笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

KOH-I-NOOR 5306/5.6mmの芯ホルダーを買ってしまった

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 コヒノール、それはチェコの文具メーカーだ。
 そんな風に書くと、あたかも僕がコヒノールの専門家みたいに見えるけど、僕もコヒノール(コイノア)という会社のことを知ったのはつい最近なんです。はったりかまして、ごめんなさい。

 コクヨ製の「鉛筆シャープ」というシャープペンシルを長く使っているのだけど、表面が加水分解してべたついてきたので買い換えをすることにした。で、太芯のシャープペンシルのことを調べていると、「太芯、シャーペン、短め、クリップつき」みたいな条件で検索した時に、このコヒノールという会社の製品がヒットした。
 スマホの画面で見るコヒノールの芯ホルダー、無骨な実用品、といういでたちが、とてもクールだ。カッコいい。太い軸は握りやすそうだし、クリップ付きなのもいい。短いのは取り回しやすく、携帯性に優れる。いいじゃん。これ、欲しいな。
 でも、いーらない。
 僕は自宅でスマホの画面を眺めながら、そう結論づけた。太芯のシャープペンシルが欲しいのは確かなのだけど、僕が欲しいのは1.3mmか2mmぐらいのシャープペンシルで、「これいいな」と思ったコヒノールの芯ホルダーは、5.6mm。さすがに太すぎる。この芯で細い線で書き込みをするためには、この太い芯を頻繁に削らなければならないだろう。
 そもそも、僕がなぜ鉛筆ではなくてシャープペンシルを使おうとしているのかというと、「削らずに細い線を書き続けることができる」というメリットがシャープペンシルにはあるからだ。なので、細い線を書くために削らねばならない、という条件がつくことによって、そのアイテムは僕の選択肢から外れる運命にある。ごめん。
 コヒノールには、2mmの芯ホルダーも存在する。でも、2mmの方はね、5.6mmみたいにカッコよくはなかった。そして、全長は長く、クリップもない。僕はクリップを必須条件にしているわけじゃないのだけど、もしクリップ付きが選べるならそうしたいのだ。2mmの芯ホルダーが、5.6mmみたいなデザインだといいのになあ。なんで統一しないんだろう。
 仕様が僕の条件を満たさない以上は購入対象にならないが、一応値段も調べてみた。結構、高い。そして、取り扱っているお店によってすいぶん価格が違う。なんで? 輸入元とおぼしき会社のサイトを確かめてみると、定価らしき価格が表示されるんだけどな。なんだろう、独自にメーカーや現地の卸から輸入しているんだろうか。そして、そういうお店でネット注文すると大抵、送料がかかる。で、品物の代金と送料を合わせると、ちょっとしたお値段になってしまう。
 うーん、カッコいいけど…やっぱり、いーらない。

 僕はもう一度、そう結論づけた。
 なのに今、僕の手元には、コヒノールの芯ホルダーがある。5.6mmの、5306というモデルだ。
 前の記事で、元町にある590 & Coというお店に行ったことを書いた。品揃え豊富な鉛筆とシャープペンシルの専門店なのだけど、僕はこのお店で、このコヒノールの芯ホルダーと出会ってしまったのだった。そして、手に入れるつもりは全然なかったはずなのに、気がつけばコヒノールとともに店の玄関を出ていた(万引きしたわけではありません)。

 あのね、言い訳させて。コヒノール、カッコよかったのですよ。
 お店で実際に手に取ってみると、その手に馴染む感覚が実に素晴らしかった。正直、軸の合わせ目がくっきり残っていたりして、加工精度がめちゃくちゃ高いわけではないし、芯を補充する部分のキャップを回す手触りもあまりよくないのだけど、紙の上で構えた時の「据わり」みたいなものが、素晴らしかった。そして、短めの軸が手のひらのなかに収まっているその佇まいが、とてもカッコよかった。
 あと、お値段も適正だった。ホルベインを扱っている会社がこのコヒノールも輸入していると思うのだけど、「590 & Co」ではそのページで見た価格と同じ値段+taxで販売していた。なので、お値段もお手頃。カヴェコみたいに高価だと、気軽に衝動買いできないが、コヒノールは定価なら「まあいっか」と財布の紐の結び目をといてもいいぐらいの値札がついている。

 ははっ、でもそれって、むしろトラップ? あーあ、買っちゃった。
 まいっか、たまには。

 コヒノールの5.6mm、どんな線が引けるかというと、まあ普通に、鉛筆の線が引ける。芯先がとがっているうちは細い線、丸くなるに従って太く、やわらかい線。デフォルトで入っている芯の硬さが何かは分からないけど、普通の鉛筆やシャーペンでおなじみの2BやHBよりは柔らかい感じがする。多分4B、6Bあたりだろう。柔らかい芯はタッチの違いが表現しやすい。高校生の時にデッサンで使った木炭を思い出した。絵を描くのにはちょうどいいかもしれない。
 そうそう、問題はこのコヒノールを何に使うかなんだ。作文の下書きとかアイデア練りを紙上でする時に使えるだろうか。僕はその作業を普段、中字の万年筆でしている。コヒノールの。筆先が丸くなってきた頃の字幅は、中字の万年筆と同じくらいかもしれない。普通の鉛筆とちがって重量があるので、ペンの重さを紙にのせるようにして書くと、弱い筆圧でも見やすい線が引ける。
 しかし、書き味は本当に面白いな。なんだこの、今まで感じたことのない筆記感。ペンとしては重量級の部類に入るだろう、ずっしりと重い。自宅でしばらく使ってみると、ペンのおしりの芯削りを外した状態が、すごくバランスがいいことに気づいた。それだと重さも、ほどほどになる。サインペン感覚でさらさら書けるぞ。あ、そっか、これは鉛筆のサインペンなのか。なるほどなるほど、じゃあやっぱり、ちょっとしたスケッチをしたり、ブレインストーミングをしたりするのに使うのがいいだろうな。うん、決まり。

 万年筆と違ってインク切れやインク漏れを心配しなくていいから、鞄に入れっぱなしにしてみよう。何せ、この手の筆記具を手にするのが初めてなので、使っているうちにまた使い方は変わるかもしれないけど、それもまたよし。使い方が決まれば、あとは僕の問題。さて、このペンから何が出てくるかな?