ピッコロ(ちっちゃいフルートのこと)の出番が回ってきた。
若い頃・・・20代には、ピッコロばかり吹いていたような気がする。なのに、30代になってからほとんどピッコロの出番はなくて、ちょっと物足りないくらいだった。確かに、ピッコロって若手の仕事なのかもしれない。で、居着いたオケで座り位置が真ん中に寄って行くにしたがって、ピッコロを吹かなくなる(マーラーなんかだと、1stでも持ち替えで出番があるけど)。だから、この年齢になってもピッコロの出番が回ってくるっていうのは、幸せなことなのかもしれない。
しかし、ピッコロというのは中々、胃の痛い楽器だ。
担当する音域はオーケストラの最高音。使う音域にもよるけど、基本、常に客の耳に聞こえていることを要求される。総奏(Tutti)であっても、オケの上を飛び越えて鳴っていなければならない。そういう意味では、ソロ楽器と言ってもいいだろう。
そういう楽器だから、ミスをすれば当然、バレる。いや、フルートでもミスはマズいのだけど、総奏のオケが鳴っている中で、多少ミスしたりサボったりしてもバレないというのは確かである。しかし、ピッコロはそういうわけにいかない。少しピッチがうわずっただけで「あのピッコロ(奏者)は音程が悪い」と眉をひそめられるし、聞こえるべきところで聞こえなければ「あのピッコロ(奏者)は鳴らない」と嘲われる。
だから、「私はピッコロは吹きません」と堂々のたまうフルート吹きにも、ちょいちょい出会う。まあ、気持ちは分かる。でもこの前、「ルネ王の暖炉」やってた時にはピッコロ吹いてたよね? オケは嫌だけど木五はいいの? それとも曲によるの? まあ・・・気持ちは分かる・・・んだけどね。難しい楽器だからさ、色々と。
しかし、そういう楽器だからこそピッコロは、チャレンジのしがいがあるとも言える。頑張りましょうよ。僕も頑張るからさ。
僕のピッコロは先だっての夏に、中学生に混じって少し吹いた後に調整に出した。コンディションはよい。しかし、かなり長期間にわたって出番がなかったので、まずは加湿だ。木製管の楽器はピッコロに限らず、乾燥状態からいきなり長時間吹くと、管の割れが起こるリスクがある。オケの初見・譜読み練習の前に、一日に15~30分程度の練習で一週間ほど、まずは慣らしを行った。すると、カサカサだった音色がだんだん湿度を増していき、音に密度が出てくる。いいなあ、木製管。こういうナマモノっぽいところが木製管の醍醐味だ。
それから、オケの練習に持ち出して、実戦練習。うーん・・・鳴らない。練習しながら、アンブシュアの位置やサイズを微調整する。すると、ああやっと鳴ってきた。楽器を構える位置が右過ぎたみたいだ。すこし左に寄せて・・・これでよし。この位置を覚えて、ピッコロを構えた時にすぐこの場所に来るように、体の感覚を調整する。オケの練習が終わる頃には、なんとかうまくいく位置に収まるようになった。
しかし、やっぱり難しい楽器だよなあ、ピッコロ。
まず単純に、吹くこと自体がフルートより格段に難しい。ピッコロの演奏では、フルートよりもコンパクトなアンブシュアとハイスピードなエアが要求される。Hi-Aより上の音はもう、吹き飛ばすようなイメージで吹かないと音さえ出ない。いつだったかマーラーの第2交響曲をやった時は、HiHi-Desが出てきたっけ。あれ、本番では鳴ったのかなあ? 練習では何とか吹けていたけど、よく覚えていない。
そんな息でピッチコントロールさえ要求されるのだから大変だ。第3オクターヴのイントネーションをきちんととるのは、フルート同様難しい。基本、オケのチューニングより少し高めにとるのがコツだし、むしろ高くとらないとキレイにハモらないのだけど、高すぎるとずれて聞こえる。
中音域以下でメロディを吹くのも大変だよね。そういう時って大抵、フルートの第3オクターヴとユニゾンだから、よほど鳴らさないと負ける。なのに聞こえないと「ピッコロもうちょっと吹いて下さい」なんて言われちゃう。
ま、とにかく練習だ。胃薬を手元に用意して取り組みます。