないなあと気づいたのは、いったいいつだったろう。横浜に住み始めた最初の数年は、そんなこと気にもしなかったが、あるとき、はっと気づいた。関東人は黄砂を話題にしない。その代わり、光化学スモッグの話をする。光化学スモッグの季節は夏だ。関西も、大阪あたりは光化学スモッグが発生するらしいが、僕の住んでいる神戸は比較的風通しがよいせいか、あまりスモッグが話題にならない。だから、横浜の人が酷暑の夏に、「今日の午後は、光化学スモッグ発生の予報が出ているから、あまり外出しない方がいい」みたいな事を離しているのを聞いて、黄砂のことを思い出したのかもしれない。

 神戸の黄砂と、横浜のスモッグ。
 どちらも嫌なものだが、僕は黄砂でもスモッグでも、息苦しさとか目の痛みのような身体症状が出たことがないので、あまり違いを感じない。でも、どちらかがより嫌いかと問われたら、僕は黄砂をあげる。なぜなら、黄砂は降り積もって街中を真っ黄色にしてしまうからだ。
 とりわけ困るのが、車。屋外にしばらく駐めた後にボディを指で撫でると、指先が白っぽく汚れる。黒や紺色の塗装なんかだと、黄砂が降り積もったことがはっきり分かるくらい色がくすむ。車についた黄砂を放っておくと、金属が腐蝕する原因になるらしいので、洗車しなければならない。面倒だ。
 しかし、そんな黄砂でも、全然やってこないとなると植生に影響が出るらしく、環境維持のためには必要だと聞いたことがある。僕たち人間には厄介者の黄砂だが、そんな黄砂を待ち望んでいる無情の生物がいるというのは面白い。では、黄砂のあまりこない関東の植物はどうなのだろう。僕は植物にあまり関心がないので詳しいことは知らない。松が生えていて、あとは銀杏とか紅葉とか・・・そんなに違わないような気がするのだけど。

 なにはともあれ、僕にとって黄砂が厄介者であることにかわりはない。黄砂の季節なんてさっさと過ぎ去って、透明な青空が戻ってきて欲しいものだ。