笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

コロナウィルス③


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I saw the best minds of my generation destroyed by madness,
 starving hysterical naked,
dragging themselves through the negro streets at dawn looking for an angry fix,
angelheaded hipstars burning for the ancient heavenly connection
 to the starry dynamo in the machinery of night,  ...
 
「HOWL」 Allen Ginsberg Martino Publishing
 
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僕は見た 狂気によって破壊された僕の世代の最良の精神たちを 飢え 苛ら立ち 裸で 夜明けの黒人街を腹立たしい一服の薬(ヤク)を求めて のろのろと歩いてゆくのを
夜の機械の 星々のダイナモとの 古代からの神聖な関係を憧れてしきりに求めている天使の頭をしたヒップスターたち ・・・
 
「吠える」 ギンズバーグ詩集(思潮社)より 諏訪優(訳)

 

 兵庫に緊急事態宣言が出て数日経ったある日、用事で出かけるついでに少し寄り道して、土曜の朝の三宮を歩いた。

 いつも通りであれば、土曜の朝の繁華街は、見られたものではない。方々にゴミが散らかり、反吐がまき散らされ、それをカラスが満足そうにつついている。ホステスがハイヒールを恨みながら歩き、客引きが昨夜の売り上げを夢見ている。しかし、今朝のサンキタはどうだ。ゴミがない。巻き上げられたままのネットを横目に、清掃車がステーションを素通りして走り抜けていく。朝食にありつけないカラスが途方に暮れたように鳴き交わしている。
 街の根が枯れた。僕はそう感じた。
 僕は、北海道の奥尻島に行ったことがある。十年以上前の話であるが、その時、島の中学校で大学時代の友人が音楽教師をしていて、遊びに行ったのだった。彼が指導しているブラスバンド部の練習に立ち会わせてもらったが、部員はほんの数人だった。奥尻島とは、そういう場所だ。
 島に行って驚いたことがある。それは、パチンコ店が二軒もあるということだ。コンビニすらもないような島にパチンコ店は二軒も必要なのだろうか。いや、きっと必要なのである。人間の生活とは、そういうものなのだ。ギャンブル、酒、性的なサービス・・・一見、全く不必要なものこそ、欠くべからざるものだと、僕は奥尻で強く感じた。
 都市を一本の木に例えるならば、その根の先、土に深く食い込んだ根毛こそ、繁華街だ。そこが乾ききってしまえば、木は枯れる。今、神戸は枯死の危機にさらされている。僕は背中が寒くなった。初めて本気で、コロナウィルスを怖いと思った。

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 世界中でコロナウィルスによる肺炎が蔓延している疫学的な事態がスペイン風邪に例えられる一方で、経済的な打撃についてはリーマンショックがよく引き合いに出される。僕はいわゆる就職氷河期世代で、バブル崩壊とその後のリーマンショックのあおりももろに受けた年代だ。僕が学生の頃、就職は本当に難しかった。僕自身、不採用通知を何十通も受け取ったし、大学の友人は就職浪人するためにあえて卒論を出さなかったりもした。今回のコロナパニックの影響は、あのリーマショックを超えるだろうという見通しが早くもささやかれている。もう一度あの辛い時代が来るのかと思うと、本当にやりきれない。
 どうか、立て直しのきかないほどのダメージを受ける前に、コロナ騒ぎが収まってほしいものだ。

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