厄年はとっくに過ぎたが、仕事で須磨の裏手を通る機会があり、少し時間もあったので、厄除けで有名な多井畑八幡神社に寄った。
本当は本厄の歳の前後に行くべきだったのだろう。でもまあ、後悔しなければならないほどの厄に見舞われることもなく厄年を終えたし、祈願なしのお礼参りをさせてもらおうと考えたのだ。本式ではないけど、おそばを通らせていただくご挨拶だということにすればバチは当たるまい。
風の強い曇天の日。雨も少しぱらついている。そんな天気だし、緊急事態宣言中でもあったので、参拝者は少なかった。それでも、全然いないということはなく、ご近所の氏子さんらしい方々が手を合わせていらした。誰も彼もが、ご本殿に手を合わせると、さっと引き返していく。僕は本殿で手を合わせた後、ぐるりと裏手に回る参道も歩いた。風がごうごうと鳴る山の境内。神様の気配がした。
今はニュータウンにぐるりと囲まれたこのあたりも、昔は山深かったはずだ。確か塩屋川沿いの村の、一番山奥の集落があったあたりではなかったか。そんなことを考えながら歩いていると、雨がぱらついてきたので、僕もあまり長居はせずに参道を引き返し、車の運転席に逃げ込んだ。
最後の厄年ももう済んでいるので、僕が自分のためにここを訪れることは、もうないだろう。あるとすれば、子どもの厄年だろうか。不信心者の僕はいくつの歳が厄年なのか、実はよく知らないけど、でもたぶん当分先のことだ。でも、そのときはちゃんと厄払いしてもらおうかな。