笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ジンバブエ→深江

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 三宮を歩いていたら、大きな荷物を抱えた女性が階段のてっぺんで困っているのをみかけた。見た感じ、アフリカ系の若い女性で、大きなボストンバッグと大きなスーツケースを引きずっている。で、ボストンバッグを左肩に抱えたままスーツケースを持ち上げようとしているのだけど、中々持ち上がらない。
 多分重いのだろう、と察して「手伝いますよ」と英語で声をかけてみた。彼女は一瞬、きょとんとしてから、「ここを持って」みたいな感じでスーツケースの把手を指さした。
 そのスーツケース、二人で持ち上げたのだけど、肩が抜けるかと思うほど重く、ふたりがかりでなんとか階段を下った。階段を何とか下りきって、じゃあサヨナラと言いかけると、彼女は「深江に行きたいんだけど、どうすればいい?」と僕に尋ねた。
 深江? それは神戸の東の端だ。確か、阪神電車の駅があったはずだと思って「阪神電車の深江でいい?」と聞き返すと、彼女はちょっと不安そうにうなずく。この様子では色々不案内だろうと思って、駅の改札まで案内することにした。
 ついておいで、と僕が先に立って歩き始めると、彼女はスーツケースの扱いに戸惑っている。そして、ボストンバッグを持ってくれないかと僕に差し出した。まあ別に構わないけど。受け取ると、そのボストンバックも、漬物石でも詰めているかのように重い。こりゃ大変だ。
 歩きながら話していると、スーツケースのキャスターが壊れてしまって移動に難渋していたのだということが分かった。ジンバブエから来たんだって。深江に何の用かというと、神戸大学のキャンパスに行くのだという。「学生さんなんだね」と言うと、「修士なの」ということだった。
 券売機で切符を買うのを手伝い、大阪方面のホームに降りること、青い表示の普通列車に乗ること、20分ぐらいで着くはずだということを伝えて、改札でお別れした。さて、ちゃんとたどり着いただろうか。無事だといいのだけど。
 ジンバブエ・・・残念ながら、行ったことのない国だ。アフリカ大陸の真ん中あたりの国だってことは知ってるけど、具体的にどのあたりなのかは分からない。神戸に住んでいると、色々な国の人と接する機会は多いが、ジンバブエの人はさすがにお初だった。

 パンデミックに伴って制限されていた国境を越えての移動が、世界的に緩和されつつあるらしい。これからは神戸にも、外国からのお客さんがまた増えることだろう。しかし、今度はサル痘などという病気も感染拡大中だというし、大丈夫かなあ。
 心配なら、いくら困っていようが知らない人に声などかけなければいいのだけど、それはなんとなく、僕の人情が許さないので、はやく安心してコミュニケーションがとれる世の中になってほしいと願う。いやホントに。