笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

東急ハンズ


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 ユートピア島は島の中央部の一番幅の広い所で、その幅は二百マイルある。この幅は島の大部分を通じてそのままであるが、ただ、両端に近づくに従って次第に狭くなってゆく。


ユートピア」 トマス・モア/平井正穂(訳) 岩波文庫

 

 三宮の東急ハンズが閉店するらしい。そういうニュースを見た。残念だ。ハンズにはいろいろと思い出がある。できれば、ずっとあってほしかったけど、事情もいろいろとあるのだろう。

 僕が東急ハンズを知ったのは中学生の頃。部活の先輩に「東急ハンズって、面白いんだよ。私、一日中いられるな」と教えられ、興味をもった。三宮の東急ハンズは、生田ロードの山側のどんつき、生田神社の参道西側にある。鳥居の目の前だ。
 初めて行ったときは驚いた。デパートのように巨大なビルの中身は、らせん状にフロアが並んでいる。そして、そのフロアごとに、何に使うのか分からないようなニッチな商品がぎっしり詰め込まれている。建物の構造も面白かったし、それが何か分からなくても手に取って眺めるだけで楽しい商品がたくさんあった。中高生の頃は、定期的に遊びに行って、時々は買い物もした。当時は、ペンや便せんなどの紙類をよく買っていた気がする。
 ハンズで買った物で印象深いのは、鉄の中華鍋とピーラー。横浜の大学に進学して一人暮らしを始めるときに買った。中華鍋はフライパンよりも振りやすく、炒め物を素早く仕上げることができるので重宝したが、結婚して引っ越すときに妻が「こんなの使わない」と文句を言ったので処分した。ピーラーは、プラスチックの持ち手のついた安っぽいものだけど、なぜか耐久性にすぐれ、切れ味もよく、今でも使っている。二十年選手だが現役で、ハンズの商品は侮れないと感じさせてくれる逸品だ。

 三宮のハンズは、地下鉄の駅の改札出入り口が近いので、エントランスをよく待ち合わせに使った。僕は、待ち合わせには時間の前に着いて待っているタイプで、ハンズ前を待ち合わせにすると先に来てハンズに入り、ぶらぶらと商品を眺めて時間を潰すのが好きだった。

 最近は、仕事や子育てに追われて、ハンズに買い物に行く機会が減っていた。コロナのせいで人と待ち合わせることも、ほとんどない。しかし、閉店だと聞くと、閉まってしまう前に一度行っておきたくなった。何年かぶりにハンズの建物に入ると、もう新たに商品を仕入れていないのだろう、空白の目立つフロアがあった。
 神戸の街は、ここ数年、どんどん変わっていく。駅前は大規模再開発の真っ最中だし、西神そごうも先だってクローズした。知っている神戸がどんどん消えていくのは寂しい。その一方で、新しい神戸は一体どんな神戸になるのだろうと、わくわくもする。ハンズみたいな、楽しくて便利なお店がまたできるといいのだけれど。


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