笛吹きもぐらは旅をする

笛吹きの、慢性疲労症候群の療養日記。

ロングトーンしないの?

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 慢性疲労症候群のリハビリのつもりで、中学校の吹奏楽部に演奏を教えに通っている。近頃の部活は、バーンアウト防止のために練習時間が制限されていて、週に一度休息日を設けるとか、土日のうちどちらかは休みにするなんてルールがある。平日の練習時間は、夏期が二時間で冬期が一時間。その継ぎ目に一時間半の期間がある。休日は三時間。それが上限で、特別な事情がない限り超過して活動してはいけないそうだ。
 まあね、部活だからね、いいと思うよ。
 昔は、強豪校なんて公立でも、コンクール前は休みなく練習して土日は一日中ぶっ通しで吹きまくる、なんて具合だった。そりゃやり過ぎだよ。だから、リミットがあるのはいいことだと思う。何でもほどほどがいい。もしもっと吹きたければ、自分で時間を作ればいいんだし。

 でもね、じゃあその練習時間に何してるのって事なんだけど、その使い方、練習内容について僕は、あれ? と思うことがある。

 ここ何年かで数校お邪魔したけれど、どの学校の生徒さんもとにかく、ロングトーンをしない。スケールをしない。アルペジオをしない。跳躍課題(インターバル)をしない。なんで?
 ロングトーンなんて、基礎中の基礎じゃん。筋トレみたいなものだからね、やらないと体力つかないよ。そりゃ、ちょっとやってすぐ上達の実感が得られる課題じゃないけれど、やんないと上手くならないよ。だって、筋トレしないスポーツ選手なんて、いないじゃん。ていうか、基礎体力ないのに競技したら、ケガするでしょ。楽器も同じだよ、ちゃんと基礎体力つけないと、正しい吹き方は身につかないんだよ。上手くならないどころか、ケガのもとでさえあるんだよ。
 初心者が時々、まだ楽器を支えたり指を動かしたりする筋力が十分じゃないのに無理な練習をして、腰を悪くしたり腱鞘炎になったりすることがある。アンブシュアがきちんと決められないのに無理に高い音を吹こうとして、すぐにバテてしまって、残りの練習時間を無駄にしていることもある。
 違うんだって、まずはロングトーンとスケールとアルペジオとインターバルなんだ。その中でも特にロングトーンなんだ。ロングトーンで正しい吹き方と基礎的な筋力を身につけて、それから練習、それから演奏なんだ。

 そう口酸っぱく言うんだけど、やってくれないよねー、ロングトーン
 大体みんな、練習が始まるとまず、頭部管やマウスピースでウォームアップする。それは、いい。今お邪魔している中学校だと、5~10分程度やってる。それから胴体をくっつけて、軽く音だしをしたら、ロングトーンをすっ飛ばして、ちょっぴりスケールを練習し、いきなり曲をさらい始める。
 冬場だと、練習時間が一時間ぐらいなので、練習後のミーティングとか準備片付けの時間も考えると、楽器に触れていられる時間は30分ぐらい。まあね、ロングトーンをすっ飛ばしたくなる気持ちはよく分かる。
 でもね、ロングトーンは大事だよ。この練習をとばしてはいけない。特に中低音域のロングトーンは大事だ。絶対にとばしてはいけない。
 ただ、その時間を十分にとれないという事情も分かる。じゃあね、だったらさ、音出しのマウスピース(頭部管)をさ、ちょっと短くしない? あれさ、僕はそんなにいっぱいしなくてもいいと思うんだよね。だってさ、胴体をくっつけた時と、抵抗感が全然違うでしょ? マッピの練習はさ、唇が暖まって、Bbのピッチがきちんととれたら、それでOKにしてさ、さっさと胴体くっつけてロングトーンにしようよ。そうすれば、ちゃんと楽器の抵抗感を感じながらブレストレーニングできるじゃん。
 もしマウスピースのトレーニングが必要なら、金管なんか確かにやった方がいいって知ってるんだけど、それはお家でやればいいじゃない? ボディ使って大きな音を出せる学校で、マウスピース練習に時間かけなくてもいいよ。僕はそう思うよ。

 その楽器の上達に、どんなトレーニングが有効で、何が必要かってことには、人それぞれに意見があって、僕の意見に反対する人がいるだろうことも承知しているけど、それでもやっぱり、ロングトーンは必要で、最近の中学生はロングトーンの練習をおろそかにしすぎていると、僕は感じる。
 だから、そうだなー、マウスピースのウォームアップを5分したら、その後少なくとも10分はロングトーンをしてほしいな。そして、楽器を支持する筋力と、安定したブレスと、力強いアンブシュアを身につけて欲しいな。
 さっきも書いたとおり、成長を実感しにくいトレーニングではある。そりゃあ、曲さらってる方が楽しいし、上達してる実感も感じやすいだろう。でもね、必ずどこかで頭打ちになる。これ以上難しい曲にチャレンジできなくなるっていう上限に達する。そして、演奏が楽しくなくなる。そうならないためには、残念なお知らせではあるけれど、ロングトーンに励むしかない。逆に言うと、ロングトーンの課題を毎日やって、きちんとした吹き方と体力が身についていれば、ワンランク上の曲にチャレンジできるし、難しい曲でも練習次第で吹けるようになるし、その方が音楽を楽しめる。

 そういうわけで、ロングトーンやろうよ。未来の自分への投資だと思ってさ。成果があがって効果を実感できるのは、半年後、一年後だけど、必ずいいことあるから、ね。