笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

お役所仕事

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「それは、まだはっきりとはきまっていない。まず、城がおれにどういう仕事をさせるつもりなのかを、確かめなくてはならん。たとえば、こちらの城下で仕事をすることになれば、宿もこちらにするほうが、理屈にかなっているということになるだろう。それに、城の生活がおれの性にあうかどうかも、気がかりだ。おれは、いつも窮屈なことが苦手でな」
「あなたは、お城をご存じないのです」亭主は、小声で言った。

『城』 フランツ・カフカ/前田敬作(訳) 新潮文庫

 

 資格取得のための大学の単位と、申請書類が一式揃ったので、資格を発行してくれる県庁の部署を訪ねた。
 県庁・・・あまり世話になることのない役所だ。日常的なことは区役所で大抵済んでしまう。中央図書館に行く時に自転車で前を通るので、場所には馴染みがあるのだけど、中に入ったことはほとんどない。あちこちの窓口で行き先を尋ね、なんとか目的の部署にたどりついた。さすがお役所、まるで迷路だな。案内できる窓口の人はすごいと思う。「ああ、その要件だったらこの部署でその場所は・・・」とスラスラ説明してくれた。なんで覚えられるの?
 で、その部署で書類を出して、「しばらくお待ちください」と座らされて待っていると、書類を受け取ってくれた人がでてきて「この書類のここにチェックがはいっていないので、受理できません」というようなことを仰った。
 えっ、マジっすか? 役所の人が指さす書類を見ると、確かにチェックが入っていない。大学から発行されている書類だ。どゆこと? 大学から発行されている書類のことを役所の人に聞いても仕方がないので、一旦帰宅。そして大学に電話で問い合わせ。
 どうやら、資格申請に必要な授業を、取り損ねていたようだ。・・・いやいや、ちょっと待ってよ、どの授業をとればいいのか、ちゃんと役所にも大学にも相談して、教わったとおりにとったんですけど? そう大学の窓口に告げると、それは委員会の責任だという。そうですかじゃあ聞いてみます、と役所に電話をかけると、役所の方では、それは大学にきいてくださいという。
 久しぶりに、たらい回されましたわな。
 たらい回されたので、たらい海流に回されるがままに回ってみたら、僕も大学も役所もだんだんヒートアップしてきて、役所の担当の人が、「ちょっと大学に、こっちから電話します」と引き受けてくれて、結局、取り損ねた単位はどうしようもないけど、じゃあどの授業をとればいいのかは大学がきちんと案内するということになった。

 お役所仕事、という言葉があるけど、大学もなかなかのお役所仕事だなあ。そして、大学と役所で戦ってもらったら、最終的に男気を見せてくれたのは役所の方だったという、なんとも不思議な結末に。今度から、こういうお仕事スタイルのことを、お大学仕事と呼ばなきゃいけないね。
 大学の担当者・・・電話したら相当おカンムリで、今回は特別ですよ・・・みたいな空気を全力で漂わせていた。

 必要な単位を、その大学でとらなければならないって訳でもないのだけど、似たような資格を今後申請する時には、その書類を集めてまた役所に出さなければならず、複数の大学に問い合わせをすると結構な手間なので、できれば同じ大学でとってしまいたい。まあ、またお世話になりますから、そうカッカなさらず、よろしくお願いしますね、大学さん。