笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

居酒屋


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両人対酌山花開
一杯一杯復一杯
我酔欲眠卿且去
明朝有意抱琴来

 

「山中与幽人対酌」 李白

 

 大きい仕事が一つ片付いたので、仕事仲間と居酒屋で飲んだ。
 最後に表で飲んだのは、コロナの騒ぎがおこる前だから、もう一年ほども前になる。緊急事態宣言もとっくに解除されているのに、やっぱり何だか人の集まるところに行くのがためらわれて、ずっと出かけていなかった。GoToだとか言われても、それでコロナの毒牙にかかったのではどうにもならないと不安だった。しかし、第二次流行がピークを過ぎてからは感染状況も横ばいだし、「もう行ってもいいよね」と僕たちはうなづき合って、三宮の裏路地にある居酒屋を予約した。
 金曜日の夜。約束の時刻よりも少しはやく三宮に着いたので、サンキタ通りあたりを散歩してみた。人通りは、ある。コロナ以前の金曜の夜に比べれば寂しいものだが、緊急事態宣言のさなかに様子を見に来た時よりはずっとましだ。雰囲気としては、以前の月曜の夜ぐらいの人出だろうか。あたりをぐるりと歩いてから、集合場所の居酒屋の暖簾をくぐる。すると、耳に懐かしい居酒屋の騒々しさが僕を出迎えた。店は満席だった。
 ジョッキで飲む生ビールはうまかった。つきだし、刺し盛り、煮付け、〆の握り飯。うん、うまいうまい。あとは愚痴を肴に、店を追い出されるまで日本酒をちびちびと。やはり金曜の夜は、こうでなくては。

 平々凡々の五濁悪世だって、失われてみればその有り難みも身に染みるというもの。心身に穢れがあってこそ、それを洗う酒の心地よさよ。コロナの浄土、クソ食らえ。酒がうまくなくては、生きる張り合いもないぞ。