笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

GATORのフルートケース

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 近頃、30年前のヤマハを持ち出す機会が増えた。楽器はほぼ問題なく使えている。Bbのキィがべたつきやすいとか、右手の調整が全体的に甘くなってるとか、そういうのがない訳じゃないけど、練習時間をかせぐために少し吹くくらいなら気にするほどでもない。
 しかし、「これはちょっとなあ・・・」と頭をかかえているのが、ケースの劣化だ。
 横浜で小学生のブラスバンドに関わっていた時に、フレーズの組み立て方を教えたり音を確かめたりするのに、手軽に持ち運べる楽器としてこのヤマハのフルートを使っていて、毎度持ち帰るのが面倒だから楽器庫に置いてもらっていた。その楽器庫というのが、梅雨時期の湿気がひどくて、その湿気をケースが吸ってしまい、二年くらい楽器を置いている間に、ケースの表面にヒビがはいった。
 こんな割れ方するんだ・・・という、意外な割れ方。そのバンドに出入りしていた楽器店の営業さんもびっくりしていた。ワニ皮のように割れて、表面がポロポロはがれてくる。割れただけなら別に気にしないのだけど、はがれて破片が飛び散るのは、あちこち汚れるので困る。

 実は、僕の所有しているフルートのケースは他のものも痛み始めていて、ヘインズのケースからは内部が劣化して黒い粉みたいなものがベロアの隙間から出てくるし、ピッコロのは表面に張った合皮が加水分解してケースカバーの内側のボアに張り付く。
 そろそろ買い換えか修理が必要だとは思っていた。しかし、フルートのケース(ケースカバーではなく)は案外高価で、買った時についてくるのとおなじようなものをメーカー純正品で買うと1~3万円、一番安いパール製のものでもH管で8800円(2022年現在)する。だから、ケースが楽器を保護する大切なものだと知ってはいても、中々買い換えに踏み切る勇気がもてなかった。
 でも、どのケースもいい加減、限界が来ているように感じたので、さすがの僕も重い腰をあげてケースのリニューアルを行うことにした。

 ケースを買うにあたって気にすることは、楽器がちゃんと入るかどうかってこと。
 僕は、セルマー製のサックスをbamのケースに入れて持ち運んでいる。楽器屋さんに持っていって、ちゃんと収まるかどうか、しっかり固定されるかどうかを確かめて購入した。
 フルートも同じように、実際に楽器がきちんと収納できるかどうか確かめて購入できればいいのだけど、実はそれができない。というのも、フルートのケース本体というのは、滅多に単品で売れるものではないらしく、どの楽器屋さんに行っても店頭在庫がないのだ。で、リスクと費用と手間を考慮して、まずはネットでひとつ買ってみることにした。

 「フルート ケース」で検索すると、聞いたこともないメーカーのものから有名メーカーのものまで色々ヒットするが、そもそもケース本体ではなくケースカバーがリストに上がってくる。その中から、まずケースカバーを慎重に除外し、ケース本体に絞ってリストアップしなおし、価格と仕様を比べる。安くても、名前も聞いたことのないようなメーカーのものは、強度やフィットに不安があるので遠慮。高いお金を払っていいのなら純正品でいいのだから、そこからさらに、純正品よりはお手頃なものに絞り込んでいく。
 皮の張り直しなど、修理は案外コストがかかる。まあ当たり前か、ケースを一度ばらして修理し、また組み上げるのだから、手間はかかるもんなあ。修理するっていう方法は、今回はなしで。

 そして、信用ができそうでなおかつそう高価でないケースとして、僕はまず、ゲーターのケースを選んだ。
 Gator、ゲーター。ギターのケースを時々見かけるが、管楽器奏者には馴染みがない。メーカーHPを見ると、一応フルートのケースををちゃんと作っているようだ。楽器や音響機材だけでなく、カメラ用のケースも売っているらしい。ネット上では7~8000円の価格帯が中心だが、それを6000円(送料・税込)で譲ってくれるお店をみつけた。おおお、お買い得。さっそく注文してみる。
 扱っているのは滋賀の楽器店のようだ。注文してから三日ほどで届いた。素早い。開封すると、商品と納品書と、簡単なメッセージカードがついている。こういうの、好きだ。別にいらん、っていう人もいるだろうけど、無味乾燥になりがちなネットでのやりとりだからこそ、画面の向こうにいるのが人間なんだと感じられる配慮があるのを、僕は好ましいと思う。

 ゲーターのフルートケースのファーストインプレッションとしては、「でかい」。
 これ、でかいな。通常のケースを大きめのケースカバーでくるんだサイズよりもでかい。多分、ケースカバーには入れない前提だ。自作するならともかく、市販のものではこれが入るケースカバーはないだろう。
 しかし、アルミのフレームと樹脂のケースはいかにも頑丈そうだ。ケースを保護する意味でのケースカバーは、まあ必要ないだろう。ちゃんと持ち手もついているしね。開閉は金属の蝶番で、口はバックル留め。しっかり閉まるけど、きつくもない。加工精度は悪くないように思う。開け閉めすると、あちこちがガチャガチャいうので、静音性はない。例えば、練習に遅刻していって、オケが緩徐楽章を演奏中にこのケースを開けて準備するのは、ためらわれる気がする。
 収納は、C/H共用で、C管のヤマハを収納すると足部管の溝があまる。気になるなら詰め物をすればよい。掃除棒の収納溝がふたつあって(一つでよくない?)、YFL-311Ⅱに付属の金属製掃除棒は問題なく収まった。木製の太いものだと、ちょっとタイト。
 問題のフィット感だが、ケースを閉じて傾けると、中で楽器が動くコトリという音がする。うーん、しかし、そんなもんだよな・・・。残念だが、汎用性を重視したこの手のケースのフィット感は高くない。もっとも、それは承知でこちらも買っている。
 本来は推奨されるべきではないのかもしれないが、小さめのクロスを楽器にかぶせてから収納すると、コトリ音はなくなった。よし、これでいっか。
 内装は、昭和に製造されたヤマハのケースによくある毛足の長いやつ。あはは、これ、中学校の吹奏楽部でよく見るよ。二桁品番の金管楽器のケースに採用されてる内装だ。グリスやオイルがつくと、黒く汚れる、あれ。擦り切れたところから発泡スチロールの成型材が出てくる、あれ。これ、なんていう生地なんだろう。よく知らないけど、標準的な保護性能と耐久性なんじゃないかな。多分、普通に使えます。

 次に、H管のヘインズを入れてみる。入れて・・・あれ、入らない。ヤマハに比べると、胴部管は明らかにタイトで、足部管にいたっては収まらない。そういえば、僕のヘインズは古くて、現代の442Hzの楽器に比べるとピッチが低いのだ。ということはその分、管長が長い。普段吹いていて、そこまで楽器が長いイメージはなかったが、こうやってケースに収めようとしてみると違いがはっきりする。面白い。
 ゴウは、修理したい箇所があって、今調整に出している。まあ、ゴウなら入るんじゃないかな。入れてみないと分からないけどね。もっとも、ゴウのケースには問題がないので、ケースを新調する必要はないが。

 というわけでまずは、ヤマハを移し替えて外に持ち出してみた。鞄に入れてみると、苦になるほどじゃないにしても、やはり少し重い。そして嵩張る。ケースカバーが使えないので、ポケットがないのも、ちょっと不便に感じる。しかし、ケースとしては何の問題もない。
 僕はケースを鞄に入れて持ち運ぶタイプの人なので不安はないけど、ケースを手持ちするタイプの人は、「もし、何かの拍子にバックルがはずれたら・・・」ってのが気になるかもしれない。そういう人は、100均なんかで売っているゴムバンドをかけておくといいだろう。マジックテープつきのバンドなら、把手の下を通して巻くことができる。
 北公園でカチャガチャと楽器を組み立て、練習して、ガチャガチャと片付ける。うん、いい感じ。お手頃価格だし、頑丈そうなので、気兼ねなく使えるのが最高。むしろ、ちょっとキズをつけて使うぐらいの方が、使い込んでる感がでてカッコイイんじゃないかな。ステッカーチューンも似合う気がする。

 よし、これはこれでいい。
 でも、もう一個、ヘインズ用にこれを買うかって考えると、うーん、買わないな。オケの練習に持っていって、ガチャガチャやって人に迷惑かけたくないし、フルートがいくら軽量な楽器とはいえ、譜面台やピッコロも同時に持ち運ぶと結構な重量になるので、軽いケースであるにこしたことはない。そして、僕はケースカバーに予備のガーゼやクリペを入れておきたいので、ポケットがないことやケースカバーが使えないのは困る。中学校に持っていったり屋外で練習したりするだけならこれでいいけど、オケに持っていく楽器を運ぶケースは、違うのがいいな。

 さて・・・フルート用にもうひとつ、ピッコロ用にもうひとつ、ケースを用意しなくちゃ。あまりお金はかけられません。どうしようか。


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