笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

雪と布引の滝

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 大寒波のやってきた日、神戸には雪が降った。
 午前中はそうでもなかったのに午後になって急激に気温が下がり、日が暮れる頃には砂のような氷の粒が街を舞った。その粒がたちまちつもり、街を白く塗り変えていく。神戸だって年に一度か二度は雪ぐらい降るものだが、今回は子どもが小さな雪だるまを作れるくらいには積もり、これは珍しいことだと言ってもいいかもしれなかった。

 雪が降った日の朝に、滝を見るために山を散歩したのだけど、その翌朝、雪の積もった山はどんなだろうと気になって、また山に出かけた。家の周囲の道路は真っ白。山道もきっと雪に埋もれているだろうと思って、いつもの底のすり減ったメレルは履かず、ビブラムのラグソールに張り替えたレッドウィングに足を入れた。

 いつものように、新神戸駅の下をくぐる通路を通って、山へ入っていく。駅の裏手にまわるなり坂があるのだけど、ここがすでにツルツルのアイスバーン。滑る、滑る! これはヤバいな。完全に凍っている部分を踏んだら、立った姿勢のまま1m滑り落ちた。しかし、ここで引き返しては男がすたる。気を取り直して、前進。ゆっくり、小さな歩幅で刻みながら進んで、何とか橋を越えた。
 すると目に飛び込んできたのは、真っ白な布引山。度々散歩に来るお馴染みの場所なのに、こんな布引山を見るのは、僕は初めてだ。木も岩も参道も、全部雪に覆われている。何だか、雪国の山みたいだ。本当の雪国だと、もっと雪深くて、こんなもんじゃないんだろうけど、雪なんて滅多に積もらない神戸では、珍しい光景である。
 こんな日に山に来るのは僕ぐらいじゃないかと思いながらやってきたけど、ちょいちょい人とすれ違う。物好きってのは、いるんだねえ。下っていく人は転倒を警戒して、後ろ向きに進んでいるのが面白い。すれ違う時は物好き同士、挨拶をかわす。そうそう、山はこうでなきゃ。上っていく僕は、なるべくグリップのよさそうなところを踏みながら石段をあがった。先だって、底の削れたメレルでは滑って仕方のなかった石段だ。その石段に、ビブラムのラグソールはしっかりと食らいつく。さすがだな。それでも、凍った場所だけは滑るので、ちゃんとグリップしていることを確かめながらゆっくり上った。
 いつもなら15分くらいで滝まで来るところを、30分以上かけてやっと到着。おおお、すごい、真っ白だ。さすがに滝が凍るほどではないが、雪と氷で、周囲の岩は白く凍えている。美しい。
 そこから、おんたき茶屋を通って徳光院へ下った。積雪と凍結にスリップしないように気をつけながら、いつもなら一時間弱のコース、二時間ほどで歩いた。

 雪国の人の思いはまた違うのかもしれないけど、本州太平洋側に住む僕たちにとっては、雪や銀世界は憧れである。滅多に見られない表情をした布引山、綺麗だった。


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