笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

春日野道駅


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 ・・・と、アンナに不安と、欺瞞と、悲哀と、邪悪に満ちた書物を読ませていた一本のろうそくの光が、いつもにもましてぱっと明るく燃えあがって、今まで闇につつまれていたいっさいのものを照らしだしたかと思うと、たちまち、ぱちぱちと音をたてて暗くなり、やがて、永久に消えてしまった。
 
 
 昔、「特ホウ王国」というテレビ番組があって、阪神春日野道駅は「日本一危険な駅」として紹介された。
 なぜ危険かというと、とにかくホームが細いのだ。場所によっては、大人が両腕を広げた幅よりも狭い。柱のあるところなど、体を斜めにしなければ線路側に肩がはみ出しそうになるほど。センターアイランド式のホームで、両側を電車が通過する時など、本当に怖かった記憶がある。不思議と事故はないという話だったけど、真偽のほどは知らない。

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 今はもう、駅ホームは上下に分けられて、十分な幅もある。特急が通過しても、特別に怖い思いはしない。昔つかわれていた「危険な」ホームは、もう使われていないけど、まだ線路と線路の間に残っている。若い人は、あの作業通路みたいな構造物が以前は客の立つホームだったと言われても、信じないかもしれない。ついでに言えば、昔はなかったエレベーターやエスカレーターも今は設置されている。現代的な都市の駅舎にアップデートされたのだ。

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 春日野道駅はもうひとつある。阪神春日野道から北へのびる春日野道商店街をぬけたところにある、阪急春日野道駅だ。

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 阪神線が地下駅であるのに対して、阪急線は高架駅である。そして、阪急の方はいまだにセンターアイランド式の細長いホームだ。こちらは高架駅であるために、改築ができない。阪神の旧ホームよりは幅広だが、それでも柱のあるあたりは通行に気を遣う。おまけに、駅が線路のカーブの途中に設置されているために電車が傾いて通過するので、大阪方面の線路を特急が通過する時など自分に向かって電車が走り込んでくるようで、なかなかスリリングである。
 高架駅だから、阪神がしたような駅構造の変更は難しいだろう。そして、ホーム幅が少ないために、この駅にはエレベーターの設置が難しいようである。エスカレーターさえない。「つけてほしいな」という意見はよく聞かれるようだが、駅の事情もなんとなくわかる。昔のままの姿を留めていることがなんでもいいかと言うとそうでもない、人によっては不便に感じるであろうことは確かだ。

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 駅の近所に住む老婦人が、こんなことを仰っていた。
「今は駅の東側にしか改札がないけど、昔は西側にも改札があったんだよ。なんでなくしたんだろう。無人でいいから西に改札つけて、エレベーター作ってくれればいいのにね」
 阪急さん、この提案どうだろうか。やればきっと喜ばれると思うのだけど。